2021年1月30日土曜日

カタカケハマキの幼虫と蛹殻

 ネタがないので昨年撮った画像から。

2020年5月4日

カタカケハマキ Archips capsigerana 幼虫


コナラの葉を綴っていたが、様々な樹木につく。

間もなく蛹化したのか、しばらく静かになって、

5月15日に羽化した。

カタカケハマキ Archips capsigerana ♂
♂なので前縁褶がある。
本種はそれが発達しているのを「カタカケ」と表したのかな?
ハマキガは英語で Bell moth と呼ぶことがあるが、
見た目で分かりますな。

前縁褶をめくると、長い鱗毛の束が隠れていた。
カタカケハマキ Archips capsigerana ♂
この間の「ウスコカクモンハマキ」とはまた違っていますな。

羽化後の蛹殻
カタカケハマキ Archips capsigerana 蛹殻

第2と第3腹節背面に何か摘まんだような硬化部がある。
他属の蛹では見た記憶がないので、本属の特徴かも?

蛹の腹端部腹面。
第9腹節に交尾器開口部があるのが♂。
♀の蛹は第8腹節に食い込んだように開口している。

蛹の雌雄はこれで区別可能である。

昔どこかで貼ったクロメンガタスズメ蛹の雌雄の腹端画像。

イラストも

ではまた

2021年1月23日土曜日

タイワンツヤカスミカメらしい

日曜日、お散歩から帰って庭のクヌギを選定剪定していたら落ちてきた。

2021年1月17日
タイワンツヤカスミカメ Deraeocoris apicatus
台湾原産の侵入種とのこと。

背面

タイワンツヤカスミカメ Deraeocoris apicatus

腹面

タイワンツヤカスミカメ Deraeocoris apicatus
♀でした。

市販の本では「カメムシ博士入門(全農教、2018)」に載っているくらい?

カメムシのバイブルである日本原色カメムシ図鑑全3巻にも載っていない。

図鑑を最初に見て、セスジクロツヤカスミカメ Deraeocoris ryukyuensis とか、

カワヤナギツヤカスミカメ Deraeocoris claspericapilatus が近いけどなんか違うなぁ、と思いつつネットを検索したら、最近の侵入種でタイワンツヤカスミカメがいることが判った。

「カワヤナギツヤカスミカメ?」とか「ツヤカスミカメの1種」で検索すると、同種と思われる画像が見られるので、かなり以前から関西の都市部に侵入したいたことが判る。

特徴は小盾板に点刻があることと白斑の位置、楔状部の白斑の形、膜質部に淡い黒帯があるところ、など?

カメムシの前翅は半分膜質で半分硬いところから「半翅目」である。硬い部分は爪状部、革質部、楔状部に分かれている。膜質部の翅脈はその本数などが科の区別点だったりする。

本種の文献上の初出は、以下の報告らしい(私は読めてない)。

「日本から新たに記録されるツヤカスミカメ属の2種(カスミカメムシ科)」Rostria No.61(日本半翅類学会,2017)

名前が判ったところで、なんか見たことある気がして標本箱をあさったら、お散歩コースでも採っていた。

2013年12月15日神戸市須磨区

こっちは♂。

さらに以前、
2008年6月4日大阪市此花区桜島
こちらは仕事の出先の昼休憩中に上司が採ったけど「いらんこんなん」とかいうので貰ったもの。
昔のデジカメで撮った画像なのでいまいち。
全体的に私の画像がいまいちなのはツッコまないこと。
左が♂で右が♀。
触角第2節が太くて黒いのが♂の特徴のようだ。

