2021年12月31日金曜日

良いお年を。・・・チビフタオヒメバチ属の♂

ちょっと前に紹介した

「チビフタオヒメバチ属の一種」の♀。

♂もそのうち見られるだろう、

と書いておいたら採れました。

2021年12月26日

チビフタオヒメバチ属の一種 Stictopisthus sp.

体長約3mmのコバチサイズ。
胸部の形状に違いがあるが、先に紹介した♀と同種のように思う。

側面拡大
腹端に産卵管っぽいものが見えるが斜めから見ると、、
把握器が長く体の後方に伸張していた。
これがフタオヒメバチ亜科Mesochorinae の特徴。

チビフタオヒメバチ属の一種 Stictopisthus sp.
♂にも触角の下に一直線の横隆起線がある。

今年も閲覧ありがとうございました。

来年もよろしくお願いします。

ではまた

2021年12月25日土曜日

季節外れのヤマトホソヤガ

こないだのお散歩で塀に引っかかっていた小枝。
2021年12月19日
ヤマトホソヤガ Lophoptera hayesi

季節柄、晩秋のトガリバの何かと思った。
見ようによってはヒメハマキとかの小蛾類にも見える。
初心者泣かせっぽい蛾である。

ヤガ科のホソヤガ亜科 Stictopterinaeに属する。
亜科名は棒状の翅、みたいな意味だろうか。

出現期は7~10月とされているのでイレギュラーな発生のよう。

日本に記録のあるホソヤガ亜科は9種。
でもヤマトホソヤガ以外は偶産種とされている。

幼虫の食樹はクヌギやコナラでごく普通の木だけれど、個体数は少なく見ることは少ない。

翅の模様は地味だが拡大すると横線などがぼんやり判る。
前翅長は約15mm。
図鑑を見ると模様には個体変異があって中胸背板が真っ白な個体がいるようだ。

♂だったので交尾器抜いてみた。
ヤマトホソヤガ Lophoptera hayesi
♂genitalia
テネラルだったのか硬化が弱い感じでビンクルム(vinculum:第9腹板)が外れてしまった。
矢印は途中まで反転したベシカ(vesica:挿入器内部の膜質部)にみられたコルヌツス(cornutus:刺状突起)

コルヌツスの拡大

第8腹節
ヤマトホソヤガ Lophoptera hayesi
♂coremata
腹板側に毛束を備えた反転可能な嚢状部(コレマタ;coremata)が見られる。
おそらく交尾の際になだめ物質を放散させるための器官。


ではまた

2021年12月18日土曜日

クロフチャタテの一種

今週も見た虫貼るだけ。

わたくし的に初見の虫。2021年12月12日撮影

クロフチャタテの一種 Aaroniella sp.
なぜか既視感がある。

おちゃたてむしさんのブログで見たことあるからだった。

2個体見たうちの1個体をお持ち帰り。

クロフチャタテの一種 Aaroniella sp.

前翅長は約2.5mm。
翅脈間に黒い斑がありますな。

クロフチャタテ科Philotarsidae は古い図鑑には載ってない。

「日本産チャタテムシ目の目録と検索表」

(上のリンク先はつくばリポジトリの該当ページ)

よりクロフチャタテ科の特徴を抜粋。

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跗節は3節

体翅に鱗片を装わない

縁紋は肥厚する

後小室は中脈と結合せず遊離する

後小室は細長くない

Cu1a脈とCu1b脈は翅縁近くで分離する

翅脈に毛がある

後翅の縁毛は径脈を超えて広範囲に生える

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翅脈

クロフチャタテの一種 Aaroniella sp.

C:前縁脈,R:径脈,M:中脈,Cu:肘脈,A:臀脈

Cu1脈がほとんど翅縁で分岐しているため、Cu1b脈は無いに等しい。

Cu2脈は白いので判りにくい。


おまけ

チャタテ類の鼻先?にある丸い膨らみは「後額片」と呼ぶそうな。


ではまた

2021年12月11日土曜日

チビフタオヒメバチ属の一種

直近のお散歩では何の成果も得られませんでした、、、
なので、ちょっと前にスイーピングで得られたハチ。
スイーピングとはやみくもに網を振り回して入った虫を採集する方法(やみくもではないな。調査では往復の回数とか決まっていたりする)。

コバチ類しか入ってないと思っていたら、、
チビフタオヒメバチ属の一種 Stictopisthus sp.

