2023年3月25日土曜日

ズグロキスイモドキの交尾器

日曜日の午前中は晴れたのでワクワクしながらお散歩へ。
ビロウドツリアブのおちり

春のお知らせがぷわぷわ飛んでいた。ヨシ!
いつもの虫が見られて何よりである。

クサイチゴも咲き始め。

定番の茶色いのが群れていた。
キスイモドキの1種であるが、この仲間は日本産4種で普通に見られるものにもキスイモドキとズグロキスイモドキの2種が知られているようだ。

以前確認したような気がするが、忘れてしまったので持ち帰り。

背面
ズグロキスイモドキ Byturus atricollis

前胸の後角(矢印)がなだらかに丸いのはズグロキスイモドキで、
多少とも角張るのがその他の種類だそうだ。

雌雄の区別も外見でなんとかできる。
♀はなんとなく下ぶくれ体型。
最も違うのは前脚脛節。
ズグロキスイモドキ Byturus atricollis
Male

♂の前脚脛節は湾曲し、矢印の位置に稜がある。
たぶん交尾の際に♀をしっかり抱えるための構造だと思う。

ヒキガエルなんかの♂も前脚の親指にコブがあって♀を抱えやすくなっているらしい。
こういう構造が見られると言うことは、
世の中の♂は種類を問わず苦労しているらしい。

♀はこんな。
ズグロキスイモドキ Byturus atricollis
Female
♀は真っ直ぐで特に変な構造物もない。

おまけ。
交尾器
ズグロキスイモドキ Byturus atricollis
Male genitalia
キスイモドキの交尾器はもっと幅広いそうな。
先端の拡大。
一目盛が0.01mm

♀の腹端。
ズグロキスイモドキ Byturus atricollis


ではまた。

2023年3月18日土曜日

シラホシハマダラミバエ

啓蟄も過ぎて天気がいいと、成虫越冬していたミバエとかが日向ぼっこするようになった。

その中の一匹を拉致。

シラホシハマダラミバエ♀
Acanthonevra trigona

腹面

シラホシハマダラミバエ♀
Acanthonevra trigona
ミバエと言えば複眼・・・?

シラホシハマダラミバエ♀
Acanthonevra trigona
「複眼はいいぞ」の仲間だけれど、越冬明けのせいか鮮やかさが今ひとつ。


本種は以前紹介したものと思っていたけど、

調べたら、ツイッターに貼っただけだった、

のでブログにも貼っておく。

ツイッターのは♂だった↓

コレ見ると雌雄で翅の斑紋に若干差があるみたい。

♂の方が翅の白星が少ないようだ。

シラホシハマダラミバエ♀の前翅

シラホシハマダラミバエ♀
Acanthonevra trigona

ではまた

2023年3月11日土曜日

ヤマトヒメホソキノコバエ

この日曜日は下草も乾いていたので、お散歩ネットでガサガサしながら適当に摘まんで帰った。

その中の一つ、ホソキノコバエ科を久々に見た。

ヤマトヒメホソキノコバエ
Bolitophila japonica
ヒメガガンボをさらに弱々しくしたような虫。

翌日見たら、すでに頭部が乾燥で変形してしまっていた。

触角が長い。

前翅長は約4.5mm。

むか~し「一寸のハエにも五分の大和魂・改」という双翅目の掲示板で質問したことのある虫である。

当時(2010年)質問した個体は♀だったので、ホソキノコバエの一種で終わってしまったのだが、今回は♂だったので交尾器を観察してみた。

腹端を外して、、、

矢印の生殖端節(gonostylus)の基部に三味線のばち状の硬化した突起物が見える。

10%KOH水溶液で透化処理して、、、分解。

で、♂生殖器の拡大。
ヤマトヒメホソキノコバエ
Bolitophila japonica
Male genitalia
たぶん、ヤマトヒメホソキノコバエで合ってると思う。

翅でもある程度絞れそうなので、スライドグラス2枚に挟んで撮影。

ヤマトヒメホソキノコバエ
Bolitophila japonica
Wing vein
R2+3脈が翅端に向かわずR1脈に合流すること、
R2+3脈は垂直に位置すること
M-Cu横脈が存在すること
辺りが特徴かと思う。

