10月最初の日曜日、
唐突に涼しくなったなぁ、と思いつつお散歩へ。
足下を横切る黒い影。
|
キシノウエトタテグモ Laatoucha typica |
体長16mmほどのやや大型のクモがいた。
旧ブログで大昔に巣から覗く顔だけを紹介したキシノウエトタテグモである。
過去記事↓
insectmoth.hatenablog.com
クモのオスって涼しくなると、♀を求めて徘徊する種類が割と多い気がする。
普段は巣から出ることが無い種類の全身像を見ることは珍しい。
で、
わりと原始的なクモでじっくり見たことが無いなぁと拉致。
背面
|
キシノウエトタテグモ Laatoucha typica |
黒っぽくてよく判らない。
腹面
|
キシノウエトタテグモ Laatoucha typica |
各部分を拡大。。
頭胸部:cephalothorax
|
キシノウエトタテグモ Laatoucha typica |
鋏角:chelicera
背甲:carapace
眼域はひとかたまり、レンズが判りにくいけど、4対8眼ちゃんとある。
|
キシノウエトタテグモ Laatoucha typica |
にっこり笑顔の口みたいな凹みは
中窩:thoracic groove = median furrow = foveaと呼ばれる。
体内に骨片が突出しており、脚部の筋肉付着点になっていると思われる。
口元のあたり。
牙:fang
下顎(触肢基節):maxilla = gnathocoxa
触肢基節は内葉を形成して咀嚼する機能を有するため、下顎と呼ばれる。
よくいるクモの牙は左右に開閉して咬むようにできているが、本種は上からザックリ振り下ろすようにできている。で、そのまま巣穴に引きずり込む。
腹部腹面
|
キシノウエトタテグモ Laatoucha typica |
書肺:book lung は2対ある。
そこらで見るクモは1対なので違和感がある。
原始的な種類は2対あるそうな。
糸を出すところ。
糸疣:spinnerets
中疣:middle spinneret
後疣:posterior spinneret
本種の場合は、糸疣は2対で前疣は退化し、小さな中疣と3節の後疣からなる。
第4脚先端
上爪:upper claw
1対の爪があるだけで、下爪や末端毛束は見られない。
左触肢側面
|
キシノウエトタテグモ Laatoucha typica |
オスの触肢は交接に使われるために特異な形状をしており、「触肢器官」と呼ばれる。
触肢腹面
|
キシノウエトタテグモ Laatoucha typica |
栓子:embolus
盾板:tegulum
亜盾板:subtegulum
杯葉:cymbium
原始的な種類なので割りと単純な形をしているけど、他のクモはもっと複雑怪奇な形で、種を決定づける決め手になる。
本種の場合は近縁種間での差異はちいさい。
ではまた