2020年12月26日土曜日

トラフカクイカの♀成虫

 今日はワタクシ的初見の虫

お散歩コースのお地蔵さんに止まっていたのを確保。

アカイエカにしては大きいな?と思っていた。

トラフカクイカ Lutzia vorax

昨年でた「日本産類全種検索図鑑」が役に立つ時が来た。
(※誤字ってた。「←(」様よりご指摘。ありがとうございました。)

本種の特徴を上記図鑑から抜き書き。

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♀の小顎髭は口吻より短く、小盾板は3葉に分かれる(ナミカ亜科 Culicinae

気門前域に刺毛はない。前翅覆片に鱗片がある(ナミカ族 Culicini

翅基片の縁鱗は細く、触角の第1鞭節と第2鞭節は同じ長さ

爪の付け根が肉質板で隠れてはっきり見えない

中胸上後側板下部の刺毛は前縁に沿って4本以上並ぶ(カクイカ属 Lutzia

カクイカ属は日本産3種だが本州に産するのはトラフカクイカ1種。

他は沖縄以南か小笠原固有種なので除外できる。

トラフカクイカの特徴は以下。

口吻、小顎髭、脚部腿節に白色鱗片が混じる。

腹部第7,8背板には暗色鱗片がある。

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各部の拡大

胸部背面

小盾板は3葉に分かれるの図。


胸部側面

sp:中胸気門spiracle

Aは前胸背後側片pplの刺毛。気門前域は点線で囲んだ部分。

Bは中胸上後側板の刺毛。


頭部

口吻;見えているのは下唇で、中に上唇、大顎、下咽頭、小顎が隠れている。

小顎髭:maxillary pulpus 

第1鞭小節:1st flagellomere 


爪の根元は隠れるの図。


翅の基部

矢印が翅基片(覆弁calypter)、黄色円内は覆片(小翅片)alula

翅脈の毛や体毛の一部は扁平で「鱗片 scale」になるのはカ科の特徴の一つ。


頭部背面

小顎髭に白色鱗片が混じるの図(矢印)


背面

数字は腹部第6・7節。暗色鱗片が混じる。

6・7・8節が白色なのは、沖縄以南のサキジロカクイカ Lutzia fuscana


おまけ

前翅

翅脈の記号を入れる気力が失せた・・・・


ではまた

2020年12月19日土曜日

クロサビイロマルズオオハネカクシ・・・和名が長くなってる

 採った虫貼るだけ。

砂防堰堤の草積みをどけたらいた。

2020年12月13日、神戸市
20㎜ほどの大型のハネカクシ。

これだったら細かく折りたたんだ後翅も観察しやすかろう、と持ち帰ってみた。

背面

クロサビイロマルズオオハネカクシ
Ocypus lewisius

原色日本甲虫図鑑IIでは、クロサビイロハネカクシだったが、

日本産ハネカクシ科総目録(2013)で和名改称されていた。


腹面

クロサビイロマルズオオハネカクシ
Ocypus lewisius

さて後翅を引き出そうとして、、、

???

出してみたら短かった。

前翅も癒着しているのか開かない。

本種は短翅型が普通なのかしらん?

まさかの別種?


♂だったので交尾器も貼っておく。

側片?がなんというか、、、5番アイアン

反対側


おまけ

頭部腹面


黒バックも

前足は雪国仕様でかんじき履いてます。(ウソ)


同定に自信がないので間違ってたら教えてね。


ではまた

2020年12月12日土曜日

ササハモグリバエとそうじゃないやつ

お散歩コースは六甲山系のはじっこなので
ネザサがたくさん生えている。

で、よく見るのが葉潜り虫。
英語で言ったら Leaf miner

この間見たのはこれ。
2020年11月29日

葉潜り虫は蛾、ハバチ、ハエ、甲虫といろんな分類群で見られるが、頭も脚もなく「口鉤」というかぎ状の大顎しか見えないので、ハエ(双翅目)の幼虫である。
この時期はネタがないので何となく持ち帰ってみた。
ササハモグリバエ辺りかなと思っていたら、この間脱出して囲蛹になったのを見てアレっとなる。
前後に突起がある寸詰まりの囲蛹。

数日後に見ると角まで生えてきた。
なんだこれ?

角が生えてくる囲蛹にはアリスアブとかノミバエで見られるけれど、ハモグリバエにそんなのいたっけ?

画像フォルダを探したら、今年2月にもササに潜るウジを撮っていた。
2020年2月2日
ササハモグリバエ Cerodontha bisetiorbita ?

