2023年6月24日土曜日

模様のあるヒメガガンボと便乗マヨイダニ

6月11日に見かけたヒメガガンボ。
ヒメガガンボの一種
Discobola sp.
模様付きの翅。
フィルムケースを被せて持ち帰り。

側面
ヒメガガンボの一種
Discobola sp.
前翅拡大
模様で翅脈がかえって判りづらいので翅脈のスケッチ
日本産水生昆虫第2版などを参考にして、、、

Sc脈が翅縁に達すること、
sc-r横脈よりRs脈の分岐が基部寄りにあること、
R1脈はR2脈と合流し翅縁に達すること、
CuA脈とCuP脈は独立して翅縁に達すること、
触角は14節、
口吻は短い、
CuP脈とA1脈を結ぶcup-a横脈を持つこと、

などの特徴からDiscobola属に落ち着いた。

ネットを検索したら、Discobola margarita と言う種のように思うが、本属は日本産6種ほどいるみたいなので特定は避けておく。

その腹部
なんかくっついている。
のでプレパラートにして拡大。
カザリマヨイダニ属の一種
Lasioseius sp.
こちらは「日本産土壌動物第二版」で検索してみたらカザリマヨイダニ属の一種に落ち着いた。

以前はマヨイダニ科Ascidaeだったのがいくつかに分けられて、マヨイダニモドキ科Blattisociidae に属するとのこと。
この仲間は昆虫に付着して移動する習性があるそうで、よく便乗ダニと言われる。
便乗ダニと言えば、ミズダニ類がくっついているのを見るが、Discobola属の幼虫は土壌・朽ち木中で見られるそうなのでミズダニ類では無く、土壌性のマヨイダニが便乗したのだろう。
あとはコナダニ類のヒポプスが朽ち木の甲虫や、単独性ハナバチにくっついているのをよく見る。

おまけ
胸部拡大
オレンジ色のはタカラダニの幼虫でこちらはしっかり吸血している。
飽血するとポロッと落ちて、脱皮したあと若虫以降は自由生活に移るそうな。

ではまた

2023年6月17日土曜日

ニセケバエの1種とナガサキニセケバエ

日曜日はあいにくの雨。。

クリの葉裏にハエの群れ。

2023年6月11日

ニセケバエ科の1種
Scatopsidae gen.sp.
ニセケバエの1種というのは判ったが、他にめぼしいものがいないのでフィルムケースイン。(他にもっとおるやろ!と言うツッコミは無視)

♂拡大
ニセケバエ科の1種
Rhegmoclema sp.?

体長約2mm。

♀拡大
ニセケバエ科の1種
Rhegmoclema sp.?

外見の差はあまりない。

翅脈を見ると、11年前のおちゃたてむしさんのブログに紹介されていた種と同じもよう。↓

「ニセケバエ科の一種」

と言うことで、今回のもRhegmoclema属の1種のようである。近所だし。

日本昆虫目録のニセケバエ科では5属6種類の記録があるが、Rhegmoclema属はその中に入っていない。

研究者の少ない地味なグループなのでよくあることとしよう。

と言うのもアレなので、?付きにしておこう。

顔面

ニセケバエ科の1種
Rhegmoclema sp.?
複眼が左右接している。

前翅

ニセケバエ科の1種
Rhegmoclema sp.?
1脈の基部が消失してM2脈との分岐部が判らない。

透化処理した頭部

ニセケバエ科の1種
Rhegmoclema sp.?
触角は12節。

第7腹節

ニセケバエ科の1種
Rhegmoclema sp.?
背板後縁中央に突出部がある。

♂交尾器

ニセケバエ科の1種
Rhegmoclema sp.?

あと、交尾器につながって腹部にあったもの。
ニセケバエ科の1種
Rhegmoclema sp.?

