2019年12月28日土曜日

オウトウハマダラミバエ似の何か

今年最後の投稿ですかね。

日曜日に見かけたミバエの仲間♀を拉致。
背面

腹面

側面

前翅


ミバエって眼が綺麗な種類が多いよね。

図鑑でぱらぱら絵合わせ。
オウトウハマダラミバエ Euphranta japonica
に似ているものの翅の模様が少し違う。
オウトウハマダラミバエは名前の通りオウトウなどサクランボの害虫で北海道・東北に分布しており、神戸で採れる虫ではなさそうだ。
図鑑にはオウトウは顔面に斑紋がなく腹部も一様な色とあるので、画像のミバエは明らかに別種であると思う。
図鑑を見ると、本州以南によく似た別種が未記載種を含め数種分布しているので同定に注意を要する、などとあったので無理に同定すると痛い目に会いそうである。

ちょっとググっただけで以下の種がいるようだ。
Euphranta jucunda
Euphranta transmontana
Euphranta camelliae ツバキハマダラミバエ
Euphranta nigrescens ムラクモハマダラミバエ
Euphranta mikado ミカドハマダラミバエ
Euphranta oshimensis オオシマハマダラミバエ

んで採集したものについては、
「赤坂御用地と常盤松御用邸のミバエ科昆虫(国立科博専報39,2005)」に載っている Euphranta sp. の翅と模様が一致した。
その他には「埼玉県のミバエ科昆虫相の種多様性評価(埼玉県立自然の博物館研究報告13,2019)」にも同じ翅の画像があって Euphranta sp. とあって種が決定されていない。

なので、現在のところ未記載種のようだ。

Euphranta属は
ミバエ科 Tephritidae 
ハマダラミバエ亜科 Tephritinae 
ケブカミバエ族 Tephritini
に含まれる。

さてさて今年も何とか週一更新を死守。

では皆様よいお年を。

2019年12月21日土曜日

ホシクロトガリヒメバチ似の何か

毎週摘まんでくるヒメバチがすべて別種な件。

日曜日、前の週に見たヒメバチと似た配色のヒメバチを見かけた。
前回の記事の種よりちょっとスレンダー。
前伸腹節の隆起線がはっきりしている。
後胸気門が細長い。



後体節第1節
気門は中央より後方。

産卵管
下側に弱い鋸歯が見える。

後脚跗節



絵合わせだと Cryptini 族のホシクロトガリヒメバチNippocryptus vittatorius
に近いけれど、検索すると Aptesini 族っぽい感じ。
トガリヒメバチ亜科 Cryptinae は確かだと思う。

今回の個体の特徴を文字にすると、、
***********************************
体長14mm、産卵管は腹端から5mm。
体は黒色、複眼内縁上方は白色、前・中脚脛節は褐色を帯びる、後脚跗節の3・4節は白色、前脚脛節は褐色、触角鞭節4~6付近背面は白色、腹端背面は白色、前翅の縁紋付近から下方は暗色に曇り、下縁で暗色部は基方に伸びる

複眼内縁は平行に近い
頭盾前縁は剛毛の飾りを持たない

中胸側板のEpicnemial carinaは前縁に接し、その背端は前胸背板後縁の中央より上方の水準に位置する。
中胸腹板の後方横隆起線はない(ような気がする)
後胸背板後縁やや側方に三角形の突起を有する
前伸腹節は縦隆起線を有し、小室を有する

前翅に2m-cu脈があり直線状、その脈に薄い部分(透明域)が1か所ある
前翅鏡胞は五角形で柄はない

中・後脚脛節棘は2本

後体節第1節は腹端側に幅広くなり、気門は中央より後方にある
腹部は、高さ<幅(アメバチ体型ではない)
************************************

ではまた

2019年12月15日日曜日

シロテントガリヒメバチ

日曜日の晴れ間、地表近くを探索していたハチがいた。
よく見かけるけれど今までスルーしていたので反省してちょっと調べてみた。
虫の少ない時期なのでちょうどヨイヨイ。