埋立地の端っこの猫の額ほどの緑地だったが10数個体は採っていたと思う。
標本に残っているのは1ペアだけ。

少なくとも13年前には日本に侵入していたことになる。

そんな昔はカメムシはあまり気にしてなかったからなぁ。

芋づる式に過去の謎むしが判ってしまったのでヨシとしよう。


ではまた

2021年1月17日日曜日

フシダニが作るアキニレの虫こぶ

 今年のネタがないので昨年の謎ムシから。

ゴールデンウイーク明けにふと気づいたもの。

2020年5月10日
お散歩コースの1本のアキニレにブツブツとコブができていた。

表側は丸っこいコブだが、裏側は中央が凹んだ噴火口状。

切ってみると、

0.2㎜ほどのオレンジ色したウジ虫が。

虫こぶ一つに1個体ずつ、まれに2個体入っていた。

よく見ると前方に2対の足がある。

フシダニ上科の1種だ。

フシダニにも虫こぶを作る種類がいるのは知っていたが、

手持ちの虫こぶ本にはアキニレにこんな虫こぶを作る種類はなかったので、早々に同定を諦める。

ときどき気にして1枚持ち帰っては中を覗いてみた。

2020年5月17日
縦に切ってみた。

下が葉表側。

たった1個体のダニが刺すだけで葉っぱがこんなに変化するのは実に不思議な現象であるな。

たぶん新芽の頃から寄生して徐々に膨らんでいくのだろう。

2020年5月31日

葉の表側

葉の裏側
中央が凹んでいるが穴は開いていない。

完全な密室。

2020年6月7日にちょっと変化あり。

ダニの幅とほぼ同じ卵が見える。

2020年6月21日

ちゃんと写ってないけれど、薄黄色の子供が現れた。

ずいぶんゆっくりとした成長具合である。

オレンジ色のが母ダニ。

アブラムシで言うところの幹母。

ダニでもそう言うのかは分からない。

2020年7月5日

密室の中で少しずつ増えていく。

2020年7月19日

ひとまわり大きなウジがみられた。

2020年8月2日

体節のようなものがうっすら見える。

ダニを食う捕食者と言えばタマバエあたりだろうか?

2020年8月10日

卵だらけになってきた。

先に孵化したものはオレンジ色になってきた。

2020年8月30日

密です。

2020年10月7日

大きなウジが1個体だけいる虫こぶが見られるようになった。

2020年10月11日

ウジは無脚、頭部もよく判らない。

たまに脱出口のある虫こぶが見られた。

2020年10月18日

寄生されていない虫こぶの中はフシダニでみっしり。

ウジのいる虫こぶはスッカラカン。

フシダニは食べ尽くされている。

2020年10月25日

開いていない脱出口のある虫こぶを見つけたので、、、

開けてみると干からびた虫が、、、

水でふやかして拡大すると、、、

なんじゃこれ?
なんとかコバチ?

2020年11月8日
噴火口の薄い部分に穴が開いて(矢印)フシダニが出て行った虫こぶがチラホラ見られるようになる。
捕食性?のウジはまだ見られる。

断片的な観察なのでウジがコバチの幼虫なのか、
何か他の、たとえばタマバエの幼虫にコバチが寄生したのかの判別がつかない。
片っ端からプレパラートにして光学顕微鏡で見たら判るかも知れないが、ちょっと時間が取れなかった。

2020年12月13日
黄葉して散り始めたので最後の観察。
フシダニはもぬけの殻。
捕食者だか寄生者だかのウジはまだ隠れていた。
落葉したまま地表で越冬するのだろうか?

このウジは虫こぶから出すと、少しの乾燥で干乾びてしまって死んでしまう。

調べるのなら、小さい鉢植えでも用意しないと無理かもしれない。

手持ちの「原色植物ダニ検索図鑑」を見ると、
フシダニ上科Eriophyoideaは全世界で三千数百種知られているそうである。

素人には手が出せないグループではないか。

まぁそれでも図鑑の記述を読んでいくと、
クリフシダニAceria japonica という種がクリの葉に寄生し、葉表側は半球状でなめらか、葉裏側は円筒形で小孔が開口するダニこぶを形成する、という記述があった。
虫こぶの形状は似ているので同属ではないかと思う。
フシダニ類は種特異性が高く、寄生する植物により別種である可能性が高いそうなのでたぶん同属別種なのであろう。

しかし、外形的差異が小さいので私には判らない。
今はゲノム配列がどうのこうのの世界だし、
手が出ないわな。

ではまた

2021年1月9日土曜日

ボタンヅルを食べるマルハバチ亜科の幼虫

ネタがないので昨年見た不明幼虫から。

2021年11月20日追記

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無事に羽化して、キイロハバチの1種Monophadnus nigritarsis であることが判明。成虫は以下の記事にあります。

「キイロハバチ属の1種Monophadnus nigritarsis の羽化」

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暮れも押し詰まった12月6日、ボタンヅルに新しい食痕があったので捲ってみた。

キイロハバチ属の1種  亜終齢
Monophadnus nigritarsis
近所に生えているのはセンニンソウだと思っていたけど、葉に鋸歯があるのはボタンヅルのようだ。例外があるのでセンニンソウかも?

