2021年10月30日土曜日

特徴盛りすぎコガネコバチ・・・Heydeniaの一種?

虫の声からヒヨドリの叫び声に変わる今日この頃。

コレと言った虫がいないので、谷筋のアオキをお散歩ネットでわしゃわしゃ揺すって小さな虫を吸虫管で吸って帰った。

黒いハエヤドリクロバチとか、茶色いハエヤドリコマユバチの中でちょっと綺麗な美人さんがいた。↓

コガネコバチ科の一種
Pteromalidae gen.sp.
体長は3.5mmほど。

腹面

胸部背面
側面

ぱっと見ナガコバチ科?と思ってネットをうろついても見当たらない。

よく見たら中胸側板に凹みとががあるからナガコバチじゃなかった。


白いヒゲ生えてる。

触角


前脚

径節の距は湾曲している。

コバチ上科は翅脈が退化して判別しがたいが解説入れるとこんな感じ。

矢印部分に毛束がある。

斑紋で判りにくいけど、径脈の手前が前縁脈で外側が後前縁脈。

前縁から離れた脈が亜前縁脈になるようだ。


コバチ上科からコガネコバチ科を分けるキーを検索から抜き書きすると、

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後脚基節は通常で前脚基節よりわずかに大きい程度

後脚腿節は肥大しない

触角は肘状に曲がる

前胸背板は背面から見て前方は角張らない

後前縁脈は認められる

跗節は5節

中胸側板は凹みや溝がある

前胸背板後縁と中胸背板前縁は癒合しない

前脚径節距は長く湾曲する

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で、
画像のコガネコバチの特徴は

触角に球桿部?と白色帯がある。

緑色の金属光沢がある。

腹端は藍色光沢。

コガネコバチにしては長い産卵管。

翅に模様がある。

翅に毛束がある。

銀白色の柳葉状の毛がある。

跗節は白くておしゃれ。

などなど。


似たのが見つからなくて、空いた時間にネットをちまちま探していたら、超絶昆虫写真ブログで有名?な

「明石・神戸の虫 ときどきプランクトン」の下の記事

「コガネコバチ科の一種(改題)」

に似ているのを発見。あちらの画像は♂っぽい。

同種かどうかも判らないが、Heydenia属かも、とコメントにあった。

Heydenia属はネットにあまり画像が転がっていないので珍品なのかも?


ではまた

2021年10月23日土曜日

ニセウスグロイガの♂交尾器

お散歩コースではろくなネタがないので、

この間、自宅の玄関にいた小蛾が割りと思いがけない子だったので貼っておきます。

2021年10月14日、神戸市
ニセウスグロイガ Niditinea piercella
翅を広げるとこんな感じ。
ニセウスグロイガ Niditinea piercella

普段よく見かけるのはウスグロイガの方である。

2018年8月大阪府
ウスグロイガ Niditinea tugurialis
翅の模様は全く同じと言って良い。


同属にクロスジイガ Niditinea striolella がいるが未見。

翅の基部に黒い筋があるので他種と見分けがつくらしい。。。


さて、ウスグロイガとニセの区別は交尾器で区別するしかないようだ。

今回のはオスだったので、透化処理。

で、側面図。

ニセウスグロイガ Niditinea piercella
交尾器
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図中用語の解説

tegumen:テグメン、第9腹節背板

vinculum:ビンクルム、第9腹節腹板

uncus:ウンクス、第10腹節背板

gnathos:グナトス、第10腹節腹板

socius(複数形はsocii):ソキウス

saccus:サックス、ビンクルムの陥入突起

valva:バルバ(把握器)

phallus:ファルス(挿入器)

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画像のウンクスはピンセットで摘まんだときに折ってしまったようで先端が欠けている。

