2024年10月26日土曜日

フジの莢の初期巣と居候

今週のお散歩も何がいたと言うこともなく・・・

帰る間際に道路に落ちていたフジの莢。


なにかイモムシでも入っているかも?

と持ち帰ってみた。

平日の空いた時間にペリペリ、と端から分解。


中は囓られて空洞がある、が糸や糞がないのでイモムシではなさげ。

1/4ほど破壊したところで、アリがとびだしてきたので思わずプチっとしてしまった。

ヒラズオオアリ
Camponotus nipponicus
ヒラズオオアリの働きアリは大型働きアリと小型働きアリの明瞭な2型があり、大型働きアリと女王アリは頭部先端が裁断状になっており同定は容易な種類である。

小型働きアリの頭部はまあ普通の形状で、他種との区別点は

前伸腹節を横から見ると、角度がほぼ90度をなすこと(黄色矢印)

腿節は前脚腿節のみ極端に幅広いこと(青矢印)

の2点である。

大型働きアリもいたけど、歩くの早すぎて撮れなかった。

フジの莢をよく見ると、出入り口の穴が一個開いていた。

普通はこの穴に大型働きアリが顔で蓋をしている。

ヒラズオオアリの巣は通常、立ち枯れの堅い木に巣を作っている。

10年以上前に一度見たことがある。

2度目がフジの莢。

堅さで言えば枯れ木と同程度なので、ヒラズオオアリ的には一緒だったのかも。

でも、落ちてしまったら運の尽きである。

とりあえずこれ以上の破壊は止めたので、女王とかいるかは未確認。

こちらは破壊したフジの莢にいた居候↓

コナチャタテ科の一種
Liposcelidae Gen.sp.
コナチャタテ科は後脚腿節が太い。

家屋内で見かけるヒラタチャタテとは明らかに別種で斑模様がある。

無翅の種類が野外でどうやって移動や分散をして命を繋いでいるのかナゾである。

屋内のライトトラップの粘着板に、ヒラタチャタテとは別種の有翅のコナチャタテの一種が捕まっていることがあるので、野外の種類も環境が悪化すると有翅になって分散するのかも知れない。

黒バック

コナチャタテ科の一種
Liposcelidae Gen.sp.
ではまた


2024年10月19日土曜日

コツチバチの♂

ここんとこ日曜日の散歩で採集してない。

なんでもいいや、と目に止まったハチを持ち帰った。

ちょこまか走り回っていたので生態写真はなし。

背面

コツチバチ属の一種Tiphia sp.

とても地味な黒いハチ。体長約6.5mm。

腹面

コツチバチ属の一種Tiphia sp.

コツチバチ科の外見上の雌雄は

触角13節で可視腹節は7節であれば♂、

触角12節で可視腹節は6節であれば♀である。

ということで画像のハチは♂である。

日本産有剣ハチ類図鑑とか、南西諸島産有剣ハチ・アリ類検索図説とかの検索表をたどってみたけど、修行が足りないので種までの検索は断念。

なんとな~くだけど、ニカコツチバチTiphia sternataあたりかなぁ?

というフワッとした印象。

その他の画像。

側面

コツチバチ属の一種Tiphia sp.

コツチバチ属の一種Tiphia sp.
検索キーに縁室(赤丸)が亜縁室(黄丸)より突出するか否かというのがあった。

コツチバチ属の一種Tiphia sp.
触角窩の直径と触角-複眼間の距離の比とかいう検索キーもあった。

腹端側面

コツチバチ属の一種Tiphia sp.

第5腹板の両側近くに小さな歯状突起の有無とかいう検索キーもあった。

たぶん黄色円内がその歯状突起。

こんなのを検索キーにされてもなぁ、という素人的感想。。

コツチバチ科全体で種間差異が小さいので理解はできる。

けど、ついて行けない感じ。

あとは点刻の大小とか数とか。

図鑑にはいくつかの図が載っていたけど、すべての検索キーに部分図とかないとちょっと無理。

絵解き検索プリーズ。

雌雄の区別点に腹端の刺が上方に弧を描くのが♂で直線状なのが♀とあった。

直線状なのは産卵管(針)として、曲がってるのはなんだろ?

