2023年5月13日土曜日

ウスイロクチブサガの幼虫と蛹殻

先週に引き続いて、庭のクヌギにいたいもむし。

2023年4月24日

ウスイロクチブサガ
Ypsolopha parenthesella
シュッとしたいもむしである。

背面
ウスイロクチブサガ
Ypsolopha parenthesella

頭を突っつくと光の速さで後退して見えなくなるので注意が必要である。

3日後に営繭した。
前後にスリットの入った舟形の繭。

それがつい昨日羽化した。

ウスイロクチブサガ
Ypsolopha parenthesella
背面
ウスイロクチブサガ
Ypsolopha parenthesella

前翅長は約9㎜

ウスイロクチブサガ
Ypsolopha parenthesella
なかなかの美人さんである。

羽化後の繭

矢印側に鱗粉が付いているのでコチラから羽化した模様。

ハマキガやメイガと違って繭から蛹は飛び出してこないみたいである。

円内は幼虫の脱皮殻。

なぜか繭の外にあった。

繭の斜めに裁断した部分はスリット状に隙間が開くので、蛹化する際に外に出すことができるようだ。

きれい好きなのだろうか。

さて、繭から蛹殻を引っぱり出してみた。

ウスイロクチブサガ
Ypsolopha parenthesella
蛹の腹端

第9節の交尾器開口部が第8節に食い込むように開口してるので♀である。

あと腹端に鉤状刺毛が発達していない。

蛹は飛び出さないので、ストッパーの鉤状刺毛は必要ないのかしら。

その代わりに繭にスリットを設けて、羽化した成虫が出やすいようにしているのかもね。


おまけ

蛹の頭端

下方に向かって鋭く短いトゲが生えていた。

(画像は仰向けの状態)


なんの用途に使うのやら?


ではまた

2023年5月6日土曜日

ミダレカクモンハマキの幼虫(ほぼ前蛹)と蛹

庭のクヌギにいたいもむし。
というか、トビオくんの餌に使ったクヌギの葉にくっ付いていた。

2023年4月24日
ミダレカクモンハマキ終齢幼虫
Archips fuscocupreana
背面
ミダレカクモンハマキ終齢幼虫
Archips fuscocupreana

ちょっと見にくいけれど、矢印のところに透けて見える黄色いのが精巣である。つまりオス。
葉を綴って営繭していたので、ほぼ前蛹状態であろう。

などと言っている内に蛹化。
2023年4月27日
ミダレカクモンハマキ蛹
Archips fuscocupreana
体長は約10mm。

で、5月5日、こどもの日に羽化
ミダレカクモンハマキ♂
Archips fuscocupreana

本種の♂は前翅前縁基部(矢印位置)に折り返し部分がある。
コレを「前縁褶(ぜんえんしゅう・ぜんえんひだ): costal fold」といって、♀には無い構造であり、ハマキガ亜科の数属に見られる特徴である。

羽化後の繭からは蛹が飛び出している。

ハマキガ科の蛹は、腹部のトゲを使って頭を繭から出してから羽化する。
腹部も伸ばしているので全長が14mmくらいに増えている。
繭の中で羽化しちゃうと、ハマキガはちっちゃくて非力だから外に出られなくなる。
それに対して工夫しているわけですな。

蛹の腹端、側面
腹部第8・9・10節は癒合している。

蛹の腹端、腹面
尾端の鉤状刺毛で繭に固定している。
羽化の際に蛹が繭から飛び出すときにもコレが錨(いかり)の役割を果たしており、勢い余って蛹が落っこちることを防いでいる。

第9腹節に交尾器開口部、第10腹節に肛門が開口している。
(開口と書いたが穴が開いているわけでは無い。)
画像は♂なので、交尾器開口部は第9腹節にあるが、♀の場合は第8腹節に陥入する形で開口しているので、蛹での雌雄の区別は可能である。

この辺は、過去記事にも解説してあるのでそちらを参照されたい。↓



ではまた


2023年4月29日土曜日

丸ではなく玉

日曜日に見かけた虫。

ヤエムグラの実に止まる丸ちっちゃいカメムシ。

ここらで黒くて丸いのはタデマルカメムシだけど、ヤエムグラ?

