2024年12月28日土曜日

初見オブジイヤー・・・タマヤドリコバチ科

お散歩コースの虫は低調。

なので、今年見た虫の中から嬉しかったものを貼って本年最後の記事としたい。

今年3月に回収していくつかのネタになってもらったクヌギイガタマフシ。

記事は以下の3件。

「空き家で冬ごもり」

「住み込み寄生とガチ寄生」

「「ハ」の字マークのフシモグリヒメハマキ」

本体のクヌギエダイガタマバチは未見のままだけど。。

記事以外にも、二次寄生蜂がいくつか羽化している。

その寄生蜂も種までの同定がなかなか出来ないまま年末になってしまったの、属止めで貼っちゃうことにした。

ワタクシ的には科のレベルで初見の蜂である。

こんなの

2024年4月8日羽化
タマヤドリコバチの一種
Ormyrus sp.
クヌギエダイガフシをタッパーに入れてたまに霧吹きで湿らせていたものから羽化した。

緑色の金属光沢をもつ美麗種でタマバチの幼虫に寄生する。

タマヤドリコバチ科Ormyridaeというマイナーな分類群に所属する。

いくつかの種が知られているが、未記載種もいるらしいので種までの同定はあきらめた。

足黄色いからキアシタマヤドリコバチOrmyrus flavitibialis

クリタマバチという有名な害虫の天敵調査でもタマヤドリコバチ科が出てくるので、マイナーな割に少しは名前が出てくる種類みたい。

これと同種かは、私には判断できなかった。

以前の記事(住み込み寄生とガチ寄生)に貼ってる寄生蜂の幼虫はこれかもしれない。

他のアングルの画像をペタペタ。

背中

タマヤドリコバチの一種
Ormyrus sp.

腹部

タマヤドリコバチの一種
Ormyrus sp.
なんかデッカイ点刻がある。

タマヤドリコバチの一種
Ormyrus sp.

以上がメス

以下オス

2024年4月11日羽化

タマヤドリコバチの一種
Ormyrus sp.
拡大
タマヤドリコバチの一種
Ormyrus sp.
オスの点刻はより顕著。

顔に雌雄差はあまりない感じ。

腹部背面

タマヤドリコバチの一種
Ormyrus sp.
点刻というかクレーターというか。

ギザギザの模様の先に刺毛が生えてる。

いろいろカッコよ!な蜂であった。


では良いお年を

2024年12月21日土曜日

「この娘はワシの嫁!誰にも渡さん!」の構え

この間のお散歩では何も持ち帰るものがなく、、、
ちょっと前の記事からおまけの話。

↑この時のフジの莢、タッパーに入れて霧吹きで水分補修しておいたらダニ沸いた。

といってもゴキブリの飼育容器やカブクワの朽ち木に沸くコナダニの仲間と比べても非常に小さい種類である。

ホコリダニという、カビを食べる種類である。
ナミホコリダニとかその辺の種類。
中にはチャノホコリダニのように植物の汁を吸う種類もいて農業害虫とされるものも含まれている。

コナダニがだいたい体長0.5㎜くらいとして、ホコリダニは0.2㎜あるかないかといったところ。

もう私の撮影環境ではプレパラートにして光学顕微鏡でのぞいた画像くらいしか見れる写真が上げられない。
とかいいつつイマイチな画像しか撮れてない。

まあいいや

メス成体
ホコリダニ科の一種♀
Tarsonemidae gen.sp.
female
室内塵を検査するとよく出てくるダニでもある。
ホコリダニ科の一種♀
Tarsonemidae gen.sp.
female
室内塵から見つかるときは死んで干乾びていることが多いので、上図のようなホームベース型に縮んでいることが多い。

こちらは同種のオス
ホコリダニ科の一種♂
Tarsonemidae gen.sp.
male
見てわかるとおり、性的二型の著しい種類である。
オスは4対の脚のうち第4脚が異常に発達している。

こういうのって大概オス同士で闘争するためにあるように思うが、そういうのはツメダニ科で見られる。
ホコリダニではメスを捕まえておくためにこの脚を使う。
どういう事かというと、
ホコリダニのオスは、最終脱皮前の動かなくなったメスの若虫を確保して持ち歩く習性がある。
成体に脱皮したら即交尾しようという算段である。
ある意味ロリコン?