挿入器?

じゃなくて、最終腹板が針状に変化したものだとか。

そういやツチバチ科の♂にも針状の三叉鉾ありましたな。

最初、実体顕微鏡で見たときは針があるから♀かな、とか思ってしまった。


今回はコツチバチの雌雄の区別点だけど、

旧ブログでツチバチ科とコツチバチ科の区別点の記事がある。↓

insectmoth.hatenablog.com

ではまた

2024年10月12日土曜日

猫草セットの燕麦にいたコナナガシンクイ

お散歩コースの虫が不調なので、パソコンのハードディスクからテキトーに。。

今年の2月、永らく放置していた猫草の栽培セットを掃除の際に発掘。

妙に粉っぽいので開けてみたらコレ。

穴だらけ。

タバコシバンムシでも湧いたか?と思ったら、また別の虫だった。

コナナガシンクイ
Rhyzopertha dominica
貯穀害虫として有名な方である。

猫草の種子はエン麦である。

開封して一年以上は放置していたのでいつの間にか侵入していたみたい。

米、小麦、トウモロコシなどの穀物種子のほか、穀物粉、豆類、キャッサバなども加害する。

木材にも食入し、そこで越冬する。

成虫の平均寿命は120日、1♀の産卵数は200~400卵。

卵から成虫までの発育期間は30℃で31日。

18~38℃の間で発育が可能。

ということでやや高温を好む虫のようだ。

顔の拡大

コナナガシンクイ
Rhyzopertha dominica

横顔

コナナガシンクイ
Rhyzopertha dominica

ぱっと見キクイムシ科(じゃなくて今はゾウムシ科キクイムシ亜科か、)にも似ているが、キクイムシ系は触角先端が球状なので区別は簡単。

幼虫

コナナガシンクイ
Rhyzopertha dominica

脚があるので、脚のないゾウムシやキクイムシとは区別できる。

胸部が太く腹部が相対的に細いので、「勾玉」型の形状である。

よく似たシバンムシ類の幼虫は胸部と腹部が同じ太さで「C」型なのでなんとなく区別できると思う。

あとシバンムシ類の幼虫頭部は着色しているが、こちらは淡色である。

幼虫頭部の透過光像

コナナガシンクイ
Rhyzopertha dominica

硬そうな大顎。

大工道具のノミみたい。


ではまた

2024年10月5日土曜日

ハゲハゲ小蛾

谷筋の湿ったシダの上、

2024年9月29日
差し渡し5mmちょいの小さな蛾がいた。

鱗粉がはげてベージュ色になっている。

クロスジチビコケガかウスクロスジチビコケガっぽいが?

持ち帰って冷蔵庫に入れたままにしていたのを実体顕微鏡で確認。

腹端部

クロスジチビコケガ
Stictane rectilinea
図鑑によると、ウスクロスジチビコケガはバルバの後縁(矢印の位置)に2本の刺状突起があるそうで、クロスジチビコケガにはないとある。

