2021年11月20日土曜日

キイロハバチ属の1種Monophadnus nigritarsis の羽化

今年の1月の記事、

「ボタンヅルを食べるマルハバチ亜科の幼虫」

1個体の前蛹が春になっても夏を過ぎても変化がなく、死んでる様子もなかったのが、11月に入ってふと見ると蛹化していた。

色づいているので蛹化したのは10月下旬だろうか。

幼虫を採集したのが昨年12月なので、ほぼ1年ぶりの変化である。

11月4日に羽化。

以前の記事で候補に挙げたうち、この色合いはキイロハバチかルイスカマルハバチの2種である。

羽化した個体の触角は頭幅の約1.3倍程度なので、触角が頭幅の2倍以上あるルイスアカマルハバチNesotomostethus clemati は除外。

残ったのは、キイロハバチ Monophadnus nigriceps であるが、配色が微妙に異なる。で、

「日本産ハバチ・キバチ類図鑑 (北海道大学出版会、2020)」を見ると、図はなかったが、和名のない Monophadnus nigritarsis という種がいて、検索表でこの種に落ち着いた。

この種については「A New Species of the Genus Monophadnus HARTIG (Hymenoptera, Tenthredinidae) from Japan」で詳しく報告されており、国立国会図書館デジタルコレクションで読むことが出来る。(上記タイトルにリンク貼ってるので、クリックすると該当ページに行けます。)

羽化した個体の背面

キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis
腹面

キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis
側面
キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis

キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis

キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis

胸部拡大

キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis

キイロハバチ Monophadnus nigriceps では中胸背板前縁(矢印位置)に逆三角形の黒斑があるが本種では黒斑がないのが外見上の区別点であろう。胸部後半の翅で隠れる黒斑にも違いがある。

後脚の爪

キイロハバチ属の1種 ♀
Monophadnus nigritarsis

爪には内歯があり、キイロハバチより長いのが特徴。

図鑑の検索キーは

後脚の脛節と第1跗節の基半は橙黄色、爪は小さな内歯を持つ・・・・・・・・・・・

キイロハバチ M.nigriceps

後脚の脛節先端と跗節は黒色、爪は大きな内歯を持つ・・・・・・・・・・・

M.nigritarsis

となっていた。

おまけ

産卵管


おまけその2

比較用に以前採ったキイロハバチの画像を貼っておきます。

背面

2010年8月16日、神戸市
キイロハバチ♀ Monophadnus nigriceps
矢印位置に黒斑が出る。

胸部後半の黒斑は弱い。

側面

キイロハバチ♀ Monophadnus nigriceps

腹面の黒斑は比較すると強く出る。

ちなみにルイスアカマルハバチ Nesotomostethus clemati では腹面は全体橙黄色である。

キイロハバチ♀ Monophadnus nigriceps

区別点の後脚の爪

キイロハバチ♀ Monophadnus nigriceps

比べると内歯は小さい(切れ込みは浅い)。

ちなみにキイロハバチは春から秋まで見られるので多化性と考えられているが、M.nigritarsisは今回1例の飼育記録によると年1回秋に発生する種類だと思われる。


ではまた 

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