よく見ると、光沢がタデマルほど無いし、真っ黒でも無い。

確保。

帰って図鑑をみてもマルカメムシ科に該当種が居ない。

パラパラ捲るとカメムシ科に該当種がいた。

タマカメムシ Sepontiella aenea
体長は約3.5mm。日本産のカメムシ科では日本最小クラスだそう。

小楯板が拡大して腹部全体を覆い、寸詰まりの丸い体形。

マルカメムシの仲間だと思った私は悪くないと思う、のだがコレはマルカメムシ科Plataspidaeではなく、カメムシ科Pentatomidaeのタマカメムシであった。

腹面

タマカメムシ Sepontiella aenea
ここら辺にはいないけど、近縁のリュウキュウタマカメムシは口吻が長く、腹部第3節に達するそうな。

臭腺の廻りの蒸発域(つや消しの部分)はマルカメムシと比べるとかなりちいさい。

側面

タマカメムシ Sepontiella aenea
体高も高く、丸々しい。

マルカメムシもタマカメムシも名付けのコンセプトは同じでしょうな。

正面顔

タマカメムシ Sepontiella aenea
前胸の前縁は白く縁取られている。

科を区別する特徴の一つに触角の節数がある。

マルカメムシ科Plataspidae・・・触角は4節

カメムシ科Pentatomidae・・・・触角は5節

あと、タマカメムシ属の特徴に「頬縁板の前端が刺状に突出する」と言うのがあるらしい。たぶん矢印の突起がそれなのだと思う。

あと、中胸腹板の中央隆起線が低くなる、と言うのもあるそうだ。


おまけ、タマカメムシのおちり。

タマカメムシ Sepontiella aenea
腹端中央に溝があるので♀ですな。


ではまた

2023年4月22日土曜日

空色毛虫

ちょっと前に手すりで見かけた毛虫。

2023年4月9日

画像をパソコンのドクガフォルダ(ドクガフォルダってなんやねん。)に入れてたけど、よく見たら背腺がない。

体長は8mmほど。
地色は黒色だと思うが、粉を吹いたような感じで空色に見える。


背腺を持つことがドクガ科の幼虫の特徴なのでそれ以外。 

(背腺が気になる人は「ドクガ 背腺」で検索)

ということはカレハガ科辺りか。

で、持ち帰っていたのが10日後に脱皮した。


変身!

クヌギカレハ Kunugia undans

クヌギカレハ Kunugia undans

毎年この時期見かけるクヌギカレハの中齢幼虫。

白い毛だけ葉片状。

弱齢時はあんな色彩だったのね。


ちなみに終齢時は全身薄茶色になる。

過去画像

2009年7月5日
クヌギカレハ Kunugia undans

脅かすと背中を丸めて「毒がアルぞ!!」とばかりに胸部の黒色の毛束を見せつけてくる。

クヌギカレハ Kunugia undans

実際にかゆくなる実害があるわけですが。。

過去画像引っ張り出してみたら、黒い毛束の中に空色の毛が混じっていますな。

こんな所に赤ちゃん時代の片鱗が残っていたとは?


ではまた

2023年4月15日土曜日

花びら模様のある卵

今週はごく軽く。

3月12日のお散歩でみかけた卵。


何だろう?エダシャクっぽい。

白色の点々が見えるような?

少し削って20個ほど持ち帰る。

拡大して見ると、


6枚の花びらを並べたような模様がある面白い卵だった。

10日後に孵化。

暗緑褐色で側面に太い白線、頭部は黄色。

庭のクヌギやヤマザクラの新芽を与えると食いついた。

どちらも好き嫌い無く食べて、普通種感が漂う幼虫である。

2日後

頭はそのままで胴体が伸びる。

27日に2齢確認

白線が消え、頭部が角張る。

30日には3齢確認

頭にネコ耳が、、、
見たことあるような幼虫になってきた。

4月2日に4齢確認

4月5日に5齢確認

トビモンオオエダシャク Biston robustus
これは、、、

一部界隈で大人気のトビオくんこと

トビモンオオエダシャクでした。

トビモンオオエダシャク Biston robustus
ゴマダラチョウとか、オオムラサキでよくあるアングル。

ちなみに孵化後の卵殻を見ると花びら模様は残っていた。

トビモンオオエダシャク Biston robustus
卵殻

さて、旧ブログの方で同属のチャオビトビモンエダシャクBiston stratariaを紹介しているが、卵にはこんな模様はないし、1齢幼虫では背中にも白線が入るので、この2種だけを並べたら区別できるようである。

