2019年2月23日土曜日

アオバトのナミウモウダニの1種

日曜日のお散歩。
羽が落ちていた。
猛禽の食事後みたい。
被疑者はアオバトと思う。
たまに尺八みたいな鳴き声は聞くことがあるが、姿は見たことない。

なんでも拾っちゃう系のオジさんなので、少し持ち帰る。
拡大
!!!
ダニついてた。
プレパラートにしてみると♂♀揃っていた。
まず♀
Psittophagus sp.
やたらと肥厚部があるのでググってみたら、Psittophagus 属というのに似ている。
属名で調べなおすと、ナミウモウダニ科に属するようだ。
ciniiで検索かけても何も引っかからない。。。
ただ、ナミウモウダニ科は日本産は1種あり、
トキウモウダニが野生絶滅で記録されている。

奇主寄主が超有名どころじゃないと寄生者なんか無視されるわな。

さてアオバトのウモウダニを、もちょい拡大
①;触肢 Palps
②;鋏角 Chelicera カニのハサミ状だけど縦向きなのでこの角度では見えない。
③;生殖弁(産卵口)無気門類は通常前方に向かって卵が押し出されてくる。

無気門類はコナダニ亜目と同義。分類名なんかは例えばココ↓
「日本分類学会連合のダニ目のページ」とか参照。

後体部拡大
杯状に見えるのが、体内にある「受精嚢 Spermatheca」。
この画像では見えないけど、細い管が伸びて肛門の脇あたりに交尾口がある。
コナダニ亜目はササラダニと違って交尾をする。
(ササラダニの生殖方法は変わってるけど、割愛)
コナダニ亜目は♀の上後方に♂が反対方向に向いて乗っかり、
生殖器を反転して交尾する。

♂はこんなの。
Psittophagus sp.
♂後体部拡大
④;生殖器 Genitor organ 横から見ると下向きの鈎針状で、交尾の際は後ろ向きに起き上がる感じで交尾するのだと思う。

⑤;肛吸盤 Anal sucker この場合は交尾のときに♀の背中に貼り付くためのもの。
他のコナダニではヒポプスhypopusのときに他の昆虫に便乗するときに使うみたい。

本種はそうでもないが、種類によっては♂の第3脚や第4脚が肥大している。
Analgidae」(ウモウダニ科)とかで画像検索かけるといろいろ見れてオモシロい。

遠縁のホコリダニ科にもこんな♂がいて最終脱皮前の♀の若虫をブッとい第4脚で抱えて歩きまわっているのをみる。

交尾相手を予約して離さないとかダニの世界は必死である。

たぶん脚の太いウモウダニ類も同じことをしているのだと思う。


ではまた

2019年2月16日土曜日

ナカジロコガネショウジョウバエ

連休だというのに、お散歩コースは寒いしロクなものがいない日が続いている。
月曜日の朝は雪だったが、とりあえずお散歩。
途中、霙になったりトテモ寒い。
と、アラカシの枝に縮こまってるちびこいハエがいた。
寒くて飛べないので撮りやすい。
翅に斑紋付き。

触角刺毛が羽毛状なのでショウジョウバエ科
ミギワバエ科にも枝分かれしてるのがいるけど、
下向きの枝がなく上側の枝しかないので区別できる。
なんというか顔つきが違うので判るけど。

この模様つきのショウジョウバエ、神戸では時々採れるけど調べたことがなかった。
なのでフィルムケースにポトンと落として回収。
側面
体長は3.5mm。
拡大。ちょいと空気を吹き込んで膨らましてある。
腹部背面
腹部も模様も特徴的。山、小、小、みたいな。。

で、以下の文献で絵合わせしてみた。

Systematic Study of Drosophilidae and Allied Families of Japan.(Okada,1956)

上のタイトルでweb検索するとpdfファイルが無料で見れる。
「日本ショウジョウバエデータベース」のサイト内にある文献。
これでナカジロコガネショウジョウバエ Leucophenga interrupta らしいと判ったので学名で検索すると割と最近の論文がヒット。↓

The genus Leucophenga (Diptera, Drosophilidae), part III: the interrupta species group from the Oriental region, with morphological and molecular evidence (Jia Huang,2013)

これは、ZooTaxaで無料で見れる。(タイトルクリックで該当ページに飛びます。)
こちらは中国の研究者が書いた、近縁種たくさんいたよー、という論文。
こちらの論文に詳しい交尾器の図があったので比べてみると
腹部の模様とか差異があるが交尾器では L.interrupta が一番近かった。

ということで、このご近所のハエは
ナカジロコガネショウジョウバエ Leucophenga interrupta で決定。

文献の記録は九州以南だけど気にしない。文献古いし神戸にもいるでしょ。
幼虫はマツタケ、シイタケなどキノコにつくらしい。
交尾器はおととし採ったこの個体のを見てみた。
2017年3月19日採集
まず間違いなく同じ種類。
腹部をはずして10%苛性カリ水溶液で炊いて腹端部をはずす。
交尾器部分側面
矢印部分にあるaedeagusははずしてある。
Okadaの文献風に拡げた状態。

