2018年3月31日土曜日

またまたチビミズアブの1種

今週も簡単更新。

1月に持ち帰ってタッパーに詰めていた腐葉土から小さなハエが今週羽化した。

と思ったが、拡大して見ると違った。

背面
チビミズアブの1種 Zabrachia sp. 
側面
チビミズアブの1種 Zabrachia sp. 
腹面
チビミズアブの1種 Zabrachia sp. 
あちこちの絵合わせだけど Zabrachia属でいいと思う。
この間記事にした Wallacea属とは、
触角刺毛は長いけど、触角自体は太短いこと、とか、

前翅拡大

R4+5脈が翅縁まで合一したまま、(Wallacea属では翅縁近くで分岐する)
などの違いがあるようだ。

ここら辺は和名が無いからどうもお近づきになりにくい。。。

ではまた

2018年3月24日土曜日

クロハナアブの1種 Cheilosia sp.

今週は貼るだけ
日曜日に見たハナアブ、まっ黒け
クロハナアブ属の1種 Cheilosia sp. 
おしりの毛は金色。

クロハナアブ属の1種 Cheilosia sp. 
咲き始めた蕗の薹で吸蜜。

クロハナアブ属の1種 Cheilosia sp. 
市毛先生の「ハナアブの世界」を見るとクロハナアブ属のうち複眼に毛が生えて顔面は無毛のグループのようだ。

その中では キスネクロハナアブCheilosia ochripes に似ているが、
この名前で検索すると本種は秋に発生する種らしい。
ハエの掲示板によると春に発生するのは ニッポンクロハナアブCheilosia japonica
というのがいるらしい。
がハナアブの世界では和名も学名も未掲載。
掲示板では同種である説もあるという話で
ここいらで私は同定放棄。。。
クロヒラタアブの仲間より楽かと思ったらやっぱり難しかった。

気が向いたらそのうち展翅画像と交尾器をこの下に貼るかも。


ではまた

2018年3月17日土曜日

チビミズアブの1種の幼虫

少し暖かくなってきたものの記事にする虫はおらず。。。
ちょっと前の記事にしたニセアカシアの朽ち木、
記事はこれ→「樹皮下のヒメチビヒラタエンマムシ」
それを入れたフィルムケースをこの間かたずけた時、の虫。
チビミズアブ亜科 Pachygasterinae
残骸が出てきた。。。
一匹クロツヤバエっぽいのがいるが、他はすべて同一のミズアブ。
昨年羽化していたらしい。すっかり忘れていた。
体色は黒で翅は透明、腹部は短くて丸く、触角は紡錘形で触角刺毛は白い、
などの特徴から Wallacea 属の1種と思われる。
検索表や記載文を見たわけではないので当てずっぽである。
チビミズアブの1種 Wallacea sp. 
上は干からびた幼虫で、下は羽化後の囲蛹殻。
ミズアブを含むいくつかの双翅目は幼虫の殻の中で蛹化するため、
硬くなって中身が蛹になった状態を「囲蛹」と呼ぶ。

キラキラ白く光っているのはワックスだろうか。
干からびた幼虫の方を透過処理してみた。
薄皮を剥がすみたいに一皮むけた。
掃除して背面
チビミズアブの1種 Wallacea sp. 幼虫
矢印は前胸にある気門(前方気門)。

腹面
チビミズアブの1種 Wallacea sp. 幼虫
矢印は肛門。

前方気門

頭部には小さな触角がある

腹面にある肛門

トラバサミみたい。

透過処理して判ったが、背面から見ると1対の後方気門が背板の下に隠れていた。
ニヤリと笑っているような開口部が後方にある。
開閉できる構造にみえる。
ミズアブ科の幼虫は水気の多い所に住んでいるため、
気門の開口部が直接水にさらされないような構造が発達したのだろう。