判りにくいけど、動画に撮ってみた。
ホコリダニが沸いたところを実体顕微鏡で観察すると、こんな感じでメスを背負って歩きまわるオスがみられる。
ホコリダニ科では闘争ではなく逃走に使うようで。。。

よく似た行動はコナダニやチリダニでも見られる。
こちらのオスは肛吸盤が発達しており、同じようにメスの若虫を確保していることがある。
以前ウモウダニの記事で少し書いた。↓

肛吸盤についてはこちらの記事。↓

ツメダニのオスなんかは静止期(*)のメスの脇に待機して、オスが寄ってきたら触肢を拡げて威嚇して追い払ったりしている。
(*静止期:脱皮する前に動かなくなる時期があり、その時期を静止期という。)
ミナミツメダニとかフトツメダニを累代飼育して状態がよくなってくると、オスの触肢が異常に発達する個体が見られるようになる。
昔リバーサルフィルムで撮ったのがあるけれど、デジタルデータにしていないのでここでは貼れない。スマヌ
ツメダニは例えばこんなヤツ
ツメダニの一種Mexecheles sp.
矢印のところが触肢。Mexechelesは飼育していないのでオスの触肢が発達するかどうかは判らない。

小さなダニでも樹液酒場のクワガタのような世界が繰り広げられているのである。
なんでも観察してみるもんですな。

ではまた


2024年12月14日土曜日

ヒラタヤドリバエの一種、、、かな?

ネタがないので判らないのから、

2024年12月1日撮影

ヒラタヤドリバエ亜科?
Phasiinae Gen.sp.?
キクの花になんか襟巻しているハエがいた。

ヒラタヤドリバエ亜科にしたのは勘です。

信じないように!

採集したので以下拡大画像。

背面

ヒラタヤドリバエ亜科?
Phasiinae Gen.sp.?

腹面

ヒラタヤドリバエ亜科?
Phasiinae Gen.sp.?
体長は約5㎜。

丸っこくてかわいいハエである。

側面

ヒラタヤドリバエ亜科?
Phasiinae Gen.sp.?
針を刺すついでに空気を吹き込んで観察しやすくしてある。

針穴をあけたときに自作エアーピンセットで空気を吹き込むと膨らんだままになって観察しやすくなる。

私が使っているのは以下の記事にあるテキトーなヤツ。↓

「オスグモの触肢は複雑怪奇・・・コクサグモ」

胸部背面

刺毛は割と少ない感じ。

腹部背面

腹端部に見える突起が気になる。

腹端の拡大

2節からなるようだ。

尾毛か何か?

♂かと思ったが、♀かもしれない。

おまけ、顔。

ヒラタヤドリバエ亜科?
Phasiinae Gen.sp.?

おしまい

ではまた

2024年12月7日土曜日

こちらの口器は細長い・・・クチボソヒメガガンボ

 先週に引き続き、口の長いヒメガガンボの巻。

日曜日の成果が今ひとつの我がお散歩コース。

こちらは平日水曜日の我が家の洗面台。

排水口にいたヒメガガンボ。

朝の忙しいときにもー!

とか言いながらフィルムケースに救出。

会社の実体顕微鏡で見ておっ?となって、、、

標本になっていただいた。

南無南無

こんなやつ

クチボソヒメガガンボの一種
Geranomyia gifuensis
先週のクチナガガガンボほどではないけれど、口がニヨンと伸びていた。

口のとこ、斜め下から。

クチボソヒメガガンボの一種
Geranomyia gifuensis
伸びた口の三分の一ほどに小顎髭らしきものが見える。

図鑑によるとそこから伸びているのは「唇弁(labella)」とのこと。

クチナガとかクチボソとかややこしや。

どーでもいいけど、複眼はほぼ「目ん玉つながりのおまわりさん」状態である。

頭部を上から

クチボソヒメガガンボの一種
Geranomyia gifuensis
「環境アセスメント動物調査手法5」に双翅目の科までの絵解き検索があって、ヒメガガンボ亜科は属までの検索がついていたのを読むと、

