2024年6月29日土曜日

「ハ」の字マークのフシモグリヒメハマキ

先週とタイトルの出だしが同じ。

日曜日の天気がずっと悪いのでネタがないから、飼育品からの蔵出し。

3月に記事にしたこれ。

「空き家で冬ごもり」

クヌギエダイガタマバチの虫こぶ、クヌギエダイガフシなんだけど、

タッパーに入れて時々霧吹きで加湿して会社においていた。

寄生蜂が複数種でてきてホエ~となってたんだけど、,


5月16日の休み明けの月曜日に見たら、蛾が底に転がって死んでいた。

タイミングが悪い。。

初見の虫なのに。。

こんなの。

フシモグリヒメハマキ
Andrioplecta pulverula

図鑑の展翅状態だと判らないけど、閉じた状態だと背中に「ハ」の字マーク。

日本産のヒメハマキでは他に無い模様なので同定は容易である。

本属の日本産は本種のみとのこと。

世界には11種いるそうだけど、本種は後翅中央に半ばまで白斑が走るので区別できるらしい。

フシモグリヒメハマキ
Andrioplecta pulverula

古い図鑑には載ってないが、学研の「日本産蛾類標準図鑑」に載っている。

名前が判って検索すると、クリタマバチの研究報告にそこそこ名前が出てくる。


羽化後の蛹殻。

硬い虫コブから蛹の殻がニョキっと飛び出している。

蛹殻を抜いて拡大。

脱出口をあらかじめ作ってから糸で蓋をしている模様。


虫こぶの断面。

空洞は糞だらけ。

矢印が蛹室(繭)である。

虫こぶの中身とタマバチの幼虫も食っちゃうそうだ。


蛹殻側面

フシモグリヒメハマキ
Andrioplecta pulverula
蛹殻腹面
フシモグリヒメハマキ
Andrioplecta pulverula

腹端が三叉鉾になってる。

ここまで強そうな腹端の蛹はあまり見た記憶がない。


頭部先端

なんか尖っている。

腹端のトゲとか腹部背面のトゲで体を支えて尖った頭で繭を押し破って脱出するのだろう。

朽木に潜るイシアブ類の蛹やベッコウガガンボの蛹もトゲだらけだけど、機能的には同じ目的なのだろう。

齧る口のない鱗翅目や双翅目は蛹で一工夫と言ったところ。

ヤママユなんかは繭の中で羽化して酵素入りの唾液?で繭を柔らかくしてからムリムリと出てくるけどね。

パワータイプの脱出法?

いろいろあって面白い。


おまけ

同じ日に同じように死んでいた小蛾。

マダラトガリホソガ
Anatrachyntis japonica
こちらは掃除屋的な立ち位置の蛾で、アシナガバチの巣とか小蛾の巣とかで見つかるようだ。

こちらも乾燥してしまっていたので展翅は断念。


ではまた

2024年6月22日土曜日

「ハ」の字マークのハスジチビヒラタエンマムシ

梅雨入り前の日曜日、天気悪し。

なんでや?

雨は上がっているけど、下草濡れてて虫的にどもならん。

そのくせヒトスジシマカだけは纏わりつくとはこれ如何に。

山の中でついったX見ながら蚊除けにお散歩ネットを振り回していた。

十数匹入ったかな、と中を覗いたら蚊に混じって丸こいのがはいっていた。エンマムシのようだが、以前ヒメチビヒラタエンマムシを採集した同じ場所なので、それだろうと思いつつ一応確保。

ヒメチビヒラタエンマムシの過去記事はこちら↓

「樹皮下のヒメチビヒラタエンマムシ」


さてさて帰って見たら、別種であった。

2024年6月16日

ハスジチビヒラタエンマムシ
Pachylomalus musculus
体長2.5㎜ほど。
ちっちゃくてツルんとしたエンマムシ。
前胸基部に「ハ」の字のマークがあるのが特徴。

ツルツル小型のうちでは他種にはない特徴らしく、拡大して見られる環境さえあれば同定は容易かも。

腹面
ハスジチビヒラタエンマムシ
Pachylomalus musculus

「甲虫ニュース120号」にある本種の解説を読むと、

♂は尾節いっこ前の背板に稜がある、とある。

あったので♂。
3個体採ってすべて♂だったので、雨上がりに飛び回る習性でもあるのかも知れない。


おまけ

後脚基節の内部が見えていたので拡大。

なんか横皺がある。

ひょっとして発音器官だったり?

ペラペラの脛節が共鳴したり?

交尾の際に♀をなだめるために鳴いたり?