先週の記事で参考にしたサイトで絵合わせして
シロテントガリヒメバチ Agrothereutes lanceolatus にした。

採集したのでいろんな方向から撮影。
背面
腹面




頭盾のしきりがあるようなないような。

前伸腹節のあたり

胸部側面
右上の青線は側板溝のトレース

後体節第1節
sp.は中央より後方にある気門
矢印は腹板の後端位置


爪は単純な形っぽい

特徴を文字にすると
***********************************
体長9mm、産卵管は腹端から3mm。
体は黒色、中・後脚脛節の基部は白色、前脚脛節は褐色、触角中央付近背面は白色、前翅の縁紋付近から外は曇る。

複眼内縁は平行に近い
頭盾前縁は剛毛の飾りを持たない

中胸側板のEpicnemial carinaは前縁に接近し、その背端は前胸背板後縁の中央より上方の水準に位置する。
中胸腹板の後方横隆起線はない(ような気がする)
後胸背板後縁に突起を欠く

前翅に2m-cu脈があり直線状、その脈に薄い部分(透明域)が1か所ある。
前翅鏡胞は五角形で柄はない

後脚脛節棘は2本

後体節第1節は腹端側に幅広くなり、気門は中央より後方にある
腹部は、高さ<幅(アメバチ体型ではない)
************************************

多分あってると思う。

ではまた

2019年12月7日土曜日

エゾホソオナガヒメバチ似のなにか

日曜日の午前中は晴れており、虫がちょっとだけ飛んでいたので確保。

大きめのヒメバチなので判るかな?
と思って調べてみたけど難しい。
週末が来たので断念して貼り逃げ。

例によって以下の2サイトを参照する。
「日本産ヒメバチ目録 Check list of Japanese Ichneumonidae」 と
「Information station of Parasitoid wasps」

採ったヒメバチは尻尾の長いこんなお嬢さん。

腹面

矢印は2m-cu脈の透明域

背面拡大
①が前伸腹節、②が後体節第1節。

側面拡大
①が前伸腹節、②が後胸側板、③が中胸盾板、④が前胸背板、⑤が前胸側板、⑥が側板溝の曲がっている位置、⑦が後体節第1節の気門、⑧が後体節第1腹節の終点。


前脚の爪

産卵管の先端。
ギザギザである。物理的に刺さると痛そう。

以下に特徴を列記。
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体長22mm、産卵管は腹端から28mm。
体は黒色で斑紋はほとんどない

頭盾と顔面は明瞭に分割される
頭盾は平らで前方は薄くなり前縁は凹む
大顎の歯は2個
頬は単純

中胸盾板に横皺はない
側板溝は中央付近で曲がり、一直線ではない

前翅に2m-cu脈があり、その脈に薄い部分(透明域)が2か所ある。
前翅鏡胞はほぼ三角形で五角形ではない

跗節の爪は基部に幅の広い葉片がある
中脚脛節棘は2本

後脚基節と後体節挿入孔は側方から見て離れない

後体節第1節の気門は中央より前方にある
後体節第1腹板は短く、気門より前方で終わる
産卵管には鋸歯がある
亜生殖板は小さく短い
**********************************

上記の特徴を持つのはヒラタヒメバチ亜科 PIMPLINAE
クモヒメバチ属群以外の Ephialtini族 に落ち着いた。
で、絵合わせしてみて近いのが

エゾホソオナガヒメバチ Ephialtes hokkaidonis 

だったけど、
データベースの画像は中脚基節が黒いのに、採ったのは橙色。
肩板が黄色いのはいいが、その前方の前胸背板にも黄色部がある、
あと産卵管もデータベースほど長くない。

と違いがみられるので同一種ではない感じ。
同属別種か、
検索で迷子になって全然別の種類かも。。。
属の検索をしていないので何とも言えませぬ。。


ではまた

2019年11月30日土曜日

オウギグモの卵嚢

10数年来のお散歩コースの疑問がツイッターで解消したのでこちらにも記録。

先日何気なくしたツイート。

このツイートから続く、三千里@ilovespider2525 氏とのやり取りで、あっさりと解決してしまった。
感謝感激であります。

で、オウギグモ Hyptiotes affinis と判明したので、画像を放出。

最初に認識したのは2006年。

この年は複数見たので、3月に複数削り取って持ち帰った。
見たことない小蛾でも羽化しないかな?とか思ったのであるが、、
で、我慢できずに4月に1個開いたら、、、
ハチの蛹が出てきて、ヒメバチの繭だったか~。と納得していたら
5月になって別のものから仔グモが出てきてアレッとなる。↓
要は、ハチはクモの卵嚢に寄生していたらしい。
このときのハチの標本は残っていないので、干乾びさせてしまった模様。
仔グモももちろん飼育できずに死んでしまった。
クモの卵嚢だと判ったのでとりあえず満足。