翅脈図は以前掲示板に貼ったものを再掲。
()内は古い図鑑などで採用されている翅脈名。

ではまた

2023年3月4日土曜日

体長2mmのお母さん

こないだのお散歩では(も?)デジカメを出すことなく帰ってしまった。

という、

怠惰な状況なのでネタが無い。

なので、

ハードディスクの中から去年の今頃に見かけた生き物。

落ち葉のシフティングで採集。

今まで何回も見かけたような気がするが幼体だと思ってほったらかしていた。

が、実体顕微鏡で見ると外雌器がちゃんとある成体だった。

コガタネオンハエトリ Neon minutus female
体長2mmあまり。

私みたいな素人だと子供だと思うわ。

腹部腹面

コガタネオンハエトリ Neon minutus epigynum
くるりんとした外雌器(epigynum)。

顔。

クモの個眼は普通8個。

だけど6個しかないように見える。

よっく見ると、小さな後中眼があった。

ではまた 

2023年2月25日土曜日

真冬のタイワンタケクマバチと居候

いよいよネタが無くなったので、去年見つけたタイワンタケクマバチの巣を暴いてみた。

このツイートのヤツ↓ 

これをこの間の日曜日に持ち帰ってパカリ。

タイワンタケクマバチ Xylocopa tranquebarorum
巣の仕切りは綺麗に掃除されて無くなっていた。

中身は3♂3♀合計6個体の新成虫。

♂の体重はそれぞれ1232mg、1258mg、1127mg、平均1206mg。

♀の体重はそれぞれ647mg、761mg、821mg、平均743mg。

♂の体重は♀の約1.6倍。

♂は条件の良いところでテリトリー張ってホバリングする習性があるため、雄同士で良い場所を取り合って闘争する関係で大型化する方向に進化したのかと思う。

クワガタと同じですな。

かたまっていたのと反対側。

こちらにも巣の仕切りの痕跡があった。

1枚目写真の矢印部分の拡大。

出入り口とは別に、内側から囓った跡がある。

タイワンタケクマバチは竹の内側を囓って巣の仕切りに使うそうだ。

エコですな?

出入り口の直径は約7.5mmだった。

ハチの背中を拡大して見ると、

タイワンタケクマバチコナダニのヒポプスがスタンバイしていた。

こいつらは寄生しているのではなく、便乗である。

口が退化しているので寄生しようがない。

新しい巣に着くまで飲まず食わずらしい。

新しい巣にたどり着いたものが花粉団子などを食べて増殖するそうだ。

コレについては以前記事にしている↓

「便乗ダニのタイワンタケクマバチコナダニ」

在来のキムネクマバチにも同属のダニが着くが別種らしい。


竹筒を拡大してみると、汚れた部分に変なのが1匹居た。

トガリチャタテ Tapinella africana
つぶつぶは花粉だと思う。

粒が大きく見えると言うことはアオイ科の花粉かな?

トガリチャタテ Tapinella africana
体長は1.3mmほど。腹端の形状見ると♀みたい。
フトチャタテ科に属する菌食性の虫である。

翅脈
トガリチャタテ Tapinella africana
適当感のある翅脈。
個体によっては翅が退化するらしい。
手持ちの図鑑(家屋害虫事典)によると♂は無翅とあるが、害虫屋さんのブログによると♂にも長翅型が出るらしい。

私は屋内の粘着トラップに付いているのしか見たことがなかった。
野外で見たのは今回が初めてである。


ではまた

2023年2月18日土曜日

2月にシタバガ亜科の幼虫

いもむし成分追加。

でも名前は判らない。

ササが倒れて枯れ葉が積もっているところを叩いて落ちたクズをフィルムケースに詰めて持ち帰った中にいたもの。

体長14mmほど。
なんかフィルムカメラで撮ったような眠たい写真。。なぜ?

