2018年10月27日土曜日

オスグモの触肢は複雑怪奇・・・コクサグモ

日曜日のお散歩で見たクモ
コクサグモ Allagelena opulenta 
旧ブログで記事にした♀(→「コクサグモ」)と比べると脚が長い。
やっぱり♀を探して彷徨う分、脚が発達しているのかな?
ここらでは11月頃に卵嚢を見るので♂も交尾の最後のチャンスとばかりにうろついているのであろう。

無慈悲にもブログのネタのために持ち帰る。
コクサグモ Allagelena opulenta 
体長は10mmほど。
拡大
コクサグモ Allagelena opulenta 
腹面
コクサグモ Allagelena opulenta 
クモの♂は精子を触肢に移して触肢を使って♀と交尾する。
昆虫の交尾器の役割をクモでは触肢が担う。
そのためクモの種類ごとに触肢の構造が変わっており、種の同定の際重要な特徴となる。

コクサグモの右触肢を角度を変えて撮影して見た。
図鑑の触肢の図はせいぜい2方向のスケッチなのでちょっと角度が変わると別物に見えてしまう。複雑すぎてよく判らないけど、おおむね図鑑の図と同じ。
ときどき見ている蛾の交尾器より複雑である。

この触肢が交尾の際どうなるか気になったので膨らまして見た。
10%苛性カリ溶液に触肢を半日浸け(急ぐ時は湯煎で5分)、筋肉を溶かして水洗し
注射器で触肢の付け根から水を注入して膨らませてみた。
注射器の先はマイクロピペットのチップをライターであぶって溶かし、ピュッと引き延ばして先を切ったものを使った。↓

下の画像は膨らまして乾燥した触肢
正面
外側
クモでは先端の形は変わらないのだろうか?
付け根が膨らんで伸びているだけに見える。

膨らませたまま乾燥するには、注射器で反転させた後、無水アルコールに浸けた後自作のエアーピンセットで触肢の付け根から息をしばらく吹き込んでやるとスグ乾燥する。

自作エアーピンセットの本来の使用法は普通のピンセットでは潰してしまいそうな微小昆虫を吸いつけて壊さないように移動するために使います。
自作したのはこんなの。↓
シリコンチューブにマイクロピペットのチップを組み合わせたもの。

ではまた

2018年10月20日土曜日

クロマルズヒメバチ

虫が少なくなってめぼしいものがいないので
またヒメバチを採ってきた。

9月に記事にしたマルズヒメバチの1種に雰囲気が似てるので、そこらへんで検索するとマルズヒメバチ亜科だが別属の クロマルズヒメバチ Xorides investigator のようだ。

翅脈はこんな。
胸部背面
前伸腹節は亀甲模様。ヒメバチによくある模様。

腹面

体長は約18mm。産卵管を含めると約33mm。
体色は黒。触角に白帯はない。前脚・中脚は基節から黄褐色。上唇と小顎髭も黄褐色。頭盾はやや淡色を帯びる。腹部後半の腹節後縁は白く縁取られる。前脚と中脚脛節寄方に斜めのひだがある。

マルズヒメバチ亜科から Xorides属を分ける特徴は、
・大顎先端は2歯が融合しノミ状の1歯となる
・♀の触角端は曲がり、触角先方の数節に感覚毛を持つ
・後体節(見掛けの腹部)背板にしばしば斜めの溝を持つ

顔面

触角先端

腹部背面
矢印がたぶん検索キーの斜めの溝。

ではまた

2018年10月13日土曜日

オオバコヤガの交尾器

体育の日のお散歩で見掛けた蛾。
オオバコヤガ Diarsia canescens
Diarsia属は似てるのが多いので交尾器を観察。
10%KOH溶液に交尾器を浸けて10分加温。
筋肉が溶けたところで洗って成型。
オオバコヤガ Diarsia canescens ♂交尾器
ククルス(cucullus)・・・バルバ先端の多数の剛毛が生えた部分の名称
挿入器(ファルス phallus)・・・エデアグス(aedeagus)と呼ぶことが多い。
本当は体腔内に引き込まれる膜質部などを含めた挿入器全体はファルスと呼ぶのが正しいそうだ。
エデアグスを取り出して反転作業。
微針をガラス板にコツンとあてて先っちょを曲げたものを柄付き針にして
そろっと引き出す。
ある程度引き出したら反対側(下写真の矢印) から注射器で水を注入して反転。
ここら辺は旧ブログの「アケビコノハの♂交尾器」を参照。

反転した挿入器
反転した膜質部をベシカ(vesica)と言う。
ベシカに生じる刺状の突起はコルヌティ(cornuti 単数形はcornutus)。

ついでに♀交尾器
去年三田で拾った♀の交尾器。
オオバコヤガ Diarsia canescens ♀交尾器
オスチウム・ブルサエ(ostium bursae)・・・交尾口
ドゥクツス・ブルサエ(ductus bursae)・・・交尾管;交尾口から交尾嚢までの管状部
コルプス・ブルサエ(corpus bursae)・・・交尾嚢
シグナ(signa 単数形はsignum)・・・交尾嚢内の硬化部、刺状や板状
本種の交尾嚢には細い硬化部が4個ある。なので複数形でシグナ。

右側に嚢状部があるがこれはコウスチャヤガにはない。
図鑑には「右遠位に小さい憩室がある」とあったが
専門用語での呼称は書いてなかった。

交尾の際は、交尾口の下部の硬化部に♂交尾器のギザギザがはまる感じかな?

ではまた

2018年10月6日土曜日

ムラサキアツバの幼虫

実は、先週の記事に出てきたエノキの立ち枯れにいもむしがいたので持ち帰っていた。
その幼虫が今週羽化しました。
ムラサキアツバ Diomea cremata
実際はもっと黒っぽいけど、模様が判るように明るめに撮影。
紫黒色の弱い光沢がある。

幼虫はコチラ
ムラサキアツバ Diomea cremata 終齢幼虫
左のキノコに食痕がある通り、本種のごはんはカワラタケ類などのキノコ。
白黒褐色のまだら模様。やや紫がかってる?

横から
ムラサキアツバ Diomea cremata 終齢幼虫
第3・第4腹節の第1・第2腹脚は退化消失しているのでシャクトリムシっぽい。
シャクトリムシは英語でルーパー(Looper)と呼ぶが、こういう中途半端な幼虫は
セミ・ルーパー(Semi Looper)と呼ぶ。

繭。

まわりの木くずを齧りとってカムフラージュ。

羽化後の蛹殻、側面
背面

蛹の腹端には鉤状刺毛は無く、2対の小さな棘があるのみ。

ではまた