体長3.5mmとコバチサイズのヒメバチが混じっていた。

例によって「Information station of Parasitoid wasps」のサイトで検索してみた。


本属はフタオヒメバチ亜科 Mesochorinae に属し、その特徴は
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前翅に2m-cu脈を有する。
触角鞭節は13節以上
前翅鏡胞は大きく、ひし形
頭盾と顔面の境界は不明瞭
雌の亜生殖板は側方からみて大きくて三角形だが、腹端は超えない
後体節第1節の気門は中央付近にある
腹部は縦長でアメバチ体型寄り
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などなど。

で、チビフタオヒメバチ属 Stictopisthus の特徴は
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後翅のCu1(Discoidella)は存在しない
触角挿入孔の下に一直線の横隆起線をもつ
Epicnemial carinaの背方終点は中胸側板の縁に接近する
Nervulusの起点はBasal veinの起点から明瞭に先端よりにある
産卵管の鞘の長さは幅の3.3~7.0倍
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和名は、オスの把握器が後方に伸長するところからフタオヒメバチの名があるようだ。
・・・・・寄生蜂に手を出す前に見たことあるようなないような?
普通に見られる、とか書いてあるのでそのうち見られるだろう。

さておき、各部を拡大。

胸部背面
前伸腹節はヒメバチによくある亀甲縛り。

矢印が触角挿入孔下部の隆起線。
顔面と頭盾の境は不明瞭で判別できない。

矢印の通り、cu-aがRs+Mの起点より外寄りにある。

胸部側面
Epicnemial carinaは判りにくいが点線の感じ?

後体節側面
後体節第節は細長く、側面に柄側刻がある。矢印は気門。
亜生殖板は三角形で産卵管は単純な針状、産卵管鞘(黒いの)は幅の約5倍。
産卵管鞘の長さが幅の3倍以下なら Plectochorus 属になるらしい。

種名は例によって???である。。。


ではまた

2021年12月4日土曜日

トゲ付き太ももの一族・・・トゲマルズヒメバチ

採った虫貼るだけ。

この間、お散歩コースをふよんふよん飛んでいたハチ。

生態写真はなし。

2021年11月21日採集

トゲマルズヒメバチ Odontocolon rufum

全体写真は半分産卵管なのでよくわからない画像になってしまう。。

古いサイトには トゲマルズオナガヒメバチとなっているがこれは旧和名で、新しいサイトではトゲマルズヒメバチとされている。


背面拡大

トゲマルズヒメバチ Odontocolon rufum

側面拡大

トゲマルズヒメバチ Odontocolon rufum

トゲマルズヒメバチ Odontocolon rufum

前翅鏡胞は不完全(閉じない)。矢印の所。

これはマルズヒメバチ亜科Xoridinaeの特徴。


横顔

大顎は2歯。

後脚腿節


中脚径節

斜めの溝がある。


おまけ。産卵管は返し付き


以前、同属別種を記事にしてる↓。

「カマキリみたいな後ろ脚・・・フタトゲマルズヒメバチ」

(当時は和名がなかったけれど、最近和名がついたようで改題しました。)

こちらもトゲ付き太ももの一族だけれど、

上記の種と違うところは、中脚径節。

トゲマルズヒメバチには斜めに溝が走っている。

フタトゲマルズヒメバチの中脚径節は通常の形である。

あとトゲマルズヒメバチに近縁な種にニッコウトゲマルズヒメバチがいるが、分布が北寄りのようなので違うと思うことにした。


ではまた 

2021年11月27日土曜日

美白を極めた?ショウジョウバエ

今週は採った虫貼るだけ。

山でときどき見かけるショウジョウバエ。

2021年11月7日

たぶんモンコガネショウジョウバエ Leucophenga maculata

側面

胸部は側面に白色斑があるが全体に微毛が生えているのか光の当て方で全体に白っぽくなる。

ショウジョウバエなので眼は赤いが、顔面はやたらと白い。

触角端刺には上向分枝と下向分枝があるのがショウジョウバエ科の特徴。

ミギワバエ科にも分枝はあるが下向分枝をもたない。


♂の交尾器


♀の貯精嚢
ネットで検索して出てくる交尾器の図と微妙に違うような気がする。。


ではまた

2021年11月20日土曜日

キイロハバチ属の1種Monophadnus nigritarsis の羽化

今年の1月の記事、

「ボタンヅルを食べるマルハバチ亜科の幼虫」

1個体の前蛹が春になっても夏を過ぎても変化がなく、死んでる様子もなかったのが、11月に入ってふと見ると蛹化していた。

色づいているので蛹化したのは10月下旬だろうか。

幼虫を採集したのが昨年12月なので、ほぼ1年ぶりの変化である。

11月4日に羽化。

以前の記事で候補に挙げたうち、この色合いはキイロハバチかルイスカマルハバチの2種である。

羽化した個体の触角は頭幅の約1.3倍程度なので、触角が頭幅の2倍以上あるルイスアカマルハバチNesotomostethus clemati は除外。

残ったのは、キイロハバチ Monophadnus nigriceps であるが、配色が微妙に異なる。で、

「日本産ハバチ・キバチ類図鑑 (北海道大学出版会、2020)」を見ると、図はなかったが、和名のない Monophadnus nigritarsis という種がいて、検索表でこの種に落ち着いた。