なのでクロスジチビコケガだと思う。

今週は暇がなくてやっつけ記事になってしまった。


ではまた

2024年9月28日土曜日

ヒゲブトシギゾウムシ

ここんとこ、びっくりするほど新顔が採れない。

ので、パソコンの画像フォルダから春に見た虫1枚貼って今週は終わり。

2024年4月7日
ヒゲブトシギゾウムシ
Curculio breviscapus

何からどやって採ったかとか全然記憶に無い。。

ヒゲが太いようには見えないけどなんだろうこの和名。

学名は古い図鑑では C.tigrinus だけど今は上記の学名の模様。


ではまた

2024年9月21日土曜日

沖縄発、分布拡大中のヨツモンカメノコハムシ

日曜日ゴロゴロしてからの祭日のお散歩。

ノアサガオと思われる野良アサガオにいた虫。

ヨツモンカメノコハムシ
Laccoptera nepalensis
ヒルガオ科を食べるハムシで、サツマイモの害虫とされる。

保育社甲虫図鑑では学名がLaccoptera quadrimaculataだったけど、今はLaccoptera nepalensis と種小名が改められている。

元々は沖縄以南に分布する昆虫で、1999年以降に本土域でもみられるようになった昆虫だそうだ。

現在では関東でも普通に見られるような虫みたい。

侵入種と言うより、自然分布が広がった感じ?

へたしたらこっちの都会は沖縄より暑いし。

背面

ヨツモンカメノコハムシ
Laccoptera nepalensis
体長は9㎜と割と大型のハムシ。

上翅肩部が張り出してカッコいい。

ヨツモンカメノコハムシ
Laccoptera nepalensis
なんというかトボケ顔。

附節

爪は鋸歯状。

ガラスの裏も歩ける。

ヨツモンカメノコハムシ
Laccoptera nepalensis
中胸腹板は黒色。

歩くときは顔がニュッと飛び出てる。平面顔のまま。


ではまた

2024年9月14日土曜日

チクシトゲアリの羽アリ

日曜日のお散歩は特に何事もなく、ネタもなく。。。

翌月曜日、出社しようと玄関に出たら羽アリがぽつんといたので一応確保。通勤かばんにはフィルム型ケースが常備してあるのじゃ。

エライ。

会社の実体顕微鏡で見たら、カッコいい種類だったので今週はその拡大画像を貼っておくこととする。

背面

チクシトゲアリ
Polyrhachis moesta Queen
♀の羽アリ、女王だった。

体長は約7㎜。

胸部背面

チクシトゲアリ
Polyrhachis moesta Queen
前伸腹節と腹柄節に一対のトゲがある。

トゲアリには前胸と中胸にもトゲがあるが、こちらはそれがなく前胸も角張るだけである。

胸部側面

チクシトゲアリ
Polyrhachis moesta Queen
図鑑にはツヤがある種類と書かれているが、拡大すると細かい印刻があって味わい深い。

トゲも後ろに向かってシュッと伸びているのがカッコいい。

働きアリと比べると前伸腹節のトゲはより寝ているように見える。

働きアリのトゲは気持ち上に向いている気がする。

羽アリは飛ぶから邪魔にならないように寝てるのかも。


翅脈はこんな感じ。


チクシトゲアリ
Polyrhachis moesta Queen
顔にも細かい印刻がある。

おまけ

翅の付け根。

付け根は細く、翅脈も弱くなっている。

♀の羽アリは翅を落として土に潜るので細くちぎれやすいような構造になっている。

♂の羽アリはここまで細くなってなかったような?気がする。


チクシトゲアリの働きアリは幼虫を咥えて幼虫が吐く糸を使って巣を補強する習性がある。

ときに常緑の木の葉を綴り合せて巣にすることがある。

旧ブログにそんな巣を紹介しているのでよかったら下のリンクを踏んでください。↓

insectmoth.hatenablog.com

 

ではまた

2024年9月7日土曜日

ニクバエ科の寄生バエ

こないだの日曜日のツイート。 

ふと廻りを見ると、複数のハエが止まっているのに気が付いた。

たぶん寄生するために集まっているのだろう。

営巣期終盤で活動するハチが少なくなって集中してしまうよう。

去年からできたコロニーだけど、2年目ともなると寄生者に見つかってしまうようだ。

去年は気が付かなかっただけかもしれないけど。。

それはさておきこんなハエ。

ヤドリニクバエの一種
Metopia sp.?
ぶれぶれ。

腹部の剛毛の主張がはげしい。

もう一枚。

ヤドリニクバエの一種
Metopia sp.?
頭でっかちのかわいいハエである。
3・4個体いたが、全員キンモウアナバチの巣口を注視していた。

体長は5㎜。

ヤドリニクバエの仲間はハチが獲物を持ち帰ってきた際に素早く獲物に取り付いてウジを産み付けるそうだ。

2個体摘まんで帰って拡大。

背面

側面
ヤドリニクバエの一種
Metopia sp.?
前翅

ヤドリニクバエの一種
Metopia sp.?