こちらは葉の中で囲蛹になっており、つるんとした俵型。
こっちがたぶんササハモグリバエ Cerodontha bisetiorbita 

最近撮ったほうはハモグリバエ科であるかすら怪しくなってきた。

無事羽化したら続報書きます。

2月の方は撮っただけで採ってないので、こちらも真相は不明。
なんでも採っとかなあきませんな。。。

ではまた

2020年12月5日土曜日

触角が櫛状のアリガタバチ

日曜日のお散歩で見かけた、ちっちゃいハチ。

2020年11月29日

老眼でぼんやりとしか見えないが触角が変なので確保。

めっきり寒くなったので逃げられることがなくてよい。

側面

クシヒゲアリガタバチ Epyris formosus
背面
クシヒゲアリガタバチ Epyris formosus ♂

「日本の昆虫Vol.1 アリガタバチ科(日本昆虫学会編.2006)」によると、日本のアリガタバチ科で櫛状の触角をもつ種は少なく、クシヒゲアリガタバチ♂とエダヒゲアリガタバチ♂の2種のみである。いずれも♀の触角は糸状。

クシヒゲアリガタバチの触角は触角第2節と3節はリング状で小さく、4節から12節が櫛状であるのに対し、

エダヒゲアリガタバチ Epyris pectinatus では触角第3節から11節が櫛状で12節と13節が円筒状であることで区別できる、とある。体長もエダヒゲは2.5~4㎜と小型である。

本種はアリガタバチ科 Bethylidae ヒメアリガタバチ亜科 Epyrinae ヒメアリガタバチ属 Epyris に属する。

上記の文献から、

ヒメアリガタバチ亜科 Epyrinae の特徴を抜き書き

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前伸腹節の後側縁に突起がない

腹部第2節が大きく発達することはない

複眼は大きくその直径は頭幅の0.3倍以上

基脈は単純で別の翅脈が派生しない

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で、ヒメアリガタバチ属 Epyris の特徴は

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触角は13節

頭盾前縁は中央で大きく突出する

径脈Rは基脈Bより長い

中胸背縦斜溝は明瞭

基脈Bは亜前縁脈SCの先端に接続する。

小盾板前縁には1対の小孔がある

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などなど。

各部を拡大してみる。


SC:subcosta 亜前縁脈

PS:pterostigma 縁紋

PRS:prostigma 亜縁紋

R:radial vein 径脈

B:basal vein(Rs & M)基脈

※本種には亜縁紋はほとんどないので括弧つきにした。

顔面

触角間から前方が頭盾。

触角第2節と3節(②と③)は短い。

胸部側面

細腰亜目(ハバチ・キバチ以外のハチ)では第1腹節と後胸が融合しており区切りが判りにくいが、背面が腹部の名残で前伸腹節と呼び、それ以外が後胸の名残であるようだ。

胸部背面

いろんな印刻があってカッコよし。

おまけの胸部腹面


ではまた

2020年11月28日土曜日

ツマキアオジョウカイモドキ幼虫の食べたクモ卵はコクサグモでした。

2月に書いたクモの卵を食べるツマキアオジョウカイモドキ幼虫続報。

食べ残ったクモ卵から孵化した幼体にキイロショウジョウバエを与えて何とか飼育して現在。

コクサグモ Allagelena opulenta

腹面

コクサグモ Allagelena opulenta

生殖器が見えないのでまだ成体ではないが、

どうやらコクサグモ Allagelena opulenta でよさそうである。


近縁種にヒメクサグモ A. donggukensis がいるが、コクサグモ幼体は全体赤っぽいのに対し、ヒメクサグモ幼体は黒っぽいことで区別できるようだ。

ちなみにクサグモ A. silvatica 幼体は頭胸部と足が赤く、腹部が黒っぽいことで区別できるようだ。


普通なら成体になっているはずだけど、バナナで増やしたショウジョウバエだけで飼育しているので、成長がいまいちである。


そうそう、

孵化した幼体で予想された @Sasagani_ya さん、お見事でした。


そのときのやり取り↓。


貼った画像。


ではまた

2020年11月21日土曜日

ヒロズコガ科不明種

 10月上旬のお散歩コース。

谷筋のコナラ倒木にペッタリと貼り付くようにキノコが生えていた。

なんかいるかな?

と5㎝角ほど樹皮ごと捲ってタッパーに入れておいた。

しばらくはクロバネキノコバエが無限に羽化していた。

最近静かになったなと思っていたら、今週になって小さな蛾が羽化してきた。

ヒロズコガ科の1種
Tineidae gen. sp.

前翅長3.5㎜ほど。

見たことない模様をしている。

属すら判らない。

キノコに羽化後の蛹殻が飛び出していた。

取り出した繭と蛹殻
繭に残った終齢幼虫の頭殻には個眼が見当たらなかった。

翅を拡げたらこんな。
ヒロズコガ科の1種
Tineidae gen. sp.