触角鞭節が12節で、

唇弁(labella)がクチバシ状に伸びるのは、

クチボソヒメガガンボ属Geranomyia であるそうだ。

で検索すると、ハエの掲示板で本州の無紋のGeranomyiagifuensisのみです、などとあって、ほほうと思ったが10年以上前のスレッドなのでも少しググると、

「Two new species of the genus Geranomyia from Japan, with notes on the Japanese species 2020,Kato & Kato」

という重要文献が閲覧可能だった。

ので、ダウンロードして英語を斜め読みしてみた。

オスの交尾器さえあれば、確実に同定可能な感じだった。

こっちはメス。。。。

本州の翅が無紋の種類が複数に増えていたので例によって sp. かぁ、と思ったけど、翅脈図もあるのでそっちで何とかならんか?と以下の図を作成。

クチボソヒメガガンボの一種
Geranomyia gifuensis

久しぶりに翅脈記号入れたら、1時間くらいかかってしまった。
R3 とかR4+5 あたりはちょっとあやふや。。

じっくり見たら、M脈基幹(M)の分岐部(赤矢印)と m-cu 横脈の位置関係に差があるようだった。
無紋の種のうち、m-cu 横脈が分岐部の外側につながるのは G. gifuensis だけのようである。

個体変異の範疇だったらアウトだけれど、とりあえず G. gifuensis にしておくこととする。

和名がないのが残念。

ではまた

2024年11月30日土曜日

クチナガガガンボはおちょぼぐち

日曜日は用事があったので、、、

ちょっと前のツイート

OM-10で撮ったやつ↓

クチナガガガンボの一種
Elephantomyia sp.
細長い口吻を持つ特異なヒメガガンボである。

口吻の先端は隠れているが、見えている先端は矢印のところ。

クチナガガガンボ属は体長より長い口吻を持つのが特徴とのこと。

蚊(カ科)の口は口器のそれぞれのパーツが伸長した構造だけれど、こちらは単純な筒のように見える。

ちょっと苛性カリで炊いて観察してみた。

頭部全体

これだとヨク判らないので、、

口吻基部

クチナガガガンボの一種
Elephantomyia sp.
触角の間に筒が伸びているだけで、なんのパーツもない。

口吻先端

クチナガガガンボの一種
Elephantomyia sp.
先端に口のパーツが集まっていた。

矢印の刺毛は他から流れてきたもので口器とは無関係。

パーツが簡略化しているので、小顎髭は判るけど残りのパーツが唇弁なのか下唇髭なのかよく判らない。

おちょぼぐちというか、極端なひょっとこ顔というか、変わった進化の仕方である。

手持ちの図鑑にはElephantomyia属は

ヒメクチナガガガンボE.dietziana

クチナガガガンボE.hokkaidensisの2種がいるらしい。

が、私にはよく判らないので一種にしておく。

属名にエレファントが入っていて覚えやすい。

おまけ、前翅

クチナガガガンボの一種
Elephantomyia sp.

ではまた

2024年11月23日土曜日

ツヤカモドキサシガメ

ちょっと前のツイート

これに鶉様より「ツヤカモドキサシガメだと思います」のご指摘が。

いつも見掛けるのはウスイロカモドキサシガメなので、そう思い込んでリリースしてしまった。

標本がないと確認できないし、もやもやするし、

で日曜日に再度シュロを叩きに行ってみたがリベンジならず。

あきらめきれずに枯葉を叩いてみたら1個体だけ見つけることができた。

やっほい

こんな感じの枯葉。

たしかナラ枯れの倒木に巻き込まれたカゴノキか何かだったと思う。

谷筋で湿り気があり、菌食性のチャタテムシとかがいるような空中の枯葉がポイントのような気がする。

さて

背面

ツヤカモドキサシガメ
Calphurnioides japonicus

手足が長くてよく判らないので、、

以下拡大画像と図鑑の解説をかいつまんで。

前半背面

ツヤカモドキサシガメ
Calphurnioides japonicus
湾曲した短毛が生えてる。

前翅

ツヤカモドキサシガメ
Calphurnioides japonicus
赤丸の部屋が盤状翅室

盤状翅室の基方には翅脈で閉じられた小部屋はない

青丸のところは翅脈に見えるけど模様である(と図鑑に書いてある)

矢印は縁紋の終端(翅縁に届く種類がいるそうな)


前脚黒バック

ツヤカモドキサシガメ
Calphurnioides japonicus

跗節は2節

前脚跗節の長さは踁節の1/3以下で毛に覆われる。

腿節下面の微毛が目立つが、踁節背面中央あたりにも微毛が生えてる。

白バック前脚

腿節下面にはトゲが並ぶ。

前脚腿節下面

トゲは2列に並ぶ

背中のトゲ

後胸背板に強大なトゲがある。

図鑑には小盾板と第1腹節にはトゲを欠くのがツヤカモドキサシガメ属の特徴、と書いてあるが、この個体は第1腹節にも小さいトゲがあった。

ハテ?

