2021年11月27日土曜日

美白を極めた?ショウジョウバエ

今週は採った虫貼るだけ。

山でときどき見かけるショウジョウバエ。

2021年11月7日

たぶんモンコガネショウジョウバエ Leucophenga maculata

側面

胸部は側面に白色斑があるが全体に微毛が生えているのか光の当て方で全体に白っぽくなる。

ショウジョウバエなので眼は赤いが、顔面はやたらと白い。

触角端刺には上向分枝と下向分枝があるのがショウジョウバエ科の特徴。

ミギワバエ科にも分枝はあるが下向分枝をもたない。


♂の交尾器


♀の貯精嚢
ネットで検索して出てくる交尾器の図と微妙に違うような気がする。。


ではまた

2021年11月20日土曜日

キイロハバチ属の1種Monophadnus nigritarsis の羽化

今年の1月の記事、

「ボタンヅルを食べるマルハバチ亜科の幼虫」

1個体の前蛹が春になっても夏を過ぎても変化がなく、死んでる様子もなかったのが、11月に入ってふと見ると蛹化していた。

色づいているので蛹化したのは10月下旬だろうか。

幼虫を採集したのが昨年12月なので、ほぼ1年ぶりの変化である。

11月4日に羽化。

以前の記事で候補に挙げたうち、この色合いはキイロハバチかルイスカマルハバチの2種である。

羽化した個体の触角は頭幅の約1.3倍程度なので、触角が頭幅の2倍以上あるルイスアカマルハバチNesotomostethus clemati は除外。

残ったのは、キイロハバチ Monophadnus nigriceps であるが、配色が微妙に異なる。で、

「日本産ハバチ・キバチ類図鑑 (北海道大学出版会、2020)」を見ると、図はなかったが、和名のない Monophadnus nigritarsis という種がいて、検索表でこの種に落ち着いた。

この種については「A New Species of the Genus Monophadnus HARTIG (Hymenoptera, Tenthredinidae) from Japan」で詳しく報告されており、国立国会図書館デジタルコレクションで読むことが出来る。(上記タイトルにリンク貼ってるので、クリックすると該当ページに行けます。)

羽化した個体の背面

キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis
腹面

キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis
側面
キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis

キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis

キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis

胸部拡大

キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis

キイロハバチ Monophadnus nigriceps では中胸背板前縁(矢印位置)に逆三角形の黒斑があるが本種では黒斑がないのが外見上の区別点であろう。胸部後半の翅で隠れる黒斑にも違いがある。

後脚の爪

キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis

爪には内歯があり、キイロハバチより長いのが特徴。

図鑑の検索キーは

後脚の脛節と第1跗節の基半は橙黄色、爪は小さな内歯を持つ・・・・・・・・・・・

キイロハバチ M.nigriceps

後脚の脛節先端と跗節は黒色、爪は大きな内歯を持つ・・・・・・・・・・・

M.nigritarsis

となっていた。

おまけ

産卵管


おまけその2

比較用に以前採ったキイロハバチの画像を貼っておきます。

背面

2010年8月16日、神戸市
キイロハバチ♀ Monophadnus nigriceps
矢印位置に黒斑が出る。

胸部後半の黒斑は弱い。

側面

キイロハバチ♀ Monophadnus nigriceps

腹面の黒斑は比較すると強く出る。

ちなみにルイスアカマルハバチ Nesotomostethus clemati では腹面は全体橙黄色である。

キイロハバチ♀ Monophadnus nigriceps

区別点の後脚の爪

キイロハバチ♀ Monophadnus nigriceps

比べると内歯は小さい(切れ込みは浅い)。

ちなみにキイロハバチは春から秋まで見られるので多化性と考えられているが、M.nigritarsisは今回1例の飼育記録によると年1回秋に発生する種類だと思われる。