丸印の鞘に挟まっていたaedeagusはこんな形。
右が付け根側。
上部に突起が伸びるのが他の interrupta species group との違いっぽい。

ではまた

2019年2月9日土曜日

ハエの繭・・・ヒラタキノコバエの1種

最近のネタがないので去年の画像フォルダから。

昨年の記事「ナガマドキノコバエの1種」で出てきたエノキの立ち枯れにいた別の幼虫。
キノコ表面に粘液を貼り渡してその膜の上を、うにっくうにっく。
2018年10月7日
ヒラタキノコバエ属 Keroplatus sp. の幼虫
ナガマドキノコバエを採った同じ立ち枯れで翌月の10月に終齢を採集した。
3日後、
粘液を使ったのであろう、オブラート製みたいな繭を作った。
繭を作るのは双翅目では珍しい。
ワタシ的には他にはヒラタアシバエくらい。

繭から5日後、早くも羽化。
ヒラタキノコバエ属の1種 Keroplatus sp. 
背面
ヒラタキノコバエ属の1種 Keroplatus sp. 
体長は10mm前後。背中にV字模様。


本属の特徴は平たく幅広い触角が特徴である。

日本にはミツボシヒラタキノコバエ Keroplatus nipponicus
メスグロヒラタキノコバエ Keroplatus testaceus のほか
未記載種が2種以上いるらしい。
以前採ったミツボシヒラタキノコバエと思しき個体と比べると
腹部の黄帯が狭いので未記載種のような気がする。
時期的なもので同種かもしれない。♂が出ていないので判らない。

さて、本種はツノキノコバエ科 Keroplatidae に属する。
ツノキノコバエ科といえば、ニュージーランドのヒカリキノコバエが
同じツノキノコバエ科である。
洞窟に住むヒカリキノコバエの幼虫も粘液で巣を作るが、
その巣は発光して他の昆虫をおびき寄せて食べるらしい。
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巣じゃなくて尾端が光るとの事です。
くずはの家の高橋所長よりご教示戴きました。
詳しくはコメント欄参照。
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日本のもひょっとして?と何年か前に見たときに巣を持ち帰って
真夜中に見てみたが、光ってはいなかった。
こっちはキノコを食べるから光る必要ないか、、、と
それで終わっていたけれど、

今回、紫外線を当てたらどうなのか?をやってみた。
繭のかけらを取り出して、、、

可視光の出ないブラックライトを当ててみる。。
むむ、、トテモ微妙。。
写真では設定をいじってるのでよく光ってるように見えるけど、
普通に白い紙のほうがよく反射しているくらいである。

ここ数年紫外線を反射する生き物が話題になったりするのでやってみたけど、
なかなかオモシロい発見はころがってませんな。
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2019年2月12日追記
コメントに「ハナアブの世界」の市毛様より情報を戴きました。
なんと66年も前に本属の幼虫の発光現象が報告されておりました。
「キノコバエ幼虫の発光」(←リンク先は国立国会図書館デジタルコレクション)
定年近い私が生まれる前の観察例とかビックリです。
検索すると他にも2017年に神奈川でも観察されていた。
県内初 発光生物を発見 くずはの家にキノコバエの仲間
(ニュースサイトなのでこちらは消えるかも。)
私が見たときは光ってるようには見えなかったけども、、、
種類が違うのかキノコが違うとか何か条件が必要なのか。
このグループは幼虫でも判りやすいので今後も注視していきたい。
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2019年3月16日追記
コメント欄にくずはの家の高橋所長様より直々の情報を戴きました。
2017ミドリ107号「光るミミズって見たことある?」その3」に
ニュースより詳しく書いてありました。
詳しくはコメント欄参照のこと。
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ではまた

2019年2月2日土曜日

クロバネフユシャクとシロオビフユシャクの触角比較

とくにネタを思いつかないので、前回の記事を引っぱるの巻。

フユシャクの近縁種間って交尾器の差異が小さい気がする。

初めて採ったクロバネフユシャクもワタシ的にはそう思う。
検索表に載っていた触角の差が形態的には大きな感じがする。
標本箱を探したら1個体だけシロオビフユシャクがあったので、
両種をちょっと撮影してみた。

全景、スケールの目盛りは1mm。
シロオビフユシャク Alsophila japonensis
2012年1月22日採集
クロバネフユシャク Alsophila foedata 
2019年1月20日採集
前翅長の実測値はシロオビが20mmでクロバネが14.5mm。
一見して大きさが違う。

次、触角の繊毛の長さ。
シロオビフユシャク Alsophila japonensis
クロバネフユシャク Alsophila foedata 
標本にすると毛が寝てしまったので少し判りづらいが、
触角中央付近のひとつの節と繊毛の比率が、
クロバネで3.2倍、シロオビでは2倍。
おおむね検索表通り。

明日のお散布お散歩ではそろそろシロフフユエダシャクが見れるだろうか。

ではまた