この種については「A New Species of the Genus Monophadnus HARTIG (Hymenoptera, Tenthredinidae) from Japan」で詳しく報告されており、国立国会図書館デジタルコレクションで読むことが出来る。(上記タイトルにリンク貼ってるので、クリックすると該当ページに行けます。)

羽化した個体の背面

キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis
腹面

キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis
側面
キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis

キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis

キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis

胸部拡大

キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis

キイロハバチ Monophadnus nigriceps では中胸背板前縁(矢印位置)に逆三角形の黒斑があるが本種では黒斑がないのが外見上の区別点であろう。胸部後半の翅で隠れる黒斑にも違いがある。

後脚の爪

キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis

爪には内歯があり、キイロハバチより長いのが特徴。

図鑑の検索キーは

後脚の脛節と第1跗節の基半は橙黄色、爪は小さな内歯を持つ・・・・・・・・・・・

キイロハバチ M.nigriceps

後脚の脛節先端と跗節は黒色、爪は大きな内歯を持つ・・・・・・・・・・・

M.nigritarsis

となっていた。

おまけ

産卵管


おまけその2

比較用に以前採ったキイロハバチの画像を貼っておきます。

背面

2010年8月16日、神戸市
キイロハバチ♀ Monophadnus nigriceps
矢印位置に黒斑が出る。

胸部後半の黒斑は弱い。

側面

キイロハバチ♀ Monophadnus nigriceps

腹面の黒斑は比較すると強く出る。

ちなみにルイスアカマルハバチ Nesotomostethus clemati では腹面は全体橙黄色である。

キイロハバチ♀ Monophadnus nigriceps

区別点の後脚の爪

キイロハバチ♀ Monophadnus nigriceps

比べると内歯は小さい(切れ込みは浅い)。

ちなみにキイロハバチは春から秋まで見られるので多化性と考えられているが、M.nigritarsisは今回1例の飼育記録によると年1回秋に発生する種類だと思われる。


ではまた 

2021年11月13日土曜日

キスジツマキリヨトウの幼虫と羽化したクロホシアメバチ

いろいろ判明したので、ちょっと前の画像から。

2021年8月29日撮影

キスジツマキリヨトウ Callopistria japonibia

シダはおそらくイワヒメワラビ。

拡大

キスジツマキリヨトウ Callopistria japonibia
顔面に「八」の字模様があるけども撮り忘れ。

むか~し飼育したような記憶があったけど、久し振りなので拉致って帰った。

翌日には成熟して赤くなり、、、


容器の隅でシダを利用して繭作ったな、と思って放置してある日見たら、、、
ヘンテコな蛹かと思ったら、幼虫の薄皮の中に黒褐色の繭が出来ていた。

終齢幼虫を持ち帰ると寄生率が高い。。。

で、9月下旬か10月はじめ頃に難解そうなアメバチが羽化した。

忙しいし、同定できないだろうと思ってしばらく放置していたのだが、いちおう写真を撮っておこうと出してみたら、以前紹介したハチと同種だった。

クロホシアメバチ Enicospilus nigropectus
干涸らびていたので成形は適当。。

以前のクロホシアメバチの記事はこちら↓

「クロホシアメバチ」

同じ種類は出さない方針だけど、寄主が判明している例は少なそうなので記事に残しておきます。

とは言っても、キスジツマキリヨトウだけに寄生するわけではないと思う。

いろんないもむしに産卵して、繭を作る頃に食い尽くしていもむしの作った繭の中で、更に繭を作って蛹化するようだ。

石橋を叩いて渡るような性格してますな。

各部画像

頭部胸部側面

クロホシアメバチ Enicospilus nigropectus
黒斑の出方は個体変異があるそうで、この個体はちょっと薄い感じ。

クロホシアメバチ Enicospilus nigropectus
干涸らびて、目が死んでる。

翅脈

クロホシアメバチ Enicospilus nigropectus
前翅の透明域と小節片の形状がバッチリ一致している。


ではまた