2021年6月26日土曜日

ウンナンヨツボシホソバの♂交尾器

日曜日、ネムノキは未だ蕾じゃのう、と見上げていると、

ヨツボシホソバらしきもの。

最近、日本のヨツボシホソバはヨツボシホソバとウンナンヨツボシホソバの2種に分かれた上に、外観ではほとんど区別できないという鬼畜仕様の普通種になってしまったので、ちょっと持ち帰ってみた。

以前見たときはヨツボシホソバに落ち着いたのだが、交尾器を見るとウンナンヨツボシホソバになってしまった。

同所的に分布するとは困ったことである。

いちいち交尾器を見ないと確実なことが言えないではないか。

で、その交尾器。

ウンナンヨツボシホソバ Lithosia yuennanensis
♂genitalia
ファルス(挿入器)は除いてある。

反転した挿入器

ウンナンヨツボシホソバ Lithosia yuennanensis
♂genitalia

*************記号説明**************

slsacculus サックルス。バルバ腹縁部基半の硬化部。

ununcus ウンクス。第10腹節背板起源の遊離突起。

hrpharpe ハルペ。バルバ内面の腹方にある硬化部。日本原色蛾類図鑑(保育社)ではサックルスの基方から伸びる硬化部にはclasperが当ててある。どちらかよく判らん。

corcornutus コルヌツス。ベシカ(エデアグス内部の膜質部)に生じる刺状の突起。複数形はcornuti

↑2021.6/28 括弧閉じの位置を修正しました。

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蛾類通信No.161261に2種の区別点があるので参考にしてみる。

バルバ(valva 把握器)のサックルス先端のトゲはヨツボシホソバでは上方に向くが、ウンナンヨツボシホソバでは後方に向く。

ウンクスはヨツボシホソバでは太く、ウンナンヨツボシホソバではより細い。比べたら判る。

ハルペの形も違うようだ。

コルヌツスはヨツボシホソバでは基部の幅の3倍以上の長さがあるが、ウンナンヨツボシホソバでは小さく、基部の幅の2倍程度。


個体変異もあるかもしれないので全面的には信用しないでくださいな。


旧ブログにヨツボシホソバの♂交尾器と♀交尾器の記事を書いているので参考にどうぞ。↓をクリック。

insectmoth.hatenablog.com

insectmoth.hatenablog.com

ではまた

2021年6月19日土曜日

複眼回・・・キスジアブ

 日曜日に私的初見のこんなアブがいた。

キスジアブ Tabanus fulvimedioides

アブ類ではやや小型。

複眼が緑色で3本の横紋があり、単眼瘤はないのが特徴。

背面

キスジアブ Tabanus fulvimedioides ♀
腹部第2節の両側に橙褐色斑がある。


腹面

キスジアブ Tabanus fulvimedioides ♀
前翅
キスジアブ Tabanus fulvimedioides ♀
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1b:第1基室、2b:第2基室、:中室、r5:第5径室

:径脈、:中脈

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以下、手持ちの図鑑情報。

R4脈に小枝がない。(青矢印のところ)

第5径室は広く開き狭まらない。(赤線部分)

腹部第2節以降の各背板に三角形の灰黄色中央斑と細い後縁斑があり、第1~3節腹背板に橙褐色の側斑がある。

近縁種のヒメキスジアブT. fulvilineus は腹部第2節の側斑がなく、腹背の前部ほど淡黄褐色で後方は黒褐色になることで区別されるそうだ。

ヒメキスジアブの分布は本州中部以北と九州の阿蘇地域、キスジアブは北海道、本州、四国、九州に普通。

砂丘地や草地、畑地で多発することがあるとか。

うちのお散歩コースは住宅地から即、山地になるので今まで見たことがなかった。砂防堰堤の砂地で細々と生息しているみたい。

両種とも人を刺咬する。


複眼に3本線があるものにジャーシーアブやキボシアブ(Hybomitra属)がいるが、単眼瘤を持つことでキスジアブ類と区別できる。

ヒゲナガサシアブ属(Isshikia)は複眼に3本線があり、単眼瘤も持たないが、触角第3節の背突起が非常に長くなることでキスジアブ類と区別できる。


などと、「原色ペストコントロール図説第2集」に書いてあった。

おまけ

キスジアブ Tabanus fulvimedioides ♀

複眼はいいぞ。

触角第3節の基部は尖るのみである。


ではまた

2021年6月12日土曜日

反転した交尾器の乾燥標本・・・コガネムシ

 6月最初の日曜日。

今期初見の無印コガネムシ。

コガネムシ Mimela splendens

今風に言うと、
シン・コガネムシ?

コガネムシ Mimela splendens 


さて、交尾器の形状で分類するのはよくある方法である。

一昔前は交尾器の外形だけで検討されていたが、最近では内部の膜質部(交尾の際に反転して精子を注入する部分)の構造も検討されるようになってきた。

コガネムシはそこまでする必要もなく判るのだが、

コガネムシは適度に大きいので試しに確認してみた。

交尾器を取り出して、10%苛性カリ水溶液で10分煮て筋肉を溶かす。

その後、先を曲げた柄付き針でちまちまと膜質部を引っ張り出したのがコチラ。

コガネムシ Mimela splendens 
♂ genitalia

先の膨らんだ複雑怪奇な内袋が出てきた。


大きいし、割と丈夫そうな膜質部なので膨らませたまま乾燥してみた。

こんな感じ↓

金魚のブクブク(エアーポンプ)にピペットの先を固定して空気を吹き込みつつ膨らんだ状態のまま乾燥。


いっちょあがり

左側面

コガネムシ Mimela splendens 
♂ genitalia

右側面

コガネムシ Mimela splendens 
♂ genitalia


上から

コガネムシ Mimela splendens 
♂ genitalia

後方から

コガネムシ Mimela splendens 
♂ genitalia

先が二股になってるし、交尾中はめったなことでは抜けないだろう。

たぶん種類ごとに形が違うんだと思う。


ではまた

2021年6月5日土曜日

マエグロマイマイの蛹

 ちょっと前のツイート

この個体はなんとなく持ち帰って飼育していた。

落ちていたから何かに寄生されているかも?

と思っていたら、今朝蛹化していた。

マエグロマイマイLymantria xylina nobunaga
Female Pupa
おざなりなハンモック状の繭である。

マイマイガの蛹と似ているが、二次刺毛の色がピンク色。

前胸と中胸の毛は黒色。

マイマイガの蛹の毛は褐色だった。

マイマイガよりほんの少しおしゃれである。

マエグロマイマイLymantria xylina nobunaga
Female Pupa
中胸の肩の部分に艶消しの黒い模様がある。
この模様はマイマイガにもカシワマイマイにもなかった。


こういうマットブラックな模様のある蛹は以前みたことがある。

エグリイチモジエダシャクの蛹がそうだった。

旧ブログで記事にしているので 興味ある方は以下をクリック。

insectmoth.hatenablog.com

 

マエグロマイマイの幼虫はこちらの旧ブログの記事にある。

insectmoth.hatenablog.com


おまけ
正面から見たマエグロマイマイの蛹
ちょび髭生やしたアザラシの赤ちゃんみたいな?

ではまた