2021年1月17日日曜日

フシダニが作るアキニレの虫こぶ

 今年のネタがないので昨年の謎ムシから。

ゴールデンウイーク明けにふと気づいたもの。

2020年5月10日
お散歩コースの1本のアキニレにブツブツとコブができていた。

表側は丸っこいコブだが、裏側は中央が凹んだ噴火口状。

切ってみると、

0.2㎜ほどのオレンジ色したウジ虫が。

虫こぶ一つに1個体ずつ、まれに2個体入っていた。

よく見ると前方に2対の足がある。

フシダニ上科の1種だ。

フシダニにも虫こぶを作る種類がいるのは知っていたが、

手持ちの虫こぶ本にはアキニレにこんな虫こぶを作る種類はなかったので、早々に同定を諦める。

ときどき気にして1枚持ち帰っては中を覗いてみた。

2020年5月17日
縦に切ってみた。

下が葉表側。

たった1個体のダニが刺すだけで葉っぱがこんなに変化するのは実に不思議な現象であるな。

たぶん新芽の頃から寄生して徐々に膨らんでいくのだろう。

2020年5月31日

葉の表側

葉の裏側
中央が凹んでいるが穴は開いていない。

完全な密室。

2020年6月7日にちょっと変化あり。

ダニの幅とほぼ同じ卵が見える。

2020年6月21日

ちゃんと写ってないけれど、薄黄色の子供が現れた。

ずいぶんゆっくりとした成長具合である。

オレンジ色のが母ダニ。

アブラムシで言うところの幹母。

ダニでもそう言うのかは分からない。

2020年7月5日

密室の中で少しずつ増えていく。

2020年7月19日

ひとまわり大きなウジがみられた。

2020年8月2日

体節のようなものがうっすら見える。

ダニを食う捕食者と言えばタマバエあたりだろうか?

2020年8月10日

卵だらけになってきた。

先に孵化したものはオレンジ色になってきた。

2020年8月30日

密です。

2020年10月7日

大きなウジが1個体だけいる虫こぶが見られるようになった。

2020年10月11日

ウジは無脚、頭部もよく判らない。

たまに脱出口のある虫こぶが見られた。

2020年10月18日

寄生されていない虫こぶの中はフシダニでみっしり。

ウジのいる虫こぶはスッカラカン。

フシダニは食べ尽くされている。

2020年10月25日

開いていない脱出口のある虫こぶを見つけたので、、、

開けてみると干からびた虫が、、、

水でふやかして拡大すると、、、

なんじゃこれ?
なんとかコバチ?

2020年11月8日
噴火口の薄い部分に穴が開いて(矢印)フシダニが出て行った虫こぶがチラホラ見られるようになる。
捕食性?のウジはまだ見られる。

断片的な観察なのでウジがコバチの幼虫なのか、
何か他の、たとえばタマバエの幼虫にコバチが寄生したのかの判別がつかない。
片っ端からプレパラートにして光学顕微鏡で見たら判るかも知れないが、ちょっと時間が取れなかった。

2020年12月13日
黄葉して散り始めたので最後の観察。
フシダニはもぬけの殻。
捕食者だか寄生者だかのウジはまだ隠れていた。
落葉したまま地表で越冬するのだろうか?

このウジは虫こぶから出すと、少しの乾燥で干乾びてしまって死んでしまう。

調べるのなら、小さい鉢植えでも用意しないと無理かもしれない。

手持ちの「原色植物ダニ検索図鑑」を見ると、
フシダニ上科Eriophyoideaは全世界で三千数百種知られているそうである。

素人には手が出せないグループではないか。

まぁそれでも図鑑の記述を読んでいくと、
クリフシダニAceria japonica という種がクリの葉に寄生し、葉表側は半球状でなめらか、葉裏側は円筒形で小孔が開口するダニこぶを形成する、という記述があった。
虫こぶの形状は似ているので同属ではないかと思う。
フシダニ類は種特異性が高く、寄生する植物により別種である可能性が高いそうなのでたぶん同属別種なのであろう。

しかし、外形的差異が小さいので私には判らない。
今はゲノム配列がどうのこうのの世界だし、
手が出ないわな。

ではまた

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