クリオネみたいなこの器官はネットをあさったら、Sperm pump とか、精子ポンプとか言う器官らしい。

初めて知った器官である。

平均棍(へいきんこん;halter,複数形はhalteres)

双翅目は後翅が縮小しており「平均棍」と呼ばれる。

♀交尾器

ニセケバエ科の1種
Rhegmoclema sp.?
球形のは受精嚢。カバーガラスかけたら割れちゃった。


いつもはこんな感じで不明種いた、で終わっているけど

ちょうどもらい物で名前が判るのがあったので貼っておく。

大阪府下の街中で採れたものとしてテープに挟まれた状態でやってきた。

ナガサキニセケバエ
Coboldia fuscipes
スケールは0.5mmなので、こちらも体長は約2mm。
ひでぶ状態なので、透化処理した部分図を以下。

頭部

ナガサキニセケバエ
Coboldia fuscipes
こちらの触角は10節しかない。

前翅

ナガサキニセケバエ
Coboldia fuscipes
本によって翅脈の名称が変わるので()付きで書き込んである。

1脈は基部で消失せずM2脈とつながっている。

第7腹節

ナガサキニセケバエ
Coboldia fuscipes
背板後縁中央は細長く突出する。

腹板には小さな切れ込み。

♂交尾器

ナガサキニセケバエ
Coboldia fuscipes
同じ科なのにずいぶん違う。

細長いゼンマイ状のペニス。

Sperm pump は似たような形。


平均棍

ナガサキニセケバエ
Coboldia fuscipes
こちらは基部に剛毛が列生している。

外見はほぼ一緒なのに、

拡大してみるとずいぶん違いがあって面白い。


ではまた

2023年6月10日土曜日

ヒメツヤツチカメムシ

ブログに未紹介で名前の判るのをお散歩写真から探したらちっちゃくて黒い虫になっちゃった。

2023年5月21日
ヒメツヤツチカメムシ
Chilocoris nigricans

体長4㎜弱。

日本原色カメムシ図鑑(全国農村教育協会編)の1巻では学名が、

Chilocoris piceus になっているが誤同定。

同図鑑の3巻で Chilocoris nigricans に修正されている。


背面

ヒメツヤツチカメムシ
Chilocoris nigricans

特徴はツヤのある体と前胸を前後に区切る点刻列、頭部前縁に短棘列を持つこと。

腹面

ヒメツヤツチカメムシ
Chilocoris nigricans

頭部拡大

ヒメツヤツチカメムシ
Chilocoris nigricans
短棘列は頭部側葉に各6本ずつ計12本。
左の1本は触角で隠れちゃった。

中葉は前縁に届いていないようだから、実質頭部前縁に12本短棘列が並んでることになる。

同じようなチビ助で短棘列がない種類は以前紹介している↓

「チャイロツヤツチカメムシ」←クリックで記事に飛びます。

おまけ

臭腺域の拡大

ヒメツヤツチカメムシ
Chilocoris nigricans
艶消しの部分が蒸発域。


ではまた

2023年6月3日土曜日

ハチのまねをするハチ2・・・トガリハチガタハバチ

日曜日のお散歩で見かけたハチ。

ホソアシナガバチ的なハチが何かをもむもむ食べていた。

トガリハチガタハバチ ♀
Tenthredo smithii
よく見たらハバチであった。

犠牲者は、翅の残骸から見てプライアシリアゲのよう。

ハバチの仲間は、蛾みたいに卵巣が成熟した状態で羽化するタイプではないので割と肉食性が強く、他の昆虫を捕食している場面を見ることが多い。成虫になってから卵巣を成熟させるのだろう。

タイトルに2を入れたのは、旧ブログでハチガタハバチを紹介済みだから。↓

insectmoth.hatenablog.com

ハチなのにハチガタとはこれ如何に?

2種の区別点は触角全体が褐色なのがハチガタハバチで、触角基部と先端数節が淡黄色になるのがトガリハチガタハバチ。

ハチガタハバチは2・3年に1回見掛けるが、トガリハチガタハバチは初めて見るので確保した。

以下死体画像。

背面

トガリハチガタハバチ ♀
Tenthredo smithii
死体になるとアシナガバチには見えない。

腹面

トガリハチガタハバチ ♀
Tenthredo smithii
頭胸部側面
トガリハチガタハバチ ♀
Tenthredo smithii
矢印の中胸小盾板と、他に中胸前側板側面がピラミッド状に隆起するのが本種の特徴である。

ハチガタハバチは尖らずに丸く隆起する。


トガリハチガタハバチ ♀
Tenthredo smithii
頭盾前縁は凹型にくぼむ。

上唇は丸い。

大顎も「肉食です!」って感じ。


おまけ。鞘から引き出した産卵管

本種の寄主植物は、ヤマホトトギス、ササユリ、ウバユリ、シオデ、サルトリイバラとのこと。

ハチガタハバチはサルトリイバラのほか、シオデ類につくそうだ。

食草が重複してるけど、幼虫で区別可能なのだろうか?


ではまた