以前見たことのある小型のミズアブ類の幼虫は、体表に細かい毛がたくさん生えていた。
が、本種の幼虫は細い柳葉状の剛毛が3~4対1列に生えているのみであった。

旧ブログでいくつか紹介してる↓
いずれも毛が多い幼虫だった。


Wallacea属はミズアブ科Stratiomyidaeのチビミズアブ亜科Pachygasterinae

日本昆虫目録第8巻によると既知種は4種。
Wallacea albiesta 本州、四国、九州、屋久島、沖縄
W. edashigei 四国
W. separata 宮古
W. tsudai 九州、奄美
全部和名が無い。分布から行くと Wallacea albiesta  
だが、区別点が判らないので何とも言えない。
ところで albiestaというのは誤植で正しくは Wallacea albiseta 
だとハエの掲示板に書いたあった。
どうも九大の昆虫目録の誤植がそのまま使われてしまったとのことだ。

おまけ
成虫は6月頃から見られる。
以前野外で撮った画像。
チビミズアブの1種 Wallacea sp. 
体長3mmほどのチビ助。でも複眼はきれい。
たぶんWallacea albiseta だと思うが特定は避けておく。

ではまた

2018年3月10日土曜日

離れないよ!・・・クマバチコナダニ

啓蟄を2日後に控えた日曜日、
天気も良く、キチョウ・テングチョウ・ルリタテハなどの成虫越冬組の蝶が飛んでいた。

てくてく歩いていると、、
キムネクマバチ Xylocopa appendiculata circumvolans
おなかが割れてキイロシリアゲアリにたかられているクマバチが落ちていた。
越冬明けでふらふら飛んでいるところを叩き潰されたのであろうか?
ナムナム・・・

とか言いつつ、なんとなく持ち帰る。

さて翌日、拡大して見るとなんかついてる。
翅の付け根に多く、(((もぞもぞ)))動いてる。

これ以前ツツハナバチで見た便乗ダニの仲間だな?とピンとくる。
旧ブログで記事にしている。↓
「ツツハナバチの便乗ダニ」

クマバチにも近縁種のコナダニ類が便乗しているらしい。
こういった花蜂の仲間にはダニが隠れる部屋のような窪みがある。
それを「Acarinarium(アカリナリウム)」とよび、日本語では「ダニポケット」とか、「ダニ室」などと称される。
クマバチには翅の後ろの胸部側面と腹部第1節にあるらしい。
腹部を見てみる。
何か溝のような感じ。
そこを拡大。
キムネクマバチの Metasomal acarinarium
う、ダニがみっしり詰まってる。。。
詰まっているのは周囲のものよりひと回り小さく見える。
腹部のダニ室は「Metasomal acarinarium 」と呼び、胸部のダニ室は
Mesosomal acarinarium」と呼称する。

論文を検索すると、クマバチには
クマバチコナダニ Sennertia alfkeni
コガタノクマバチコナダニ Sennertia japonica 
ヒメクマバチカザリコナダニ Horstia helenae
上記3種の便乗ダニが確認されており、ヒメクマバチカザリコナダニは非常に少なく、クマバチ上で見られるのはほとんど上の2種で占められるそうである。
と、調べていたのだが、クマバチコナダニ属 Sennertia 2種のことが大きさ以外どうにも要領を得ない。
調べていくと、この2種は同種内の形態的2型であることが判り、コガタノクマバチコナダニはシノニムで消えたようだ。
割りと近年判明したことで元論文は読めないが、以下のサイトの
の中で↓の記事にそのようなことが書かれていた。

ということでクマバチコナダニなのであるが、クマバチにくっ付いている状態は「ヒポプス(hypopus)」と呼ばれる第2若虫の状態で、口が退化し爪と吸盤が発達した特殊な世代である。上の方で「寄生」と書かず「便乗」と書いているのはそういうことである。

クマバチが営巣を始めて花粉を集めだすとそれに移って食べ、幼虫が育って糞をするとまたそれを食べて増えるらしい。
ほとんど共生というより居候である。
まあ、コナダニ類なんだからカビ類も食べると思うから、多少は巣内のカビ止めの役割くらいにはなっているのかも。

以下顕微鏡写真
クマバチコナダニ Sennertia alfkeni
大型個体
大型個体は体表の毛をつかんでガッシリとしがみ付いている。
頭の方の口器は退化して小さく目立たない。
第4脚には爪が無く長い剛毛が生えているが、何のためかは私は判らない。
ヒゼンダニとか寄生性のダニ類にも見られる形態だけど何のためだろか?

