2025年12月27日土曜日

キバラケンモンのコレマタは縦並び

お散歩でのネタが全然なので、冷蔵庫に入れっぱなしだったキバラケンモンの交尾器を観察してみた。

6月に持ち帰った繭から羽化したもので、その記事はこちら↓

「キバラケンモンの野外での繭」

腹部を取り出して、10%KOH水溶液中で加熱して筋肉を溶かして洗浄、

整形したのが下図

キバラケンモン
Trichosea champa
Male genitalia
背景は1㎜方眼。

下の矢印は交尾器に被さっていた第8腹板をひっくり返した状態。

第8腹節後方に嚢状部があり毛束を備える。

この毛束は「coremata;コレマタ」と呼ばれる器官で、交尾のためメスに近づく際に反転して芳香を出すそうだ。要は「逃げなくていいよー同種のオスだよー敵じゃないよー」とアピールするためらしい。

黒バック

キバラケンモン
Trichosea champa
Male genitalia

本種のコレマタは第7腹節後方にもあり、縦に2本みられた。

本種は縦並びだけど、種類によって違いがありヒトリガ科などでは左右に一対枝分かれしたコレマタを備える。

コレマタの毛束先端の拡大
キバラケンモン
Trichosea champa
coremata
中空のようで縦皺があり先端がやや膨らむ。

直径は0.03㎜ほどで、先端は0.04㎜くらい。

嚢状の基部の拡大

毛の基部はドーナツ状で、嚢状部から毛束に芳香物質を押し出しているようだ。

おまけ

phallus;挿入器のvesica;内袋を反転したらこんな形。

キバラケンモン
Trichosea champa
phallus
細い管の先が射精管の開口部

別方向

盲嚢部がある。

クルリと反対側。

矢印のトゲトゲはcornuti;コルヌティ(複数形、1本の場合は単数形のコルヌツス;cornutusを使う)

交尾の際に錨のように固定する役目を持つ。


ではまた

あ、これが今年最後の投稿になるかと思います。

皆様良いお年を

2025年12月20日土曜日

ヒメセマダライエバエだと思う

12月も半ばだというのに紅葉の残るお散歩起点の八幡さん。

菊の花にいたハエ。
ヒメセマダライエバエ
Graphomya rufitibia
ヒメセマダライエバエだと思う。
20数年前に発行された「日本のイエバエ科」を脊髄反射で購入したものの未だに読み込めていないので、たぶんとしか言えない。
貼り逃げともいう。

以下拡大画像。
背面
ヒメセマダライエバエ
Graphomya rufitibia
側面
前翅
翅脈は典型的?なイエバエ科

腹端部

ついでに前の週に採集したメスと思われる個体。
ヒメセマダライエバエ?
Graphomya rufitibia
female
側面
双翅目の常として、オスより複眼間が広い。

日本産の同属はセマダライエバエと本種の2種のみ。

ではまた

2025年12月13日土曜日

ねじねじのコイル巻き

日曜日のお散歩で、

元気の薄い葉っぱを見かけた。

シロダモかな。ヤブニッケイかもしれない。

裏返してみると、、

トゲキジラミ
Togepsylla matsumurana
成虫でも体長1.5㎜ほどのちいちゃな虫がいた。

腹部側面に3対6本の蝋物質を分泌していた。

黄色い粒々の卵もパラパラ産み付けてる。

被害葉のわりに個体数が少ないな、と思ったら

蝋物質をまとったクサカゲロウの幼虫が近くにいた。

けど、写真撮る前にポトリと落ちて見失う。

どうも大量殺戮が起こった後のようだ。

トゲキジラミは翅脈にトゲのような毛が生えているので、拡大してみるとオモシロい虫である。

旧ブログで紹介済みである。↓

「去年の葉っぱでいいんかい?・・・・トゲキジラミ」

当時の文献ではヒゲブトキジラミ属Hemipteripsyllaとされて、ネッタイキジラミ科とされていたが、現在ではキジラミ科のトゲキジラミ亜科Togepsyllinaeにされてトゲキジラミ属Togepsylla となるようだ。

これは2009年の話しなので、久し振りに実体顕微鏡で見ようと、吸虫管で2個体ほど吸って帰った。

が、翌日見ると本体は入っていなかった。

??? ワープした?

中には蝋物質の束が数本残っていただけだった。

空蝉の術使いだったとは。。。

しょうがないので残された蝋物質を拡大。

この間紹介したチュウゴクアミガサハゴロモの蝋物質より細い感じがする。目盛りは0.5㎜間隔。

さらに光学顕微鏡で拡大。

トゲキジラミ
Togepsylla matsumurana
ひと目盛りは0.005㎜。

ねじねじのコイル巻き構造だった。

セミヤドリガの蝋物質ともまた違う構造で、グループごとに特徴があって面白いテーマかも知れないね。


ではまた


2025年12月6日土曜日

ホホビロホソヒラタムシ

11月最後の日曜日、当地のフユシャク第一陣のクロスジフユエダシャクのオスがちらりと飛んだ。

この日はトータル2個体。

本種は昼間もやたらと飛び回るので、撮影できず。

10年ほど前なら、ひと目で100個体近く乱舞していたというのに、年々減ってきているので来年はどうなることやら?

