2023年10月7日土曜日

キシノウエトタテグモの♂が徘徊する季節

10月最初の日曜日、

唐突に涼しくなったなぁ、と思いつつお散歩へ。

足下を横切る黒い影。

キシノウエトタテグモ
Laatoucha typica
体長16mmほどのやや大型のクモがいた。

旧ブログで大昔に巣から覗く顔だけを紹介したキシノウエトタテグモである。

過去記事↓

insectmoth.hatenablog.com

クモのオスって涼しくなると、♀を求めて徘徊する種類が割と多い気がする。

普段は巣から出ることが無い種類の全身像を見ることは珍しい。

で、

わりと原始的なクモでじっくり見たことが無いなぁと拉致。

背面

キシノウエトタテグモ
Laatoucha typica
黒っぽくてよく判らない。

腹面

キシノウエトタテグモ
Laatoucha typica
各部分を拡大。。

頭胸部:cephalothorax

キシノウエトタテグモ
Laatoucha typica
鋏角:chelicera

背甲:carapace

眼域はひとかたまり、レンズが判りにくいけど、4対8眼ちゃんとある。

キシノウエトタテグモ
Laatoucha typica
にっこり笑顔の口みたいな凹みは
中窩:thoracic groove = median furrow = foveaと呼ばれる。
体内に骨片が突出しており、脚部の筋肉付着点になっていると思われる。

頭胸部腹面
下唇:labium
胸板:sternum

口元のあたり。
牙:fang
下顎(触肢基節):maxilla = gnathocoxa

触肢基節は内葉を形成して咀嚼する機能を有するため、下顎と呼ばれる。
よくいるクモの牙は左右に開閉して咬むようにできているが、本種は上からザックリ振り下ろすようにできている。で、そのまま巣穴に引きずり込む。

腹部腹面
キシノウエトタテグモ
Laatoucha typica
書肺:book lung は2対ある。
そこらで見るクモは1対なので違和感がある。
原始的な種類は2対あるそうな。

糸を出すところ。
糸疣:spinnerets
中疣:middle spinneret
後疣:posterior spinneret
本種の場合は、糸疣は2対で前疣は退化し、小さな中疣と3節の後疣からなる。

第4脚先端
上爪:upper claw

1対の爪があるだけで、下爪や末端毛束は見られない。

左触肢側面
キシノウエトタテグモ
Laatoucha typica
オスの触肢は交接に使われるために特異な形状をしており、「触肢器官」と呼ばれる。

触肢腹面
キシノウエトタテグモ
Laatoucha typica
栓子:embolus
盾板:tegulum
亜盾板:subtegulum
杯葉:cymbium

原始的な種類なので割りと単純な形をしているけど、他のクモはもっと複雑怪奇な形で、種を決定づける決め手になる。
本種の場合は近縁種間での差異はちいさい。


ではまた

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