2021年3月27日土曜日

マエナミカバナミシャクの♀交尾器

 ネタがないので前回の続きな感じで。

2月28日に八幡さんにいた蛾。

マエナミカバナミシャク Eupithecia niphonaria

♀だったのでしばらくケースに入れておいたけど、産卵することなく死んでしまった。

めったにないことだけど未交尾個体だったのかしらん?


上の画像に種名はつけているけど、採った時点では私には名前は判ってない。

お亡くなりになった後で交尾器を観察。

マエナミカバナミシャク Eupithecia niphonaria
female genitalia

前回のナカオビカバナミシャクと違って交尾囊が球形。

交尾囊の拡大

マエナミカバナミシャク Eupithecia niphonaria
corpus bursae

本種も内向きの刺(signa)がびっしり。

カバナミシャクの仲間はみなこんな感じ。


ではまた

2021年3月21日日曜日

アイアンメイデンな交尾囊と真珠な卵・・・ナカオビカバナミシャク

 3月7日にツバキの幹にへちょっと止まっていた蛾。

ナカオビカバナミシャク Eupithecia subbreviata ♀

近縁種が多くて、私などでは現地で種名付きのツイートはできない仲間。

ネタに持ち帰る。

♀だったので濾紙を短冊に切ってホチキスで留めたのと一緒にサンプル瓶にしばらく保管。

5日後に産卵した後しばらくしてお亡くなりに。

種類を確定するために交尾器観察。

ナカオビカバナミシャク Eupithecia subbreviata
♀ genitalia

矢印の交尾囊が卵形で長いのでナカオビカバナミシャクで決定。

交尾囊の拡大

ナカオビカバナミシャク Eupithecia subbreviata
corpus bursae

内向きの刺(signa)がびっしり。

交尾囊の硬化部をsignum(シグヌム)と呼ぶ。signa(シグナ)は複数形。

伝説の拷問道具のような??


さて

採卵用の濾紙は手抜きのこんな感じである。

食樹の匂いがないと産卵しない偏屈な♀もいるけど、本種は割と適当のようで助かる。

産みたての卵はこんな。

ナカオビカバナミシャク Eupithecia subbreviata

ピカピカで表面に彫刻はない。形はやや扁平な俵おむすびのような感じ。

光沢は真珠っぽい。

隙間がお好みのようで濾紙の間にびっしり。


まあ、3日も経つと真珠色からゼリービーンズに変わりますが。

ナカオビカバナミシャク Eupithecia subbreviata

1週間で孵化。

ナカオビカバナミシャク Eupithecia subbreviata
1齢幼虫
体長1.5mmの糸くず。

図鑑に寄主植物は未知、とあったが庭のクヌギの新芽を与えたら食いついていた。


ではまた



2021年3月13日土曜日

チャオビフユエダシャクの♀口吻

 この間のツイート。

腹部がなんとなくショボッとしてるから

もうだいぶ産卵した後だろうと持ち帰って調べてみた。

3日ほど経過したが産卵せずお亡くなりに。

チャオビフユエダシャク Phigaliohybernia fulvinfula

嘘ついてました。ゴメンナサイ。

チャオビフユエダシャクの♀でした。


「日本産フユシャクガ類の分類学的、生態学的研究(1998,中島)」より引用。

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前翅より後翅が大きいフユエダシャク♀のうち、ヒロバフユエダシャクとチャオビフユエダシャクでは口吻の長さで区別できる。

1㎜以下・・・ヒロバフユエダシャクLarerannis miracula

2㎜以上・・・チャオビフユエダシャクPhigaliohybernia fulvinfula


よく似たシロフフユエダシャクAgriopis dira♀は前翅より後翅が小さい。

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顔を横から。

チャオビフユエダシャク Phigaliohybernia fulvinfula 
口吻
フユシャクにあるまじき長さ。蜜とか吸えそう。


おまけ

チャオビフユエダシャクの♀交尾器

チャオビフユエダシャク Phigaliohybernia fulvinfula 
♀交尾器

交尾口辺りの拡大

交尾嚢(corpus bursae)のシグヌム(signum)


当アカウントは現地ツイートでやらかすことが多いので注意してね。

ではまた

2021年3月6日土曜日

オウトウショウジョウバエの♂交尾器

啓蟄が過ぎましたな。

でも春本番にはまだまだなので。


そこらをお散歩ネットでガサガサして判りやすいのをゲット。

オウトウショウジョウバエ Drosophila suzukii

オウトウその他の果実に産卵するため害虫とされる。

側面

キイロショウジョウバエ風で翅端に斑紋があるのが特徴。

この斑紋は♀にはない。

ショウジョウバエ♂の前脚ふ節には「性櫛(せいしつ) sex combs」と呼ばれる剛毛列を持つ種類がいる。


オウトウショウジョウバエでは第1ふ節と第2ふ節に性櫛をもつ。

キイロショウジョウバエの性櫛は第1ふ節のみにある。

近縁にニセオウトウショウジョウバエがいるが、性櫛の剛毛が弱いらしい。

翅の斑紋も横長の紡錘形であるため区別できる、とのこと。


検索すると、ネットにpdfファイルが落ちてた。↓

「オウトウショウジョウバエとニセオウトウショウジョウバエの発生消長と判別方法」やまがたアグリネット-病害虫防除技術情報No.13


「ふ節」の「ふ」は足へんに付だけど、環境依存文字なのでふ節と書いたり付節にしたりしてるけど、どちらがマシだろう?


それはさておきオウトウショウジョウバエの♂交尾器

腹端を取り出して、

10%KOH水溶液で煮て分解。

背面側

第10背板の間に肛門があるので、anal plate と呼ばれる。

第9背板も変形しており「生殖弓epandrium(genital arch)」と呼ぶそうな。


生殖器本体


把握片(clasper)の拡大

トゲがいっぱい。


前翅の拡大

オウトウショウジョウバエ Drosophila suzukii ♂

力尽きて翅脈は書き込めなかった。


ではまた

2021年3月1日月曜日

チビスカシノメイガの幼虫

飼育していた蛾が先週羽化した。

チビスカシノメイガ Glyphodes duplicalis
小さな目玉模様付き。

昨年の10月下旬、ヒメコウゾの葉っぱを綴っているのを見つけた。



終齢幼虫背面
チビスカシノメイガ Glyphodes duplicalis
last inster larva

終齢幼虫側面
チビスカシノメイガ Glyphodes duplicalis
last inster larva

フィルムケースの中で繭を作って、成熟幼虫のままで越冬。
室内に置いていたせいか、早めの羽化となった。

羽化後の蛹殻と終齢幼虫の脱皮殻

蛹の尾突起(cremaster)
尾突起の先端には鉤状刺毛がある。
羽化の際に繭から蛹殻がくっ付いてこないように
しっかり繭に引っかかっている。

種類によってはこの鉤状刺毛は特徴がある。
過去にはこんなのも↓

insectmoth.hatenablog.com

 幼虫脱皮殻の頭部

蛾の幼虫の目は基本6対。
個眼(stemma, 複数形はstemmata)と呼ぶ。
単眼と呼ぶことがあるが、成虫の単眼(ocellus)とは相同ではないため、個眼と書くのが正しい。
祖先形質は7対だそうで、モグリコバネガ科だけが7対あるそうだ。
鱗翅目に近縁の毛翅目(トビケラ目)が7対の個眼を持つそうな。

ではまた