インターネッツで論文をテキトーに検索したら、Metopia属の顔面の刺毛配列がよく似ていたので、?付きでMetopia sp.にしておきます。


ではまた

2024年8月31日土曜日

黄色いヤドリバエ

2024/9/7追記

Xツイッターで複数の方からヒラタヤドリバエ(ヒラタハナバエ)亜科Phasiinaeの一種だと思う(要約)、とご教示いただいたのでタイトルから?を取りました。あと、最近の国際昆虫学会議のポスターにPhasia caudataとして紹介された種が色彩が似ているとの情報もいただきました。

ありがたやありがたや。

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8月最後の日曜日。

藪の向こうにハエが一匹。

パッと科が思いつかないので確保。

背面

M1+2脈が湾曲してR4+5脈に合流している。

これTwitterで見たワラジムシヤドリバエ科の特徴では?

と検索してみたが、翅脈以外の特徴がかけ離れているように見える。

おなじくかけ離れているけど、ヤドリバエ科にも似たような翅脈の特徴を持つ者がいる。

Catharosia属とか、Grapogaster属なんかが当てはまるようだ。

ただ、こんな色あいのヤドリバエとか見たことないのでなんもわからん。

判らんままの貼り逃げ記事である。あしからず。

腹面


側面


側面ちょい拡大


下小盾板(矢印)は膨らんでいるようなそうでないような?
膨らんでいると見るならばヤドリバエ科。

前翅


♂だったので交尾器を引き出して斜め下から。

何か進展したら記事書き加えますが、

永久にこのままな予感。。


ではまた

2024年8月24日土曜日

チャイロナガカメムシ

地味な名前である。

砂防堰堤の上流側にある平地のササにたくさんいた。

3匹見たからたくさん。

チャイロナガカメムシ
Neolethaeus dallasi
日本に広く分布し、本属では最普通種とのこと。
ヒョウタンナガカメムシ科Rhyparochromidaeに属す。

一匹摘まんで帰るなど。
背面
チャイロナガカメムシ
Neolethaeus dallasi
腹面

側面
チャイロナガカメムシ
Neolethaeus dallasi
脚の付け根近くの胸部につや消し部分がある。
これが「蒸発域」。
蒸発域の中央にあるナイキのロゴみたいなのが「臭腺」。
矢印は第5腹節。ここが前方に伸張しているのがヒョウタンナガカメムシ科の特徴。
前脚腿節と後脚腿節にトゲが並ぶ。

翅も拡げてみた。
チャイロナガカメムシ
Neolethaeus dallasi
両面テープ上で拡げたので、前翅の膜質部と後翅の先端はテープにくっ付いて変な感じで写っている。
後翅前縁中央辺りに連結器のトゲがチラッと見えてる。
拡大して撮るのを失念していた。
カメムシは4枚翅だが、飛ぶときは前後翅を連結して2枚翅として羽ばたいている。
後翅の膜質部は薄いのでシャボン玉みたいに虹色の偽色がでて綺麗。

♂だったので交尾器を引き出してみたの図
チャイロナガカメムシ
Neolethaeus dallasi

把握器を片っぽ出して斜めからパチリンこ。
曲がったトゲがぴょろんとついていた。

おまけ
頭部背面。
チャイロナガカメムシ
Neolethaeus dallasi
頭部背面基部にはつや消しブラックのマクドのマークが隠れていた。
用途は判らず。
微毛は金色。

前胸背板前角やや後方に強い刺毛が生えているのが、チャイロナガカメムシ族の特徴だそうな。

ではまた