ウスグロイガでは全体に同じような色だが、

ニセウスグロイガではウンクスとソキウスの硬化が強く黒く見えること。

この特徴はわざわざプレパラートにしなくても腹端から実体顕微鏡で見ると、ニセウスグロイガではウンクスが黒く見えるので簡易に同定可能である。

というのを今回初めて知った。

後方から見るとV字型のグナトスも硬化が強い。

ニセウスグロイガ Niditinea piercella
交尾器

参考にウスグロイガの交尾器も。
ウスグロイガ Niditinea tugurialis
♂交尾器
ウンクスの硬化は弱く、他と同じ色彩。

ウスグロイガのバルバには内側に突起があるのも区別点。

ファルスの形状にも違いがある。

背面から押さえつけた画像。

ウスグロイガ Niditinea tugurialis
♂交尾器
黄色円内がその突起。

あと、サックスの先端がへら状に拡がるのも特徴。

ニセでは棒状である。

ちなみにクロスジイガではニセのようにウンクスとグナトスが硬化して黒っぽい。

違いはバルバの上縁(コスタ:costa)が中央で盛り上がること。

ニセでは画像のように直線的である。


実はソキウスの形状が手持ちの文献とは微妙に違うような気もするのだが、現状ではニセにしか行かないのでニセウスグロイガとしておく。

カバーガラスの押しつけ具合とかで違って見えるのだろう、ということにしておく。

おまけ

ウスグロイガの♀交尾器

ウスグロイガ Niditinea tugurialis
♀交尾器
ostium bursae:オスチウム・ブルサエ(交尾口)は、漏斗型に硬化して目立つ。

他種では硬化が弱く目立たない。


いちおう図鑑に記載されている3種の分布は以下。

ウスグロイガ N.tugurialis 本州、九州、アジア全域

ニセウスグロイガ N.piercella 九州、ヨーロッパ各地

クロスジイガ N.striolella 北海道、本州、九州、中国、ロシア南東部、トルコ、ヨーロッパ

なんだか四国の分布がないが、地味で同定されていないだけであろう。

「南四国の蛾」 というホームページをみるとウスグロイガが記録されているので、どこかの文献に分布記録があるのかも知れない。

ただ、今までの記録はニセウスグロイガが混じっている可能性があるので精査が必要であろう、と本に書いてあった。

まあ、町中の門灯に止まっているくらいだからどこにでもいそうである。


3種はいずれも毛、羽毛など乾燥した動物質を食す。鳥の巣で見つかることが多い。屋内でもよく見かける。畳の裏でトンネル状の巣を見ることもある。隙間の虫の死骸とかフケ混じりの室内塵でも食べているのだろう。(どの種かは判らないが、、、)

ウスグロイガは肥料の油かすで発生しているのをまるごともらったことがある。


ではまた 

2021年10月16日土曜日

水中の捕獲網・・・ウルマーシマトビケラ

今年は雨が多かったので、砂防堰堤の上から水が流れている。

なんかいるかも?と眺めていると変なものがあった。
水がシャバシャバ流れているところにポツポツとポケット状の何か。

トビケラの巣じゃないか?と持ち帰る。

予想通り、トビケラの幼虫がいた。

ポケット状のはトビケラの捕獲網であった。

その幼虫。

ウルマーシマトビケラ Hydropsyche orientalis

長らく積ん読本だった「日本産水生昆虫第二版」を引っ張り出してつらつら眺めて、ウルマーシマトビケラらしいと結論付けた。

以下、抜き書き

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毛翅目 Trichoptera シマトビケラ科 Hydropsychidaeの特徴

中胸と後胸は1枚の背板で広く被われる。

2021年10月17日追記*************************

図鑑の検索表では1枚はムネカクトビケラ科、1対はシマトビケラ科に分かれるように書いてあったが、水昆屋さんの海月@_sea_moon_さんにツイッターでご教示いただいたのだが、シマトビケラ科の背板も1枚とのことである。

タイトルに?をつけていたけれど、ウルマーで合っていると思います。と言っていただいたので?は取りました。

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腹部には枝分かれした気管鰓がある

咽頭板は小さいか欠如し、両側の頬板は少なくとも一部は接する。

2021年10月23日追記*************************

上の記述は旧版の検索表で、第二版の検索表は以下の通り判りやすくなっていました。

幼虫の体型は左右対称

中胸と後胸の背板は1枚の硬板で広く覆われる

腹部腹面に枝分かれした気管鰓がある

尾脚の先端に長毛の束がある

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ウルマーシマトビケラ Hydropsyche orientalis 幼虫の特徴