 旧ブログの記事↓

insectmoth.hatenablog.com

 

ではまた

2023年4月8日土曜日

聖母マリアなオニタビラコキモンハバチ

日曜日に見つけたハバチ
オニタビラコキモンハバチ♀
Pachyprotasis youngiae

他のキモンハバチ類に比べて黒っぽい種類。
当日カエデの花を掬うとたくさんのクルメキモンハバチがいたが、こちらは地面近くを飛んでいて、お散歩ネットで掬ってフィルムケースに入れるまでヒメバチだと思っていた。
後で調べたらキモンハバチの一種と判った。

日本産ハバチ・キバチ類図鑑より分類形質を抜き書き。
************************************
ハバチ科の特徴
中胸楯板を横断する横溝はない
前脚脛節の距は2本
前翅Sc脈はR脈と融合し、先端の横脈状部分のみ分離する。
触角は棍棒状ではなく糸状で9節からなる(例外あり)


ハバチ亜科の特徴
触角は9節
前翅に2rs-m横脈を持つ
前翅R脈がM脈の交点の前で後方に曲がる。
2A+3A脈は途中で1A脈と融合する

キモンハバチ属の特徴
前翅A室は中央でくくられて二分される
後脚腿節は脛節と同長かより長い。
(昔の検索だと「後脚腿節先端は腹端に届く」などと書いてある。)
複眼内縁はほぼ平行
触角は細長く、触角第3節と4節はほぼ等長

オニタビラコキモンハバチの特徴
後脚基節は黒色で卵形の白紋を持つ
後脚の腿節、脛節、付節は黒色
中胸楯板中葉は黒色
頭盾は黄白色
************************************

オニタビラコキモンハバチは三倍体の産雌性単為生殖種で
オスが存在しないとのこと。

成虫は年1化で春に出現する。
食草はタビラコ、オニタビラコの若い種子とのこと。

腹面
オニタビラコキモンハバチ♀
Pachyprotasis youngiae


側面
オニタビラコキモンハバチ♀
Pachyprotasis youngiae
後脚基節に白紋。
転節付近は黄白色。

オニタビラコキモンハバチ♀
Pachyprotasis youngiae

主要なところに記号を書き込んでみた。
オニタビラコキモンハバチ♀
Pachyprotasis youngiae
以前「反上脈」と言っていたのはM脈の一部だったのか。
赤字は翅室の名称。

後脚
全体に黒い

触角
第1節は触角柄節
第2節は梗節
第3節以降は鞭節

複眼の前面は細く白い
頭盾と上唇は白色

おまけ
産卵管
適当に引っ張り出したら先っちょちぎってしまった。。。
ペケの所。。。


ではまた


2023年4月1日土曜日

モンユスリカ亜科の一種

日曜日のお散歩は雨の中だったので、収穫はナシ。

自宅の玄関に模様のあるユスリカがいたのでちょっと調べてみた。

こんなの。

モンユスリカ亜科 Tanypodinae
前翅長3㎜あまりのちっさい種類。

拡大

モンユスリカ亜科 Tanypodinae
触角が房状ではないので♀である。

背面


前翅

モンユスリカ亜科 Tanypodinae

小型で脈相が画像で分かりにくいので手書きイラスト、、、

FCu:肘脈分岐


モンユスリカ亜科の特徴は、

MCu横脈があること

R2+3脈があることとその先端はR2脈とR3脈に分岐すること(例外あり)

である。

属の検索では、

FCuMCuより基部側にあるか先端よりにあるかなどがあるが、そこから先は♂の交尾器が検索keyになるのでお手上げである。

ユスリカの場合は♂で検索するのが基本なのであった。

手持ちの本の絵合わせでは

ウスギヌヒメユスリカ Rheopelopia toyamazea に限りなく近いのであるが、

今日はこの辺で。


ではまた