神戸市の裏山でも判らない虫でいっぱいである。

未記載種かなぁ?


ではまた

2020年11月14日土曜日

遠慮したい新顔が来ました。仮称ウメシロヒメヨコバイ改めモモヒメヨコバイ

先々週のツイート

後で調べたら Singapora shinshana という侵入種らしく、

今年に入ってあちこちの農協の特殊報で注意喚起されていた。

最近のものでは「仮称ウメシロヒメヨコバイ」と和名がつけられていた。

農家の人には学名だけだとめんどくさいだろうしね。

正式な和名ではないから「仮称」つき。

ニジュウヤホシテントウをテントウダマシと呼ぶようなもの。

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2022年9月23日追記

「最近話題となっている病害虫(植物防疫所病害虫情報126)」(リンク先pdfファイル)によると、

「植物防疫75巻11月号」に和名が提唱された模様。

モモヒメヨコバイに落ち着いたようです。

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翌週見たら件のモモはほとんど落葉していたが、

残った葉っぱには10個体ほど残っていたので回収してみた。

まず外観上の特徴は特殊報にも書いてあったおでこの黒点。

Singapora shinshana 仮称ウメシロヒメヨコバイ
モモヒメヨコバイ

ネットで学名を検索すると、↓

「Review of the leafhopper genus Singapora Mahmood (Hemiptera: Cicadellidae: Typhlocybinae: Erythroneurini)」

という Singapora属を再検討した論文がフリーで読めた。

ここに本種の交尾器が載っていたので確認

♂交尾器

判りにくいので分解
もう一枚。
各部の名称は忙しくて調べる暇がなかったけど、

各部の形状は Singapora shinshana の交尾器図と一致した。

ということで侵入種と確定。

♂背面

Singapora shinshana 仮称ウメシロヒメヨコバイ
モモヒメヨコバイ


よく見るヒメヨコバイと違って、腹部背面に黒い縞があるのが特徴的。

ここら辺の種類はじっくり見たことがないので日本産のヒメヨコバイに似たやつがいるかどうかは判らない。

他に似た種がいるか私は見たことないので判らないが、ウメやモモについているこんな模様のヒメヨコバイは本種とみてよいだろう。

♂腹面

Singapora shinshana 仮称ウメシロヒメヨコバイ
モモヒメヨコバイ


中胸腹板も黒い。


♀背面

Singapora shinshana 仮称ウメシロヒメヨコバイ
モモヒメヨコバイ

♀はおでこの黒点はあるが、他に特徴はなく単色。

♀腹面

Singapora shinshana 仮称ウメシロヒメヨコバイ
モモヒメヨコバイ

おまけ

♀の産卵管


ではまた 


2020年11月7日土曜日

カノコガの1齢幼虫ほか

ネタがないので、、、

この間産卵したカノコガの卵が孵化しているので貼っておきます。

カノコガ Amata fortunei 1齢幼虫

体長2㎜の糸くず。

10月12日に産卵して、10月19日に孵化。

卵期間は1週間。

横向き

カノコガ Amata fortunei 齢幼虫

枯れ葉とか、樹皮とかを入れたタッパーに入れて

ときどき霧吹き、金魚の餌をちょびっと与えるなど。


現在は5㎜ほど。

2020年11月2日撮影
カノコガ Amata fortunei 齢幼虫
2齢か3齢だと思う。

1齢幼虫は一次刺毛のみだが、2齢以降は二次刺毛が生えてくるので、毛虫っぽくなってくる。

テトラフィンの赤いとこが好きでよく食べる。

おまけ

テトラフィンを齧っているだけの動画。


ではまた

2020年10月31日土曜日

オオバナミガタエダシャクの卵

先日見掛けたぼろちぃシャクガ。

2020年10月18日
オオバナミガタエダシャク Hypomecis lunifera

幼虫で越冬して初夏に羽化するのは大型だけど、

秋に羽化する2化目はやや小ぶり。

フィルムケースに取り込んで2日目。

おなかに卵が残っていたのか産卵した。

オオバナミガタエダシャク Hypomecis lunifera 卵

シャクガ科でよく見る俵型の形をしていた。

ちょっと前に見た2化目の♂
2020年10月4日
オオバナミガタエダシャク Hypomecis lunifera ♂

背景のブロック塀に溶け込んじゃった。
触角は櫛歯状。

越冬幼虫とか終齢幼虫は旧ブログで紹介済み↓。 

insectmoth.hatenablog.com

 

ではまた