ハバチの幼虫はめったに採集しないけれど、3個体ほど持ち帰る。
拡大
キイロハバチ属の1種  亜終齢
Monophadnus nigritarsis
側面
キイロハバチ属の1種  亜終齢
Monophadnus nigritarsis

不思議なトゲのいもむしである。

こんなトゲの付き方をしたいもむしには見覚えがある。

旧ブログの「トゲトゲいもむし」↓ 

insectmoth.hatenablog.com

旧ブログのこのハバチは新しく仕入れたハバチ図鑑で

ナラガシワマルハバチの和名がついていた。

今回のは明らかに別種だけれど、マルハバチ亜科の幼虫だろう。

「日本産ハバチ・キバチ類図鑑(北海道大学出版会,2020)」から

マルハバチ亜科でボタンヅル(センニンソウ)を食べる種は

アカマルハバチ属 Nesotomostethus

 ルイスアカマルハバチ Nesotomostethus clemati

 クロバアカマルハバチ Nesotomostethus religiosa

ヒゲブトマルハバチ属 Megatomostethus

 ヒゲブトマルハバチ Megatomostethus crassicornis

キイロハバチ属 Monophadnus

 キイロハバチ Monophadnus nigriceps

の3属4種。

ネットで検索してもキイロハバチの幼虫?とされるトゲのない幼虫しか見当たらない。

なので、アカマルハバチ属かヒゲブトマルハバチ属だと思うけど、過去に採集した成虫を確認する暇がなかったので、宿題である。

持ち帰った幼虫はしばらくすると脱皮した。

キイロハバチ属の1種  終齢
Monophadnus nigritarsis
トゲなくなった!?

キイロハバチ属の1種  終齢
Monophadnus nigritarsis
丸々としてオイシそう。


さて、トゲがなくなると葉っぱを食べずにウロウロ歩き回るようになった。

蛹化のサインですな。

ちょっと思いついて、オアシス(生け花に使う給水スポンジ)をシャーレに入れて放してみた。

ガシガシ穴をあけて潜っていった。

カビたりしてダメになった幼虫もいるが、1個体のみカビずに残っている.

微動だにしないけど。

春になったら羽化しないかなぁ。(希望的観測)


ではまた

2021年1月2日土曜日

クサギにいたウスコカクモンハマキ

 昨年の暮れ、会社に置いていた蛹が羽化した。

プラケース越しに1枚。

2020年12月25日
ウスコカクモンハマキ Adoxophyes dubia

11月の終わりにクサギの葉っぱを二つ折りに綴っていたもの。

黄ばみ始めて余りオイシくなさそうな葉っぱをしばらく食べたあと蛹化。

2020年12月7日

本種の近縁種にチャノコカクモンハマキ Adxophyes honmai がいるが、チャノコカクモンハマキは関東以西の本州以南に分布するが、ウスコカクモンハマキはやや南寄りで、伊豆半島以西の本州以南に分布する。
名前の通り茶や柑橘類の害虫で、ほかにも種々の樹木につく広食性の小蛾である。ウスコカクモンハマキも広食性である。
両種を比較すると、ウスコカクモンの方が色が淡い傾向にある。

♂の前翅には折り返しがあり「前縁褶(ぜんえんしゅう、またはぜんえんひだ)」と呼ぶ部分がある。

ウスコカクモンハマキでは前縁褶の内面が紡錘形に特化した鱗粉群でビロード様に裏打ちされているが、チャノコカクモンハマキにはこの鱗粉群を欠くのが区別点とある。

背面

ウスコカクモンハマキ Adoxophyes dubia
矢印の位置が前縁褶。

展翅するときに前縁褶を捲って1枚パシャリ。

ウスコカクモンハマキ Adoxophyes dubia
内側になんかビッシリ生えてますな。

この前縁褶は♀にはないので交尾に関する器官なのだろう。

たぶん♀をなだめるフェロモンを分泌するとか、そんなところだろうと思う。


ではまた