一般にオナガウジと呼ばれる幼虫の話。
4月にお散歩コースの汚れた水桶にハナアブが集まっていた。
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アシブトハナアブ Helophilus eristaloideus |
水面を見ると、、
著しい数の卵が浮いていた。
壁面にも卵塊が見られた。
産卵の現場は見ていないが、アシブトハナアブの卵だろう。
他にもオオハアナブが少しいたので、念のために卵を少し持ち帰って飼育することにした。
卵の拡大。
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アシブトハナアブの卵 Egg of Helophilus eristaloideus |
アブラムシを食べるヒラタアブの卵にも似た模様があったような。
同じハナアブ科なので似ているだろう。
やたらと水をはじくのはこの表面構造のおかげだろうか。
撥水構造の製品のヒントになるかも?
翌日には孵化が始まった。
生まれたては尻尾が短いがしばらくすると体長分くらいの長さになる。
1齢幼虫をカバーガラスで横向きに押さえて撮影。
ハナアブ科は肉食性のヒラタアブ亜科・アリスアブ亜科と腐食性のナミハナアブ亜科に大きく大別され、ナミハナアブ亜科のうち水生の種類が上のようなオナガウジの形態になる。
呼吸管は繰り出し式の釣り竿みたいに伸び縮みして水面に突き出して空気呼吸をする。
肛門鰓は普段は引き込まれた状態だが、見ていると外に出してヒラヒラあおいで水中の溶存酸素を利用することができる。
肛門鰓をヒラヒラしてる動画↓
さて、飼育はタッパーに浅く水を入れ、小動物飼育用の粉末飼料を入れ、2日おきに水を替えるだけですくすく育った。
3週後には壁面を登って脱走を企てる幼虫が出だした。
ので、
一回り大きな砂入りタッパーを用意して入れると脱走した幼虫は隙間に潜って蛹化した。
蛹(囲蛹)
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アシブトハナアブ Helophilus eristaloideus
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ハナアブの蛹化は幼虫の殻から脱皮せずに内部で蛹になる。
コレを「囲蛹」といい、双翅目の中で短角亜目の仲間の特徴である。
画像の矢印は幼虫時代の前方気門。
その上に突き出ているのは蛹の前方気門である「呼吸角」。
卵を採ってちょうど一ヶ月後に羽化。
無事アシブトハナアブと確認。
羽化後の囲蛹殻
幼虫時代の前方気門から後方が丸く外れて羽化してくる。
ショウジョウバエもこんな感じで羽化してくる。
ノミバエなんかは左右に分かれて観音開きに開いて羽化してくる。
羽化後の呼吸角の辺り
矢印のペラペラしたのが本来の蛹の殻。
呼吸角は蛹から生えて幼虫の殻を突き破って出ているのが判る。
その他の画像いろいろ
古い幼虫図鑑のオオハアナブの幼虫の図の気管は直線的だった。
当てになるかどうかは不明。
飼育容器に浮かんでいたたぶん2齢幼虫の脱皮殻
咽頭骨格はあるがその先の口鉤が痕跡的。
ハナアブ科の幼虫の特徴だそうな。
2齢幼虫の呼吸管(脱皮殻)
先端に撥水性のある3対の毛が生えている。
オオハナアブも3対あるが、その毛は羽毛状に発達しているようだ。
おまけ
ガラス瓶に小分けにした幼虫。
しばらくの間、机のインテリアになっていた。
ではまた