爪の拡大
大きい爪と付け根に小さい爪もあって挟む構造になっているよう。
爪の方向を変えてみると、
大きい爪は螺旋を描いて巻きつくようにしがみついているようだ。
落ちたら最後なのだから爪の構造も進化してるようだ。

背面のキチン板の拡大
指紋みたいな模様。室内塵にいるチリダニ類にもこんな模様がある。

おしり
肛吸盤(anal sucker)
3対の吸盤が肛門下部にある。
絶対に離れないよ! という意思が感じられる。

acarinarium に潜む小型個体の方。
クマバチコナダニ Sennertia alfkeni
小型個体

一時期コガタノクマバチコナダニ Sennertia japonica とされてシノニムで消えたやつ。
1目盛りが0.01mmだから体長は約0.22mm。
爪はより小型。ダニ室に隠れているのでしがみつく必要が大型個体より少ないせいか。

大型個体の体長は
だいたい0.32mm。
体長と爪以外、体形はほぼ同じである。

ではまた

2018年3月3日土曜日

渋くて小さいミギワバエ Rhynchopsilopa sp.

2月最後の日曜日、湿った谷筋の藪をペシパシしながら
お散歩ネットを振り回していたら小さなハエが入った。
肉眼では小さなアシナガバエにみえる。
が、色あいは緑でなく赤紫っぽい光沢。
「???」を頭の上にのせながら吸虫管で回収。
勢い付き過ぎて衝突死してしまった。。。

後日検鏡したらミギワバエの1種でした。
側面
ミギワバエの1種 Rhynchopsilopa sp.
ちょっと状態悪し
全体に光沢があるが頭部胸部は藍色光沢、
腹部は赤紫の金属光沢がある。
ナカナカにキレイ。

前翅拡大
付け根の小翅片が取れてしまったので書き込んでいる。
C脈の終点は弱くなるので判りにくいが、M脈まで伸びている感じ(青矢印)。

ミギワバエ科の特徴は、、、
前縁脈(C)に2か所の切れ込みがある(図の楔矢印のとこ)
亜前縁脈(Sc)が不完全
第2基室と中室は癒合する
CuA室や臀脈は不完全
触角刺毛は羽毛状(ただし刺毛上部)
後脚第1付節は短くならない
などなど。

Rhynchopsilopa属としたのは以下の本より。
環境アセスメント動物調査手法19にある
「日本産ミギワバエ科の属の絵解き検索」から抜粋
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前脚は捕獲脚に変形せず通常
顔面中央に毛を装わない
横線前の背中刺毛(dc)を欠く
触角刺毛は上面のみ羽毛状
前縁脈(C)は径脈(R4+5)を越え中脈(M)に達する
頬の後縁は角張ることはなく丸い
背側板の背側刺毛(npl; notopleural seta)は2本
後方のnplはより背方に生じることはなく同じ高さに生じる
単眼刺毛は前単眼の後方にある
触角第3節は極めて長い
*****************************************************
上記を踏まえた画像いろいろ
顔面中央は無毛、単眼刺毛は前単眼(白っぽい点粒)より後方に生えるの図。
藍色の金属光沢が少しわかる。

矢印は頬の後縁(丸い)、触角第3節は長く、触角刺毛は上面のみ羽毛状の図

ミギワバエの1種 Rhynchopsilopa sp.
背側板の背側刺毛(npl)の位置関係を示す

Rhynchopsilopa属はネット上では「一寸のハエにも五分の大和魂・改」という掲示板で以下のスレッドで出てきたくらいと思う。↓
「ミギワバエ質問 2009/05/24」

「日本昆虫目録第8巻 双翅目」を見てみたら属そのものが書いてなかった。
どうやら属の存在は知られているが種までの検討はなされていない、ということらしい。
マイナー分類群あるあるである。

ではまた