ではまた 

2021年11月13日土曜日

キスジツマキリヨトウの幼虫と羽化したクロホシアメバチ

いろいろ判明したので、ちょっと前の画像から。

2021年8月29日撮影

キスジツマキリヨトウ Callopistria japonibia

シダはおそらくイワヒメワラビ。

拡大

キスジツマキリヨトウ Callopistria japonibia
顔面に「八」の字模様があるけども撮り忘れ。

むか~し飼育したような記憶があったけど、久し振りなので拉致って帰った。

翌日には成熟して赤くなり、、、


容器の隅でシダを利用して繭作ったな、と思って放置してある日見たら、、、
ヘンテコな蛹かと思ったら、幼虫の薄皮の中に黒褐色の繭が出来ていた。

終齢幼虫を持ち帰ると寄生率が高い。。。

で、9月下旬か10月はじめ頃に難解そうなアメバチが羽化した。

忙しいし、同定できないだろうと思ってしばらく放置していたのだが、いちおう写真を撮っておこうと出してみたら、以前紹介したハチと同種だった。

クロホシアメバチ Enicospilus nigropectus
干涸らびていたので成形は適当。。

以前のクロホシアメバチの記事はこちら↓

「クロホシアメバチ」

同じ種類は出さない方針だけど、寄主が判明している例は少なそうなので記事に残しておきます。

とは言っても、キスジツマキリヨトウだけに寄生するわけではないと思う。

いろんないもむしに産卵して、繭を作る頃に食い尽くしていもむしの作った繭の中で、更に繭を作って蛹化するようだ。

石橋を叩いて渡るような性格してますな。

各部画像

頭部胸部側面

クロホシアメバチ Enicospilus nigropectus
黒斑の出方は個体変異があるそうで、この個体はちょっと薄い感じ。

クロホシアメバチ Enicospilus nigropectus
干涸らびて、目が死んでる。

翅脈

クロホシアメバチ Enicospilus nigropectus
前翅の透明域と小節片の形状がバッチリ一致している。


ではまた

2021年11月6日土曜日

日本最小の甲虫?・・・ムクゲキノコムシの1種

ちょっと前のツイート↓

つぶやいておいたら、実現したのでご報告。

日曜日のお散歩で、おいしそうな(虫的に)キノコが倒木にびっしり生えていたので3個お持ち帰り。

たぶんクジラタケじゃないかと思う。

管孔を実体顕微鏡で見ていくと、、、、

なんかいた。

ムクゲキノコムシ科PtiliidaeNanosellini族だと思う。

この仲間は世界に10属以上いるようなので、詳しくは判らず。


歩いているのもいた。

が、小さすぎて、と、撮れない。

動画の方がちょっとましかも。


後半に横切っていく怪物はオオハリアリ。


さておき、キノコを入れたビニール袋を洗って濾過したら結構集まった。

ムクゲキノコムシ科の1種
Ptiliidae Nanosellini Gen.sp.

背景は1mm方眼。ちっちゃい。

水吸って間延びしているのもいるが、0.3~0.5mmくらい。

プレパラートにして光学顕微鏡で撮影。

ムクゲキノコムシ科の1種
Ptiliidae Nanosellini Gen.sp.

貯精嚢受精嚢らしきものが見えるので♀。

2021年12月11日 ツイッターで「♀に貯精嚢を使われるともにょる」と専門家の先生がつぶやいているのを見かけてしまったので、受精嚢に直しました。

間延びしているのを差し引いたら体長0.45mmくらいだろうか。

後翅はスカスカの羽毛状。小さくなればなるほど空気は粘り気が増すそうで、膜じゃなくても空気を掴むことが出来るとか。


矢印が貯精嚢受精嚢。なんというかウマノスズクサの花っぽい。


ということはこちらが♂


頭部腹面

大顎らしきものが見当たらない。



触角はムクゲキノコムシにしては短いが、10節あるようだ。

とはいえ、こんなにちっちゃくなっても触角や脚の爪とかパーツはちゃんとあるんだからエラいもんである。



1枚目の♀上翅になんかくっついているけど、ひょっとして昆虫寄生菌のラブルベニアだろうか?

新種?

日本に記載する人いないだろうねぇ。


おまけ

飛ぼうとして失敗したムクゲキノコムシ動画


ではまた