で、お散歩ネットで掬った虫貼るだけ。

ホホビロホソヒラタムシ
Silvanoprus longicollis
体長は2.6㎜ほど。カビ食い虫だと思う。

ホソヒラタムシ科は日本産40種ほどいるけど、本種は複眼が小さく後方の頬が広いので判りやすい。

頭部と前胸は点刻かと思ったら顆粒状みたい。

腹面

ホホビロホソヒラタムシ
Silvanoprus longicollis

ではまた

2025年11月29日土曜日

ケナガマルキスイの一種

 日曜日のお散歩でスイーピングで得た虫。

ケナガマルキスイの一種
Toramus sp.
体長は1.6mmほど。

ルーペを忘れてきたのでヒメマキムシの一種かな?とか思いながら持ち帰ったもの。

黒バック

ケナガマルキスイの一種
Toramus sp.
毛が長い。。。

以前腐葉土から採ったことのあるケナガマルキスイかな?

と思ったけど、上翅会合線後方に斑紋がある。

図鑑の画像は小さくてよく判らないしで、

ちょっと検索したら、九大博物館の佐々治寛之コレクションに該当種の画像があったので見比べてみると、斑紋はないし、外形もより丸みを帯びた体型なのでドウモ別種らしい。

日本産の同属他種は二つ紋だったり四つ紋だったりで、こんな一つ紋の種類はいない感じ。

ということで手詰まり。

ただ、属名のToramusで検索したら、台湾のサイトにそっくりな種が見つかったけど、Toramus sp.と属止まりで紹介されていた。

ただ、Toramus formosianus?と「?」付きで種名が書かれていたので、それなのかもしれない。

和名をつけるとしたら、ヒトツメケナガマルキスイとかだろうか。

腹面

追記

以前採ったのを見返したら今回のと同じ一つ紋付きで、本来のケナガマルキスイは採ったことないらしいことが判明した。

なんてこと。


ではまた

2025年11月22日土曜日

クビアカツヤゴモクムシの交尾片

最近は虫が少なすぎて普段は採らないような虫を持ち帰った。

クビアカツヤゴモクムシ
Trichotichnus longitarsis
大概まっ黒けなゴミムシ界では異質な色合い。

最初テネラルかと思った。

図鑑の絵合わせでテキトー同定。

腹面

クビアカツヤゴモクムシ
Trichotichnus longitarsis
オスだったので交尾器観察。

袋状のは反転した「内袋」

交尾の際に反転する部分。

10%苛性カリ水溶液中で加熱して筋肉溶かすと反転しやすい。

手指消毒用のアルコールジェルに漬けて回転しながら観察。

クマの爪みたいなのが「交尾片」

クルリ

クビアカツヤゴモクムシ
Trichotichnus longitarsis
クルリ


ではまた

2025年11月15日土曜日

蛇縄模様

 今週は小ネタ。

8月最後の日曜日に下草にくっついていたもの。

セミヤドリガ
Epipomponia nawai
とても久し振りなセミヤドリガの繭。

蛾の中では珍しく寄生性で、しかも寄主はセミの成虫という変わった生態の昆虫である。

それほど珍しいわけではなく、幼虫はヒグラシやミンミンゼミなどにくっついており、白色綿状の分泌物に覆われており目立つのですぐに判る。

繭もこの分泌物を利用して作るため、木の幹についているのをたま~に見かける。

ただ、成虫を見かけることは少ないので持ち帰ってみた。

んだけど、全然羽化しないので拡大してみたら、

穴空いてるじゃないの。

セミヤドリガに寄生蜂!?

そんなヤツいる?と繭を開けてみたら、

風化した輪ゴムみたいな質感の不思議物体が残っていた。

んーーー

想像するに、アリに見つかって前蛹が解体されて消化管内容物だけ残された状態?

寄生虫だったら本体のガワくらいは残っているので、たぶん犯人はアリだろう。

これだけだと、旧ブログでも紹介済みの種なので蝋物質を光学顕微鏡で拡大してみた。

斜めに走る白っぽいのは幼虫の吐いた糸。

それ以外の蝋物質はなにかネジネジした感じ。

太さは0.01㎜前後。

もうちょっと拡大。

セミヤドリガ
Epipomponia nawai
細いのが撚り糸状になっているのか表面の模様かは判然としないけど、複雑な形をしている。ヘビ縄トーンみたいな?

手近にチュウゴクアミガサハゴロモがあったので、同じように蝋物質を拡大。

チュウゴクアミガサハゴロモ
Ricania shantungensis
こちらはペラペラで単純な紐状だった。

カイガラムシとかアブラムシなど植物から吸汁する昆虫は必要なたんぱく質を摂取するために大量の糖分が余るせいか、白色の蝋物質に変換して分泌するものが多い。セミなどはおしっこで排出するみたいだけど、これらを捕食したり寄生したりする昆虫も栄養分が偏るせいか蝋物質を分泌するものが見られる。

以前紹介したアミダテントウの幼虫もそれである。

「アミダテントウ幼虫のもけもけを拡大してみた。」

本種の蝋物質は2種類の形状だった。

同じように見える蝋物質も種類ごとに違いがあって面白い。

分泌腺なんかを電子顕微鏡で見たら各種に違いがあって面白いかもしれない。伝手がないからできないけど。

ハゴロモヤドリガの繭はもう少し粉粉した感じだったけど、拡大すると違いがあるのか気になってきた。。


ではまた