後方咽頭板は小さいか欠如。

前胸腹板後方に1対の明瞭なキチン板がある。

前胸の小転節突起は二叉する。

終齢幼虫の頭幅は1.2mm前後。腹部の剛毛の立毛は先端が太くならず同じ太さ。

頭楯板の前方部は平坦

頭部背面には格子状の斑紋はない

頭部の地色は褐色。側面の淡色部は後頭部まで伸びないか、あるいは幅が狭くなる。

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背面

どう見てもシマトビケラ科なのに背板が1対になっていない。。

頭幅も0.9㎜しかないので終齢幼虫ではないのかもしれない。

苛性カリ水溶液で炊いて透過処理してみる。

頭部背面

溶かしたら目がなくなった。頭殻にレンズらしきものが見えないので像を結ぶほどの視力はなさそうである。


頭部腹面
ものすごくちいさな後方咽頭板があるような。

胸部

円内が前胸の小転節突起。

矢印が前胸腹板後方にある1対の明瞭なキチン板だと思う。


尾肢

絶対に流されないぞ、という強い意志を感じさせる爪。


おまけ

捕獲網

ウルマーシマトビケラ Hydropsyche orientalis
の捕獲網
丁寧な仕事である。

流れる水の中、規則正しい網を貼るとかすごい不思議。

水中ですぐ固まる糸を吐けるというのがすでに不思議。

賢い人も同じみたいで不思議どまりの私と違って、トビケラシルクとして再生医療に使えるんじゃね?と研究されているようだ。

そういえば、フジツボが水中の岩に固着するときに出す接着物質で濡れていても瞬時にくっつく絆創膏?を開発したとか、ネットのまた聞き(また読み)で見た気がする。


ではまた

2021年10月9日土曜日

カワリホシアメバチ

2021年11月13日改題

日本産ホシアメバチ属の総説みたいな論文が発表されて種名が判明したので改題しました。

論文は以下↓

「Integrative taxonomy and analysis of species richness patterns of nocturnal Darwin wasps of the genus Enicospilus Stephens (Hymenoptera, Ichneumonidae, Ophioninae) in Japan


ネタがないので種まで同定できなかったのを貼っておきます。

2021年9月26日の撮影。

アラカシの葉裏に妖しげなシルエット。

ストロボ焚いてみる。

カワリホシアメバチ Enicospilus  concentralis
アメバチ亜科っぽいですな。

体長は14㎜とやや小型。

例によって

「Infomation station of Parasitoid wasps」のサイトで同定を試みる。

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アメバチ亜科 Ophioninae の特徴を抜き書き。

前翅は鏡胞を欠き、縁紋後方は大抵無毛域を持つ

後体節第1節は細長く、気門は後方よりにある

後体節第2節以降は縦に扁平となる

産卵管は短く、腹端の厚み程度で、背方先端に切れ込みを持つ


ホシアメバチ属Enicospilus の特徴を抜き書き。

後頭隆起線は完全

大腮先端は2歯

縁紋の後方に微毛に覆われない透明域があり、小節片を持つ

大腮はねじれる

後脚付節爪の櫛歯は爪の先端を超えて伸びることはない

大腮の幅は強く狭くなり、中央の幅は基部の幅の0.3倍程度

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ということで、ホシアメバチ属までは行きついたけれども、リストを見ると日本産は50種近くいるそうで、紹介されている画像にも該当する種がいないので、潔くあきらめる。。。

以下、拡大画像。

胸部背面

カワリホシアメバチ Enicospilus  concentralis
アメバチ亜科だけど、全身あめ色じゃない。

胸部側面

カワリホシアメバチ Enicospilus  concentralis

翅脈

スライドグラス2枚で挟んで見やすくしてみた。

矢印付け忘れたけれど、透明域と小節片、わかります?


後体節第1節は細長く、気門は後方にあるの図

矢印は気門の位置。


後脚の爪

櫛歯状ですね。


カワリホシアメバチ Enicospilus  concentralis
単眼でかい。顔面にも模様がある。


大腮辺りの拡大

大腮は急に細くなっているのを、青線と赤線で示す。


針(産卵管)を鞘から出してみる。

背面の先端寄りに切り込みがある。


頭部の後頭隆起線(矢印)


ではまた

2021年10月2日土曜日

セスジシミ

お散歩先では属止まりの虫しか見かけなかったので、、

先週に引き続き自宅で見た虫でお茶濁す。

和室の畳でぼーっとしていた虫を見かけたので、フィルムケースを被せてから紙を差し込んで捕獲。普段はワープのごとく移動するのに、寝てたのかしらん?

セスジシミ Ctenolepisma lineata

シミ科 Lepismatidae の ヤマトシミ属 Ctenolepisma に属する。

屋内性なので汎世界分布。蛾でもないのに鱗粉持ち。

幼少のみぎりには銀色のヤマトシミCtenolepisma villosa しか見た記憶がないが、最近見るのはこちらばかりである。

原始的な昆虫で(今は昆虫じゃなかったか?)、成虫になった後も脱皮をする。

屋内性の種は模様でほぼ同定できるが、正確には腹部背面の毛櫛の数などが用いられる。

セスジシミ Ctenolepisma lineata
腹部は10節。それぞれの腹節の毛櫛の位置を赤丸で示す。

屋内性ではセイヨウシミLepisma saccharina だけが束にならずに単毛である。

私はまだ見たことがない。東北とか寒い地方に多いそうな。

腹端腹面には腹刺があり、オスで2対か3対、メスでは3対だそうだ。

アバウトな話である。

第10節は短い三角形。


セスジシミ Ctenolepisma lineata

目は複眼とは異なり、個眼の集まりとのこと。

イシノミはどうなんだろう?

あっちは複眼なのかな?


ではまた