2017年10月28日土曜日

アシブトチズモンアオシャクの♀交尾器

休みのたんびたんびに台風来るとは難儀である。
ネタ不足もはなはだしい。
今週も簡単にちょっと前の蛾。
10月最初の日曜日に撮ったスマホ画像。
アシブトチズモンアオシャク Agathia visenda 
前翅中央線はおおむね後縁に対して直角である。
近縁のチズモンアオシャクはどっちかと言うと前縁に対して直角になる。

本種は旧ブログでも紹介しているが♂ーーー>これまた

今回は♀である。
旧ブログ同様、交尾器を出してみた。
背面から
アシブトチズモンアオシャク Agathia visenda ♀交尾器
矢印はシグヌム(signum)で、交尾嚢(corpus bursae)内部に見られる刺状あるいは板状の硬化部。複数ある場合は複数形のシグナ(signa)と呼ぶ。
交尾嚢は精子を貯蔵する場所である。

腹面から
アシブトチズモンアオシャク Agathia visenda ♀交尾器
ほとんどの蛾の交尾口は第7腹節と第8腹節の節間膜に開口する。

ではまた

2017年10月21日土曜日

陸棲ヌカカの1種。

休みが雨続きでさっぱりである。
なのでこの間のエノキ倒木。

樹皮をめくると、

白い菌糸部分にわちゃわちゃっと何かいる。

拡大
ヌカカ科の1種 Ceratopogonidae 
大小の幼虫と蛹がたくさん。

ヌカカの幼虫は大部分が水棲だが、一部は陸棲である。
以前、コガシラコバネナガカメムシの入った竹筒の中にも
ヌカカの幼虫がいるのを見ている。

それはさておき、樹皮の一部を持ち帰る。
幼虫
ヌカカ科の1種 Ceratopogonidae 
腹部背面に刺毛基板をつなぐ黒線が並ぶ。
こんなの見たことないなぁ。。

幼虫頭部付近
ヌカカ科の1種 Ceratopogonidae 
ユスリカ科の幼虫と同じく前胸に偽脚があるが、
体に目立つ刺毛が生えるのがユスリカとの違い。
などと日本産土壌動物に書いてあった。


ヌカカ科の1種 Ceratopogonidae 
蛹の頭胸部拡大
ヌカカ科の1種 Ceratopogonidae 
水棲昆虫の名残なのか前胸気門が突出して呼吸角になっている。

羽化した成虫
ヌカカ科の1種 Ceratopogonidae 
ヌカカ科の1種 Ceratopogonidae 
胸部に金色の毛が生えてる。
♂の触角はふさふさ。

ヌカカの♀は近所では他の昆虫に止まって吸血しているのをよく見かける。
種類によって哺乳類や鳥、爬虫類など吸血する好みがあるようだ。

ヌカカは種類が多い割に図鑑等に載っている種が少なく同定できる気がしない。
詳しく調べられているのはヒトや家畜から吸血する一部の種類だけであるようだ。

日本産水生昆虫を見ても科の検索までで、種どころか属の検索も無い状態である。
チラッとググると60余属4000種以上の既知種がいるらしい。

うん、素人が手を出してはいけない分野であるな。

ではまた。

2017年10月14日土曜日

お散歩コースのチビハサミムシとおまけのミジンハサミムシ

日曜日のお散歩中、エノキの倒木が朽ちてキノコが生えだした。
数年前までヤノトラカミキリとか沸いていたもの。

少し樹皮をめくってみると、遠目にシロアリみたいな虫発見。
チビハサミムシ Paralabellula curvicauda

体長は6mm弱と小さいが翅があるので成虫。テネラルのハサミムシがいた。
テネラルとは虫屋業界では羽化直後の柔らかい状態、あるいは本来の色にまだ着色していない状態の成虫のことを言う。
これは持ち帰ってもシワクチャの標本になるので少し探すと色付きのがいたので確保。

背面
チビハサミムシ Paralabellula curvicauda
雌雄で腹端のハサミの形が異なる。

腹面
チビハサミムシ Paralabellula curvicauda

手持ちの図鑑、日本産直翅類標準図鑑(学研、2016) から引用
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ハサミムシの仲間は、革翅目(ハサミムシ目) DERMAPTERA と呼ばれる。
前翅が翅脈のない革質の翅鞘であるからくる。
前翅の後方に見える後翅の可視部も革質で、
「鱗板(squama)」または「翅鱗(wing-scale)」と呼ばれる。

チビハサミムシは、カザリハサミムシ科 Spongiphoridae に属する。
本科の和名は従来はクロハサミムシ科、ヤサガタハサミムシ科などが
提唱されていたが日本産直翅類標準図鑑(学研、2016)から上記和名に改称された。
また学名も従来 Labiidae とされていたが現在は上記 Spongiphoridaeである。

チビハサミムシ Paralabellula curvicauda (Motchulsky,1863)
♂の亜末端腹板は横長で後縁は丸く中央で弱く湾曲する。
チビハサミムシ♂腹端部の拡大

近縁のミジンハサミムシ Labia minor (Linnaeus,1758) の♂は、
亜末端腹板の後方中央部が縦長のトゲ状に突出することで区別できる。

以前採集したミジンハサミムシの♂、2013年7月、三田市。
ミジンハサミムシ Labia minor 

過去の記録でチビハサミムシとされているのはミジンハサミムシの誤同定である場合があるので注意が必要、みたいなことが書いてあった。
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おまけ
ハサミムシの仲間は前翅が小さく後翅を細かく折りたたんでいる。
拡げてみるとふたつ折りの扇子みたいな感じ。
少しずつ拡げた画像を並べておく。
微小種の薄い翅なので破れちゃった。。。
旧ブログでハネカクシの後翅を拡げてみたが、鞘翅目と革翅目では畳み方は違いますね。
→「究極の折りたたみ傘・・・サビハネカクシ

ではまた

2017年10月6日金曜日

サムライなんていなかった。ミカドトックリバチ

イノコヅチって花らしくないのに結構ハチが来る。
ミカドトックリバチ Eumenes micado サムライ型
蜜があるんでしょうね。
ひとしきり吸蜜したあと、毛づくろい。。。
ミカドトックリバチ Eumenes micado サムライ型
種名を調べるにあたって、、、、、
「日本産有剣ハチ類図鑑(東海大学出版部、2016)」を読むと、

サムライトックリバチと言うのはミカドトックリバチの夏型を指すそうだ。
従来の図鑑ではムモントックリバチがサムライトックリバチと誤って呼ばれることがあり注意が必要である。と書いてあった。
要するにミカドトックリバチは年2化で春型をそのままミカドトックリバチ、
2化目の夏型をミカドトックリバチ(サムライ型) と呼ぶのが正しいようだ。

というわけで、古い図鑑にサムライトックリバチとあったのは
今はいないということである。

図鑑にあった他種との区別点抜粋。♀限定
頭盾は八の字型かそれらが連なった三日月形の大きな黄斑を持つ
腹部第1節は細長く、長さは最大幅の2倍以上
頭盾の前縁は多少とも湾入する
腹部第1節は密に点刻される
中胸背板、小盾板、後胸背板は密に点刻される
etc.

いろいろ画像
顔面
 側面
背面

ではまた