それから数年は見かける卵嚢の数が少なかったので採集自粛。
節操なくイロイロ採集しているけど、一応私は蛾屋なので。。。

で、2008年の暮れに割りと数を見かけたので、
2009年の早春になってから懲りずに採集。
暮れに採集しちゃうと乾燥でダメにしそうだと思ったからである。

同じ場所を飽きもせずに散歩している利点ですな。

さて、記憶では5個ほど持ち帰ったはず。
それから、1♂2♀のヒメバチが羽化して、
残りから仔グモが孵った。
ツイッターに貼った画像を再掲。オウギグモ初齢。
この画像で種類が判明。仔グモで判るとか、クモ屋さんすごい。

ところで、
1個の卵嚢に10数個しか卵がないが、大卵少産型なんだろうか。
それとも卵嚢をたくさん作るのだろうか?
こんなにヒメバチに寄生されるのなら後者のような気もするが、、、
親グモのサイズからすると、十分大型の卵みたいだから、
孵化さえすれば生き残る確率は高そうな気もする。

手持ちの図鑑を読み直す。
****************************
ウズグモ科 Uloboridae に属する。
オウギグモ属の特徴
前列眼はとても小さく後列眼がとても大きい、
後中眼の間は広く離れ、後側眼は背甲の側方にある、
とあるが、日本産の種(オウギグモ)では後側眼は退化して痕跡となり6眼である。
とある。
****************************
日本産クモ類(2009)より引用。

答えを聞いてから図鑑を見直すと確かに変わった眼の並び。。。
私にはムリムリ。

で、この時も飼育に失敗してしまった。
巣を張るクモだったから、管ビンに小バエと一緒にしていただけでは、うまく食い付けなかったのかも?と答えを知ってから思うなど。。。

時々見かけた卵嚢の写真を貼っておしまい。
2008.XI.2

2009.II.8
お散歩コースでは、このヤブツバキのような滑らかな樹皮で見ることが多い。

2009.II.21
風通しのよい尾根筋で見ることはなく、コケが生えるような湿り気のある木の幹で見ることが多い気がする。

2010.XII.4
ほとんどは木の幹で見るが、枝にも付いていることがある。

こんな感じで、胸から膝くらいの高さの幹にペトッと貼りついている。


ところで、
オウギグモの巣とかは旧ブログで紹介している。↓
insectmoth.hatenablog.com

数少ない経験則では、尾根筋には見たことなくて中腹から谷筋で巣を見る。
卵嚢も同じ場所にある。

点と点が繋がった今週でした。

おまけ

羽化したヒメバチも貼っておきます。
同定放棄。
オウギグモの卵嚢から羽化したヒメバチの1種


前伸腹節は大小の六角形が二つ並んだ感じ。
前翅長4㎜程の小型のヒメバチでした。

ではまた

2019年11月23日土曜日

不明卵塊の遮蔽物はお弁当かも?

砂防堰堤に誰かが植えたモクレンが、
昨年の台風で土砂が30cm積もって結局枯れちゃった。

その幹をよく見るとカサブタが付いていた。

持ち帰って裏側を見ると何かの卵塊であることが判明。
ただ卵は干乾びており、孵化しなかった卵塊のようだ。

遮蔽物(カサブタ部分)を水で溶いて拡大。
鱗粉が見当たらないので鱗翅目じゃなさそう。
遮蔽物は植物片かな?
地衣かも?
それを糸で固定しているようだ。

卵は俵型だった。
見たことのあるクモの卵は球形なので、クモでもなさそう。

思いつくのはチャタテムシくらい?

同じ木にあった不思議物。
孵化後の卵塊ぽい?

でも遮蔽物がない。

想像をたくましくして考えて、
もしこれらが同じものだとすると、
孵化した幼虫が遮蔽物を食べたんだろうか?
とか
そうすると、母虫が卵塊を隠すついでに
わざわざ食べ物を幼虫に用意していることになる。
とか考えてみる。

真相は判りませんけどね。

だれか調べてみない?