オスだから?

別種てことはないよね。

オスなので交尾器画像

斜めから
後ろから

おまけ

サシガメなので?前胸腹面に窪みがあり細かい横溝がある。

口吻でカリカリ音を鳴らしているのかもしれない。


ではまた

2024年11月16日土曜日

ルイスチャイロナガカメムシ

今年の夏にチャイロナガカメムシを紹介したのだけど↓、

「チャイロナガカメムシ」(クリックで移動)

日曜日のお散歩で似たのを見つけた。

これ

ルイスチャイロナガカメムシ
Neolethaeus lewisi
触角第3節先半の白色帯が目立つ種である。

標本箱を見たら既に採集済みなのが発覚したが、油が浸みてひどい標本になってた、ので綺麗なうちに画像を残しておこうそうしよう。

チャイロナガカメムシはササの上とか地上部で見かけたけど、こちらは斜面のジャノヒゲをガサガサしたら落ちてきたので地表性の種類のようだ。

チャイロナガカメムシは全国区だけど、ルイスチャイロナガカメムシは関東以西の分布だそうで、チャイロよりも南方系なのかも。

腹面

チャイロナガカメムシの口吻は中脚基節を超えるか超えないかだけど、ルイスチャイロナガカメムシは後脚基節まで伸びている。

拡大

ルイスチャイロナガカメムシ
Neolethaeus lewisi
ルイスチャイロナガカメムシは前胸背に明瞭な縦隆起があることが特徴とあるが、隆起というより無点刻域という感じがする。

臭腺のあたり

ルイスチャイロナガカメムシ
Neolethaeus lewisi
矢印が臭腺で、廻りの艶消し部分が蒸発域。

腹面腹端

中央とサイドに小さな突起があるけど、チャイロナガカメムシにはなかった気がする。


ではまた

2024年11月9日土曜日

ヒゲブトムネトゲアシブトコバチ

虫の声も少なくなってきた11月。

これといったものも見つからないままお散歩コースを歩く。

帰り際に服にくっ付いたコバチをケースに収めて持ち帰った。

・・・

初見のアシブトコバチの一種だった。

初見と言うか初認識と言うか。。

以前見つけた文献「日本産アシブトコバチ科の再検討」(リンク先pdf)で絵合わせしたら、ヒゲブトムネトゲアシブトコバチという長ったらしい和名のアシブトコバチらしい。

こんなの

ヒゲブトムネトゲアシブトコバチ
Haltichella clavicornis

よく見るキアシブトコバチと違って黄色い模様のない種類。

全体黒色で、脚とか肩板が赤褐色。

腹面

ヒゲブトムネトゲアシブトコバチ
Haltichella clavicornis

側面

ヒゲブトムネトゲアシブトコバチ
Haltichella clavicornis

ちょい斜めから

ヒゲブトムネトゲアシブトコバチ
Haltichella clavicornis
和名の「ムネトゲ」は小盾板後方の一対の突起からきてるのかしら?

ヒゲブトムネトゲアシブトコバチ
Haltichella clavicornis
文献で他のHaltichellaと比べると触角鞭節は太い感じ。

複眼の周囲は稜線で囲まれてる。

ついでに正面顔


後脚

ヒゲブトムネトゲアシブトコバチ
Haltichella clavicornis
後脚腿節はふとましい。

ひととおり和名の特徴の画像はこんなものかな。

腿節後縁には細かい鋸歯が並ぶ。

コバチ上科なので?翅脈は退化してる。

前伸腹節が見えるように斜め後ろから。

ヒゲブトムネトゲアシブトコバチ
Haltichella clavicornis

細かな網目模様。

すき


ではまた