2020年6月27日土曜日

タマヌキケンヒメバチ

昨年、一昨年と台風の影響で倒木が増えたせいか、
カミキリに寄生するタイプのヒメバチをよく見る。

と言っても名前がわかる種類はそうそういない。
その中でもこれは割とわかりやすい種類。
タマヌキケンヒメバチ Jezarotes tamanukii
なかなかの美人さんである。
腹部を膨らませているけど、実際はもっとスリム。

胸部背面
前伸腹節の彫刻はひかえめ。

本種はケンオナガヒメバチ亜科(=ケンヒメバチ亜科)Acaenitinae に属する。
♀の亜生殖板が発達するのが本亜科の特徴。
ケンオナガヒメバチのケンはこれを剣にみたてているのかな。

翅脈
本属には鏡胞がない。
翅脈で囲まれた小さな翅室を鏡胞といい、矢印の位置にある。

中胸背板前縁が突出するのが本種の特徴。


おまけ
顔面

大顎は小ぶり。
このおちょぼ口でカミキリが潜っているような硬い枯れ木から穴をあけて出てくるのだからオドロキである。


ではまた

2020年6月20日土曜日

トガリツルギアブ・・・種小名はえれがんす


日曜日のお散歩は傘差して長靴はいてのスタート。
ちょこちょこ虫ツイートしながらも下草びしょびしょで期待薄。
帰りの林の暗がりでなんか見かけないハエを摘まんでみた。

オドリバエかな?と現地では思っていたが、
帰ってみたら意外なことにツルギアブ科Therevidae。
ツルギアブって普通は河川敷とか海岸の砂地で見かける虫である。

はなあぶNo.9(双翅目談話会)の「日本産ツルギアブの同定」にある検索表を使って決定した。
トガリツルギアブ Procyclotelus elegans
タカラダニの幼虫がついてるけど無視してね。
腹部背板は銀白色。いかにもエレガンスな感じ。
他の種類も白い種類が多いけど、他はもっと毛深い種類ばかりである。
日本産の本属は1種とのこと。

本種の特徴を検索表から抜粋すると、、、
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♂外部生殖器は垂直に位置する(上方に向く)
中脚基節外面の毛群は前方のみにあり後方は欠く
触角挿入部は強く突出する。
触角端刺は細く、触角第3節の外側の大きな穴の中に立つ
***************************
などなど。

検索の最初の方で分かれる種類だった。
交尾期交尾器の図もよく一致するので間違いないと思う。
海外の近縁属は森林地帯で見つかるそうなので、
本種もそうなのかもしれない。
きばりはむしきべりはむし34-2」に兵庫県の分布記録があったが
山地性の種類、と書いてあった。のでたぶんそう。

腹面
腹面は地味

♂の複眼は接する。

側面
触角挿入部が突出してるの図
目に模様があってツイッターで言うところの #複眼はいいぞ の仲間。

中脚・後脚基節
中脚基節の前方に毛群があるが後方にはないの図

触角
触角第3節の窪みから端刺がチョロっと生えてるの図
外見上の本種最大の特徴っぽい。

おまけ
はなあぶ誌を参考にしたツルギアブ科の翅脈図
赤字は
br:第1基室
bm:第2基室
d:中室

後方の翅脈は最近の図鑑を参考にすると、
以下かもしれない。
図の記号→ 最新の見解?
CuA1 → M4
CuA2 → CuA
A1   → CuP
A2   → A1

R4脈が波曲するのが本科の特徴のひとつだったと思う。


ではまた

2020年6月13日土曜日

ヒメハヤバチの勘違い?

日曜日のお散歩で、何かを運んでいる10㎜ほどのハチを見つけた。
陽が当たって熱いところなので高速で走っていく。
ピンぼけ写真しか撮れなかった。。
ヒメハヤバチ Tachytes fruticis
近づきすぎて警戒されてしまい、獲物を放して走り去る。
獲物はその隙に風に飛ばされてしまった。

エライ軽い獲物やなぁ、とその時は思ったが
帰って画像を見てみれば、どう見ても脱皮殻。
オマガリフキバッタの幼虫の脱皮殻のようだ。

何の役にも立たない脱皮殻をなぜに運んでいたのか?
謎である。
予行演習?

さて、脱皮殻は行方不明になったが、ハチの方は戻ってきたので拉致。

以下死骸の画像。
背面
ヒメハヤバチ Tachytes fruticis
頭部背面
単眼は3個あるが前単眼の1個は通常の球形であるが
2個の後単眼は勾玉状に変形する。
この特徴だけでハヤバチ属Tachytesになる。

中胸背板はムキっと膨らんで強そうな感じ。

側面
大顎下面に切り込みがある
中胸背板の側縁は丸く突出している。

翅脈はこんな。

胸部背面
前伸腹節には細かな皴。

顔面
大顎の切り込みの後ろはちょっとだけ張り出してる。
マーラースペース(大顎と複眼の間、人でいう頬の部分)は
ほとんどない。

本種はギングチバチ科 Crabronidae に属する。
勾玉状の後単眼でハヤバチ属なのは判っているが、

図鑑から抜き出したハヤバチ属の特徴は
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複眼の内側はえぐれない
前翅亜縁室は3個
額の上から頭頂部にかけて両眼に沿った隆起はない
前伸腹節は中胸より短い
後単眼は著しく変形し、勾玉状になる
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ヒメハヤバチの特徴
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腹部の第1~4腹節に白毛帯がある
体長は10~13㎜
前胸背板の中央付近に1対の毛班はない
脚は付節を含めて黒色
頭部の毛は白色
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ではまた

2020年6月6日土曜日

コキアシヒラタヒメバチ・・・今度は♂

5月24日にツイートしたこれ↓
なんとなく持ち帰ったらヒメバチに変換された。

例によって以下の2サイトを参照する。
「日本産ヒメバチ目録 Check list of Japanese Ichneumonidae」 と
「Information station of Parasitoid wasps」

1週間後に羽化してきたのはこれ
コキアシヒラタヒメバチ
  Apechthis capulifera ♂
さいわい標本画像がある種類だった。
模様が寸分たがわず同じなので、まぁ合ってるだろう。
普通種だそうだし。。

拙ブログで以前♀を紹介している。↓

当ブログは同じ種類は出さないようにしているけど、
雌雄が違うのでセーフということでヨシとする。

腹面

胸部側面

前伸腹節のあたり
彫刻が単純で面白みに欠ける。。
腹部が割りと寸胴である。


♀と違って♂の顔面は黄色い。


ではまた