2016年9月24日土曜日

薄茶のもこもこ。

8月に採ってきた腐葉土を入れたタッパーの蓋に出来た繭。長径は約8㎜。

拡大
まるでグースダウンのような毛を繭の素材にしている。

光源の角度を変える。繭と言っても糸は少なく蛹が透けて見える。

一週間後に羽化。
幼虫がいるのは把握していたが、写真をそのうち撮ろうと思っているうちに手遅れ。
ハガタベニコケガ Barsine aberrans 

♂は前翅前縁中央が出っ張リ、腹部に暗灰色の毛を密生する。

よく似ているのがハガタキコケガ Miltochrista calamina だが赤みが無く全体に黄色い。
もうひとつのソックリさんが ベニヘリコケガ Miltochrista miniata
こちらは区別し難いが、後翅の色調がベニヘリコケガの方が黄色っぽく見える。
黒線の出方はそれぞれに変異が大きく当てにならない。

こちらは以前見かけたハガタベニコケガと思われる幼虫。
2015.VII.20
一様に灰褐色。ハガタキコケガでは明るい黄褐色なので区別できるようだ。

で、こちらはベニヘリコケガと思われる幼虫。
2016.IV.29
上とよく似ているが、後胸、第1~3腹節の毛が黒色。

このタイプの幼虫は「晶子のお庭は虫づくし」で飼育記録があり、
ベニヘリコケガが羽化したとのこと。→「ベニヘリコケガの観察日記

いずれの種も年数回発生し、おもに地衣類を食べるようで、
与えると緑の葉もしぶしぶ食べる感じ。
おそらく樹皮に生えた緑藻?ぽいものも雨などで湿ったときに食べているんじゃないかと思う。


ではまた

2016年9月17日土曜日

落ち葉のちび毛虫。

8月下旬に採ってタッパーに詰めていた腐葉土の落ち葉が糸で綴られていた。
あ~何かいもむしがいるなぁ、と思っているうちに小さな蛾が羽化。


カクバネヒゲナガキバガ Lecitholaxa thiodora

幼虫撮影しそびれてしまった。
仕方がないので脱皮殻を探す。
あったあった。

カクバネヒゲナガキバガの蛹殻と終齢幼虫の脱皮殻


カクバネヒゲナガキバガ類の幼虫は小蛾類には珍しく
二次刺毛が発達した毛虫である。
腐葉土の落ち葉を見てるとたまに見かけるが、写真撮ってなかった。。。

蛹にも特徴があり、腹部の気門がかなり突出している。

蛹の腹端部
薄い繭を作って蛹化するが、尾突起には固定用の鉤状刺毛が並ぶ。

腹部背面の第4節と5節の間にトラバサミ的な構造がある。

腹端部を斜め下から。
腹部の8・9・10節は癒合しているので境い目がわずかに判る程度。
肛門は必ず第10節に開口するが、生殖口の位置は雌雄で異なる。
画像のように第9節の生殖口が、第8節にずれこむように開口しているのは♀。
♂は普通に第9節に開口している。


「日本の鱗翅類」にはヒゲナガキバガ類の幼虫が数種記載されているが、
腹脚の鉤爪数はキベリハイヒゲナガキバガで30本前後、
カクバネヒゲナガキバガでは40本前後、クロカクバネヒゲナガキバガでは22本前後、
オビカクバネヒゲナガキバガでは20本弱・・・

等々。
蛹の気門はいずれも突出するが、他種ではやや突出する程度で、
カクバネヒゲナガキバガのようにかなり突出する種類は今のところ他には無いようだ。
いろいろ詳しく記載されているので興味のある方は読まれるとよいだろう。

ではまた

2016年9月10日土曜日

ハサミとヘラ

お盆の明けた8月16日、会社はまだ休みなのでお散歩に出た。
その時に見かけたハチ。
少し小振りのオオハキリバチ?