などと妄想してみた。

カミキリムシくらい大きかったら聞こえるかも。

カミキリが鳴く部位は前胸と小盾板だけどね。


さて、

今週は近畿も梅雨入りして、ちゃんと天気が悪いらしい。

なんでや。


ではまた

2024年6月15日土曜日

クシヒゲハバチの櫛髭

日曜日のお散歩は雨の中。

なのであまり虫を見ることもなく帰宅。

ということで、出しなに庭にいた虫を貼っておく。


ちっちゃな黒いハバチ。

特徴うすい、、

調べて果たしてわかるかなぁと思ってたが、拡大して見ると触角が櫛状じゃないの。

検索すっ飛ばして図鑑の索引でクシヒゲハバチを引いてみたらソックリそのままであった。

以下拡大画像

背面

クシヒゲハバチ♂
Cladius pectinicornis
脚部の膝から先が黄白色である以外は全体黒色。地味。
体長は6mm弱。

腹面

クシヒゲハバチ♂
Cladius pectinicornis

クシヒゲハバチ♂
Cladius pectinicornis
本種はハバチ科のヒゲナガハバチ亜科Nematinaeに属する。
ヒゲナガハバチ亜科は触角が9節で、赤丸印の場所にある横脈(2r-rs)がないものが多い。
あと、2A+3A脈は1A脈に中央で合流してから分離し先端でまた合流する。
黄色矢印はrs脈、古い本だと第反上脈とか書いてある。
rs脈のある場所だけど、透明なので無いと見るべきか。

触角を横から

クシヒゲハバチ♂
Cladius pectinicornis
第1・2節は短く、第3~5または6節には上に向かう突起があり、第3節は基部下方にも突出する。

カッコいい。

けど、幼虫はバラ科を食べるので害虫扱いである。

年2・3回発生する。

バラの葉っぱを裏面から食べて表皮を残す食べ方をするそうな。

バラにハバチの幼虫がいて、上記の食痕を残していたら、たぶん本種であろう。

なお、櫛髭なのはオスだけでメスは糸状である。

おまけ

クシヒゲハバチ♂
Cladius pectinicornis

ではまた

2024年6月8日土曜日

神戸の札幌

5月最後の日曜日、葉っぱの上にむくろ。


ちらり。

う~ん、オオウスベニトガリメイガ Endotricha icelusalis 辺りかな。

時々見かけるキレイな死骸はなんなんでしょ?

体液だけ吸うタイプの捕食者にやられてポイされた可能性が一番高いか。

ハエトリグモとか。

天寿を全うしたにしては擦れてないし、第一天寿を全うすることなんて自然界では少なかろう。


この日は別の葉っぱにも小蛾が死んでいた。

真っ黒けのハマキガだったので写真はとらず。

擦れてなかったので持ち帰ってみた。

乾燥した死骸なので針刺すだけ標本にした。

サッポロヒメハマキ
Ukamenia sapporensis

拡大して見たら、意外とキレイな蛾じゃないの。

外縁近くは紅色を帯びて、鉛色の金属光沢のある星が散らしてある。

意外と普通種とか図鑑に書いてあり、サッポロとか名前にあるが本州にも分布している。

いろんな広葉樹につくそうな。


ではまた

2024年6月1日土曜日

タマゴコバチ科の一種

5月12日のお散歩コース。

モモの葉裏になんか染みのような?

老眼進んでなんも判らん。

ルーペで覗いたら蛾の卵のようなので持ち帰り。

拡大

この模様はヤガ科にみられる特徴だけど、真っ黒な卵は見たことないので何じゃろうとシャーレに入れて孵化を待つことに。

もっとも孵化しても幼虫では判らないので、飼育して成虫見るまでは答え合わせができない。

ので、気が長い話ではある。

とか思ってた3日後、シャーレの中で何か動いている気配。

タマゴコバチ属の一種
Trichogramma sp.

老眼鏡かけてみても何かが動いている気配がするだけ。

実体顕微鏡下で覗いてやっとハチがワラワラしていると判明。

タマゴコバチ科と言えば、世界最小の昆虫を擁する科である。

属は違うが、アザミウマの卵に寄生するタマゴコバチが、体長0.18mmで世界最小とのこと。

こちらはだいたい0.7mmほどなので、まだまだ大きい?

見ていると、♂は卵の上を歩き回っている。

で、♀が顔を覗かせて、

タマゴコバチ属の一種
Trichogramma sp.


出てきた瞬間に♂が飛びついて、
タマゴコバチ属の一種
Trichogramma sp.

交尾していた。

タマゴコバチ属の一種
Trichogramma sp.
うちの撮影環境ではちょっと無理寄り。

雰囲気だけお楽しみください。

脱出後の♀

タマゴコバチ属の一種
Trichogramma sp.
翅はまだ短い。脱出してから伸ばすみたい。

♀の触角先端節は大きいが、♂の触角は等間隔で毛むくじゃら。

♂拡大

タマゴコバチ属の一種
Trichogramma sp. male
♀拡大
タマゴコバチ属の一種
Trichogramma sp. fimale
光学顕微鏡で見た翅

ピントずらしてもう一枚。
後翅は縁毛が主体。

ぼんやり翅脈っぽく見えていたのは刺毛列だった。

翅脈の名残かも知れないけど。


おまけの動画。

タマゴコバチが卵を齧って出てくるところの動画。

ギリギリのところをうんしょうんしょと出てくる。

寄主の卵が大きい場合は複数寄生可能なようで、出た後からまた別の個体が顔を覗かせていた。


ということで卵の正体は判らず仕舞いであった。

黒いのは寄生されていたためかも知れない。


ではまた