ではまた

2019年11月16日土曜日

ウスバフタホシコケガとスカシコケガは蛹で区別できそう。

先日のお散歩で見かけた蛾。
2019.XI.10
ウスバフタホシコケガ Schistophleps bipuncta
背中も縁毛もハゲてない新鮮な状態の蛾。
ということで、横っちょにあるスケスケ繭は本種のものだろう。
すぐ上にあるクシャッとしたのはスジチャタテの羽化殻。

羽化後の蛹と繭の拡大。
繭には黒い毛が垣根状に並べてある。

同じ形状の繭を作るのは以前見ている。
旧ブログに紹介した、↓

「垣根付きの繭」の、スカシコケガ Nudaria ranruna

これと比べると繭の形状はほとんど同じである。
本種も同様に終齢幼虫が自らの毛を使って繭を作るのだろう。

コケガの仲間は他にもこんな習性を持つ種がいて、
アカスジシロコケガはカゴ状の繭を作る。昨年の記事↓
「アカスジシロコケガの繭作り」

さて、スカシコケガとウスバフタホシコケガの蛹を比べると、蛹に残る黒斑の模様は2種で異なっているようだ。

スカシコケガの黒斑は腹部背板の4・5節辺りに見られるだけだが、ウスバフタホシコケガでは胸部から腹端まで黒斑が広がっているようだ。

後は幼虫が来年以降の宿題ですな。

(ツイッターでしばらく前に見かけた繭はスカシコケガで決定してよかったみたい。)


ではまた

2019年11月9日土曜日

跳ねるウジ・・・ナカジロコガネショウジョウバエ

跳ねるウジといえば、ミバエとかチーズバエが知られている。
以前見る機会のあったカボチャミバエのウジが跳ねる動画


同じ習性がショウジョウバエ科でも見られたのでご紹介。

先週ヌカカを紹介したキノコにいたウジ。
ヌカカは糸角亜目だけど、こちらは頭殻が退化しているので短角亜目のハエの幼虫。

咽頭骨格
透過処理して押さえつけたら咽頭骨格が前後に離れてしまった。
幼虫は前屈して、画像左端の口鉤を腹端に引っ掛けてピンっと跳ねる。
「as」は前方気門。

前方気門の拡大

後方気門

それが今週羽化した。
2月に紹介した「ナカジロコガネショウジョウバエ」だった。
羽化間もないので翅の模様がちと薄い。
♂交尾器
硬化が進んでないのでフニャフニャにつぶれたけど、以前の記事と一致してる。

蛹(囲蛹)
左が頭部側。

拡大
前方気門が幼虫時より目立つ。

羽化後の囲蛹殻
ノミバエの蛹は観音開きだけど、ショウジョウバエは上下に割れる感じ。
幼虫時の咽頭骨格が残っているのが判る。

さて、

ナカジロコガネショウジョウバエの幼虫が跳ねる動画。

跳ねる方法はカボチャミバエと一緒。
濡れているので跳ねる前段階で何回かコケてますが、最後に跳ねます。
ほぼワープ。
飼育容器の壁は4cmあるのだが、余裕で飛び越えていた。
ウジは6mmほどだから、身長の7倍以上を飛べることになる。

ヒマがあったらハイスピード動画撮りたかったけど、時間が取れず。。。

なぜこんな跳ねる行動を獲得したのか?

先週の記事の1枚目のキノコ写真に写り込んでいるスイカの種みたいなのはオオヒラタエンマムシ。
オオヒラタエンマムシはハエのウジが好物らしい。
他にもハネカクシにウジ好きな種類がいる。

ナカジロコガネショウジョウバエは他のショウジョウバエより一回り大きく捕食者にとっては食いでがあるように見える。
だから、成熟したらとっととキノコから離れて蛹化するのじゃなかろうか?

でもこんなのが近くに待機していたら、のろのろ這って移動するより跳ねる方が生き残りやすいと考えてみる。
ウジの口器は他の昆虫のように左右に動かずに上下に動くようになっている。
この構造もおしりに引っ掛けやすくて、跳ねる行動を獲得しやすかったんじゃないか?
なんて想像してみるのである。

となると短角亜目の他の科にも同様な行動をする種がいそうな気がするのだが、どうだろうか。


ではまた