アクロバチックな伸びをしながら身づくろいしていたので
フィルムケースに納めて帰った。

冷蔵庫に入れていたのを思い出して図鑑で調べてみた。

結論、      クズハキリバチ Megachile pseudomonticola
でした。

クズハキリバチの顔
ハキリバチの仲間は葉っぱを丸く切り取って重ね合わせて巣の小部屋を作る。
そのため大顎は葉っぱを切り易いようにハサミ状で、クズハキリバチでは顕著で
刃の部分が長い。

本種に見た目がそっくりなオオハキリバチはハキリバチの中では異端の存在で、
葉っぱではなく、植物のヤニを集めて巣の仕切りに使う。

以前採った    オオハキリバチ Megachile sculpturalis の顔
大顎は刃の部分が短く、ヘラのような形。
ヤニを捏ねるためにこのような形になったのか、
この形だから葉っぱを切るのをやめてヤニを使うようになったのか、
どちらが先なのだろうか?

ではまた。




2016年9月2日金曜日

真っ白なもこもこ。ハゴロモヤドリガ

お盆前の山の日に見かけたベッコウハゴロモ。

左右で微妙に色が違う。

これは!と覗き込むと、、、

思った通りハゴロモヤドリガ Epiricania hagoromo の幼虫がいた。
蛾界では非常に珍しい、他の昆虫に寄生する生態の持ち主である。

久し振りに見たのでお持ち帰り。
翌日にはフィルムケースの壁に営繭し、一週間後に羽化した。

真っ黒けの地味蛾である。
これが同科のセミヤドリガなら、真っ黒な翅ながら青い斑点を散らしたまるで星空のような美麗な種なんだけど。
ただし両種とも鱗粉がとても禿げやすく、きれいな標本は作り難い。

それはさておき羽化後の繭、中身を出してみた。

矢印は蛹化したときの終齢幼虫の脱皮殻。

洗剤を垂らしたぬるま湯に浸けて広げてみた。

頭部の骨化が弱いが、普通に胸脚3対、腹脚4対、尾脚が1対あり、
きわめてノーマルないもむしである。

これをプレパラートにして光学顕微鏡で拡大して見た。
以下顕微鏡画像の目盛りの数字は0.1mm(小さい1目盛りは0.01mm)

ハゴロモヤドリガ幼虫頭部の拡大。

大腮は細いが先端に2歯がある。
個眼は鱗翅目の基本形の6個認められる。(1個は判りづらい)

ハゴロモヤドリガの胸脚

2節に退化しているが爪は発達している。

ハゴロモヤドリガの腹脚

鈎爪は単列の環状で外開きに配列する。
爪の数は28個前後。

ところで栄養摂取の方法はどうしているのか?
ハッキリとした観察事例は未だ無かったと思う。

餌もやらずに死んでしまった寄主のベッコウハゴロモを10%苛性カリ水溶液で炊いて筋肉を溶かし、皮膚に異常がないか観察。

腹端背面の寄生側、カサブタ状の部分(青丸内)がある。
アルカリ溶液で炊いても残っているので、単に体液が乾いたカサブタでは無さそうである。

カサブタ状部分の腹節を広げて拡大

下のカサブタをさらに拡大

左のカサブタの上、節間膜に穴があいているみたい。

あと右後翅裏面

中央辺りの翅脈にも同様のカサブタらしきものがみられた。
青丸部分の拡大。
腹部同様に穴があいているように見える。

昆虫の翅はカラカラの汁気が無さそうな感じであるが、翅脈には体液が通っている。

ということで、多分だけどハゴロモヤドリガはハゴロモに傷を付けて体液を摂取して成長してるんじゃないかなー?
と思う。

あと、大量の白いワックスを分泌するために、ハゴロモの甘いおしっこも飲んでいるんじゃないかと推定してみたり。。。

多産するところで誰かちゃんと観察してくれないかしらん。

ではまた