2017年9月30日土曜日

コベニスジヒメシャクの交尾器

日曜日に見かけた蛾。
普通種だけど、近縁種が5・6種いて同定が困難なヤツ。

コベニスジヒメシャク Timandra comptaria
図鑑には交尾器を検するのが望ましい、などと書いてあるので、、、、
拉致して検してみた。

まず交尾器側面。下の棒状のはファルス(エデアグス)
コベニスジヒメシャク Timandra comptaria ♂genitalia

バルバを開いた状態
コベニスジヒメシャク Timandra comptaria ♂genitalia

バルバを見やすく拡げてみた。
コベニスジヒメシャク Timandra comptaria ♂genitalia

ファルスの内袋を反転してみたけど、特筆したものは無く単純な形でした。
コベニスジヒメシャク Timandra comptaria ♂phallus
と、手持ちの図鑑と照合した結果、、コベニスジヒメシャクと確認しました。

そのうち同属別種がいたら見てみよう。

ではまた

2017年9月23日土曜日

オオマイコガ

ちょっと前(8/27)に採ったミクロ(小蛾類のこと)
オオマイコガ Stathmopoda stimulata 
ニセマイコガ科 Stathmopodidae に属す。
本科の蛾については別種を旧ブログでも紹介してる。

触角の拡大
オオマイコガ Stathmopoda stimulata 
飾りのついた しめ縄のよう。
展翅した。
オオマイコガ Stathmopoda stimulata 
♂成虫の後翅前縁には「前縁ひだ(costal fold)」を持つ。
前縁ひだの辺り
内の折り返した部分がそれ。
こういう前縁ひだはハマキガ亜科の♂前翅にも見られる。

♂の腹部第8節の背面に毛束があり、毛は棍棒状で先端が丸い。
毛の拡大
近縁種の♂にも毛束があるが、他種のは尖っていて膨らんでない。

♂交尾器
ファルスを除いてバルバを広げた状態。
ファルス
拡大率バラバラ

幼虫はヤブニッケイの果実につく。

おまけ
ケースの外から撮った裏側
ちょっと顔付き悪い?

ではまた

2017年9月16日土曜日

クリイロヒメキノコムシの幼虫

虫を見て初めて判ったこと。

8月27日、コナラの倒木に白いカビの塊みたいなキノコを見つけた。
なんかいる。
拡大すると、、
クリイロヒメキノコムシ Sphinus castaneipennis
ヒメキノコムシ科は変形菌(粘菌)の胞子を食べることで知られている。
このときはお腹空いたらカビも食べるのかな?とか思ってた。

9月3日に見ると、それはもろもろになっていた。
拡大してみると、、、
ススワタリと化した成虫と、幼虫らしきものがたくさん。
マックロクロスケデテオイデ~

アレッ?と思って調べてみると、この塊も変形菌らしい。
ススホコリ属の1種 Fuligo sp. で色彩から シロススホコリ Fuligo candida と思われる。
やっぱり変形菌しか食べない昆虫のようだ。

成虫は旧ブログで紹介済み(粘菌食いの虫・・クリイロヒメキノコムシ)なので
一部持ち帰って幼虫を観察
矢印のツブツブが糞。もやっとしてるのは胞子。
幼虫拡大
クリイロヒメキノコムシ Sphinus castaneipennis 幼虫、背面
10%苛性カリ水溶液で炊いて筋肉を溶かし透過光観察
クリイロヒメキノコムシ Sphinus castaneipennis 幼虫
大顎が結構オモシロい形。
先っちょはギザギザのこぎり
付け根は「おろし金」状。
のどに見える胞子は潰れているように見える。

人で言うなら前歯と奥歯の役を一対の大顎でこなしてる感じ?

持ち帰った幼虫は9月7日には蛹化した個体がたくさん見られた。成長早い。
クリイロヒメキノコムシ Sphinus castaneipennis 蛹、側面

クリイロヒメキノコムシ Sphinus castaneipennis 蛹、腹面

クリイロヒメキノコムシ Sphinus castaneipennis 蛹、背面
幼虫の脱皮殻を外すと長い尾突起があった。

9月10日、平日に降った雨で綺麗に洗い流されていた。
こんなすぐに無くなる資源をよく利用できるものだ。

おまけ。
ナンチャッテ深度合成した成虫画像。
クリイロヒメキノコムシ Sphinus castaneipennis
ではまた

2017年9月5日火曜日

胴長短足ジガバチモドキ

日曜日に採った小さな蜂。
トゲジガバチモドキ Trypoxylon errans
8㎜ちょい。脚は全転節が黄色。

本種♂の特徴。
前伸腹節背面の囲溝は明瞭。

前胸側板突起は先端が尖る。
小さくて判りにくい。斜めから見てやっと確認。
和名の由来でしょうな。
たまに判別しにくい個体もいるそうな。

日本産有剣ハチ類図鑑で同定してみました。

おまけ

トゲジガバチモドキ Trypoxylon errans 
ではまた

2017年9月2日土曜日

招かざる客がやってきた

お散歩コースの割りと太めのコナラに異変が。
粉のような木くずが溜まっている。
幹を見ると2㎜ほどの穴があちこちに開いている。
こういう木くずは「フラス frass」と呼ばれる。

ここらでは昨年あたりから見掛けるようになった。
一般に「ナラ枯れ」と呼ばれる現象で、何年も前から各地で問題となっている。

判っているけど一応犯人を特定するために
虫よけスプレーを穴にチュッと吹き込んでしばし待つ。
出てきた犯人はこんな虫。
カシノナガキクイムシ Platypus quercivorus 
同腹面
カシノナガキクイムシ Platypus quercivorus 
今の分類ではゾウムシ科 Curculionidae の ナガキクイムシ亜科 Platypodinae に属する。
本種は養菌性キクイムシと呼ばれる。
通常のキクイムシは衰弱木や枯死木を加害するのに対し、養菌性の種は健全木に穴を開け菌を運び込んで繁殖させて食害する。
菌で栄養価を高めているせいかどうか腹部が小さい。

本種が運ぶ菌は「ブナ科樹木萎凋病菌 Raffaelea quercivora」 で、この菌が繁殖すると
導管が詰まるそうで、葉が枯れてしまう。
夏の緑の山に茶色くなった葉をつけたままの枯れ木が目立つことになる。

ところで、本種の♀の前胸にはこんな穴があいている。

穴の数や位置は個体変異があるが、これで菌の繁殖した木くずを運んでいるのだろう。

コショウ瓶みたいですな。

問題ではあるが、被害に遭うのは老齢木なので、多少遷移が早く進むだけではないかと個人的には思う。

ではまた