横から。

腹脚は4対、前方の腹脚は退化傾向(矢印小)。
尾脚は通常で、後方に突出する。
第8腹節背面のD2刺毛の位置が突出する(矢印大)。

体型と上記の特徴から、シタバガ亜科 Catocalinae の1種だと思う。

ここいらで見られる普通種だったら、
アシブトクチバ Parallelia stuposa くらいしか思いつかないが、、、、
確か蛹越冬だったはず。

年2回発生する蛾なので、昨今の温暖化の影響で中途半端に羽化した成虫が産卵した子供だったりするのかも知れない。

シタバガ亜科は他にもたくさんいるので他の何かかも知れない。

そう言えば、当地ではフユシャク類の発生数が年々減ってきている。
フユシャク亜科などは今期はホソウスバフユシャクを自宅の玄関で1個体見たっきりである。
暖冬うんぬんより、夏の暑さで越夏に難儀しているのではないかと思う。

ではまた

2023年2月11日土曜日

お尻しわしわコマユバチ

この日曜日の採集品。
コマユバチ科の一種
Bracon (Sculptobracon) sp. ?
コレ一匹だけ。

しかたがないので、神奈川県立生命の星・地球博物館の


・・・・
コマユバチ亜科の・・・

Bracon属で・・・

Sculptobracon亜属に行き着いた。・・・?

リストを見ると、既知種は1種で色目が違う。。

合ってる気がしない。。

以下、拡大画像。

背面
コマユバチ科の一種
Bracon (Sculptobracon) sp. ?
体長5.5mm
真っ黒。

腹面
コマユバチ科の一種
Bracon (Sculptobracon) sp. ?
腹面は膜質部が多い。

側面
コマユバチ科の一種
Bracon (Sculptobracon) sp. ?

コマユバチ科の一種
Bracon (Sculptobracon) sp. ?
いちおう記号を書き込んでみた。

コマユバチ科の一種
Bracon (Sculptobracon) sp. ?

頭胸部側面

小顎髭は5節のようだ。
40倍の実体顕微鏡ではちょっとキビシイ。

爪の形状はたぶんトレースしたような形だと思う。
切れ込みが1ヶ所。

胴体を斜めから。
コマユバチ科の一種
Bracon (Sculptobracon) sp. ?
前伸腹節は彫刻がなくツヤがある。
後体節の2・3節は癒合しているように見える。

腹部背面
コマユバチ科の一種
Bracon (Sculptobracon) sp. ?
背面全体に皺状の彫刻がある。
白色の紋に見える部分は膜質で内部の脂肪体が透けているだけのようだ。

産卵管側面
下側だけにギザギザがある。

コマユバチ科は今までスルーしてきたからよく判らないよお。

ではまた

2023年2月4日土曜日

ニセオウトウショウジョウバエの♂交尾器

寒いですな。

ブログのネタ用にお散歩ネットに入った虫を眺めていたら、翅に紋のあるショウジョウバエが2匹。

以前記事にしたオウトウショウジョウバエかな?と思いながら実体顕微鏡で調べてみたら、片っぽはニセオウトウショウジョウバエだった。

ちょうどいいので比較画像を作ってみた。

ニセオウトウショウジョウバエ♂
Drosophila pulchrella

同じアングルでオウトウショウジョウバエ
オウトウショウジョウバエ♂
Drosophila suzukii
素人目にはほぼ同種。

翅比較。
紋の位置が微妙に違いますな。

前脚付節の性櫛比較
ニセの性櫛は弱いトゲが2列で2ヶ所。
オウトウの性櫛は強いトゲが1列で2ヶ所。

交尾器辺り。
腹部第9・10背板
肛門板(第10背板)が広がりすぎちった。

挿入器

把握片(clasper)
1番違いのある部分を分断させてしもうた。。
トゲの生え方が違いますな。

オウトウショウジョウバエの交尾器は以下のリンク先にありまする↓

オウトウショウジョウバエの♂交尾器

啓蟄が過ぎましたな。 でも春本番にはまだまだなので。 そこらをお散歩ネットでガサガサして判りやすいのをゲット。 オウトウその他の果実に産卵するため害虫とされる。 側面 キイロショウジョウバエ風で翅端に斑紋があるのが特徴。 この斑紋は♀にはない。 ショウジョウバエ♂の前脚ふ節には「性櫛(せいしつ) sex combs」と呼ばれる剛毛列を持つ種類がいる。 オウトウショウジョウバエでは第1ふ節と第2ふ節に性櫛をもつ。 キイロショウジョウバエの性櫛は第1ふ節のみにある。 近縁にニセオウトウショウジョウバエがいるが、性櫛の剛毛が弱いらしい。 翅の斑紋も横長の紡錘形であるため区別できる、との・・・


ところで翅の斑紋や性櫛は♂だけの特徴なので注意。

♀には斑紋がないので私にはサッパリである。

ではまた